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コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたら魔女に出会った話
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6. あの子の話

 部屋に戻ると、最初の席にもう一度座った。

 正面には瑠璃が座っている。


「ドウゾ」


 オートマタの彼女が新しいお茶を淹れて、私と瑠璃の前に置く。


 さて、何から話せばいいだろう。

 瑠璃がこっちの世界にいる理由も知りたいけど、瑠璃にしてみればなんで私がこっちの世界にいるの? ってことだよね。


「えっと、まずは私がなんでここにいるのか説明した方がいいよね?」


「はい、なんで先輩がこの世界にいるのか知りたいです。先輩、私がこの世界に来る直前まで一緒にお店の片付けをしてましたよね?」


「え? 一緒に片付け?」


 いやいや、そんなはずない。

 だって瑠璃の格好って《プリンセス月間》の衣装だよね。『来月からはこの衣装』って店長に見せてもらったから覚えてる。

 私がこっちの世界に来たときはまだ魔法少女月間だった。

 プリンセス月間は翌月からだったはずだから……どういうこと?


「えっと、瑠璃が一緒に片付けをしてたのって、私?」


 私の質問に、瑠璃がきょとんとしている。

 ……なんか話がこじれそうだから、この話はまた今度にしよう。


「やっぱりいいや。えっと、実は私も色々あって――」


 私はステッキとの出会いから村や町の話、島での出来事まで、これまであったことを瑠璃に説明した。


「――というわけで、今回はカールラさんの依頼で廃墟の調査にきたってわけ。次は瑠璃の番。一体何があったの?」


「私も似たような感じです。これです」


 瑠璃が頭のティアラを外して机に置いた。


 とっても綺麗なシルバーのティアラ。正面には楕円形の青い宝石が埋め込まれている。

 全体に細かい細工が施されていて、可愛さと気品が見事に調和している。


 それで、このティアラがどうしたんだろう? 右から左から、ティアラを眺める。

 そんな私に代わって、ステッキが口を開いた。


「いい加減喋ったらどうだ」


 喋る? 誰が?


「まったく、相変わらず汚い言葉遣いですわね」


 まじまじと眺めていたティアラが突然喋った。


「うわっ! えっ!? どういうこと!?」


 びっくりしてのけぞる私。

 ティアラの言葉に、ステッキがイラつきだした。


「そういうことだ。このティアラは俺と同じ魔道具だ」


「はじめまして」


 そんなステッキを無視して、ティアラが私に挨拶をしてきた。

 上品な女性のような、とても澄んだ声。


「え、あ、はい、はじめまして」


 ぎこちなく挨拶を返す私。

 なんか空気が重い。

 もしかしてこの二人、仲悪い?


 瑠璃はティアラを手に取ると、再び頭に乗せた。


「このティアラとの出会いなんですけど――」


 瑠璃がここまでの出来事を話し始める。


「プリンセス月間になってから、このティアラを着けてお仕事をしていたんです」


 そう言いながら、瑠璃は右手で頭のティアラを触る。


「私が戸締り当番の日、ひとりで最後の片付けをしていたら、突然ティアラが話しかけてきたんです。『魔法の国が大変だ』って。それでティアラに協力することにしたんです」


 私のときと同じだ。

 ということは、


「もしかして、瑠璃にも魔力があるってこと?」


「そうです。私はこのティアラを介すことで魔法が使えます。前に『実家が神社』って話したことありましたよね? どうやら私、魔法使いの末裔らしくて……」


 実家が神社って話は聞いてた。

 巫女さんの格好でお手伝いしてるって。


「それで魔力を使ってこの世界に来たんですが、着いた先がこの廃墟でした。ティアラは『王都の結界に弾かれた』って言っていました」


 それも私のときと同じだ。

 やっぱりみんな直接は入れないんだ。


「着いたまではよかったんですが、持ち物はティアラだけだし、服もプリンセスの衣装のままだしで、『どうしよう』ってなって――」


 もー! なんで旅の支度をさせてくれないのかな、この魔道具たちは!

 仲悪そうなのに似た者同士だよね! もぉ!


「場所が廃墟だったので、ひとまず寝ることはできました。けど、お金がないから食べ物とかが買えなくて。だから、なんとかしてお金を稼がなきゃと思って――」


 瑠璃の話にちょっと胸がチクリとする。

 私、初日から村長さんにお世話になってた……。


「どうしよう、って考えたんです。それで思いついたのが、ここでコンカフェをやればいいんじゃないかって」


 その発想に行くのがすごいよね、ほんと。

 こんな状況で自らお金を稼ごうって考えるなんて。

 私なんて村長さんに仕事を斡旋してもらってなんとかなったっていうのに。


「この世界に着いたときに、ティアラに私の能力を調べてもらったんです。精神属性がLv.35でした。それで、幻影魔法っていうのが使えるってわかったんです」


 精神属性Lv.35!?

 瑠璃ってコンカフェですっごく人気だったから、それが影響してる?


「私ひとりで廃墟を修繕するのは無理だから、幻影魔法で全体を綺麗に見せればいいんじゃないかと思って。そしたら案外うまくいって」


 すごかったよ、幻影魔法。私、ステッキに言われるまでわからなかった。

 完全に騙されたよ。


「あとは簡単なステージとテーブルを用意して。そんな感じでお店の開店準備をしていたら、突然何人かの人たちがやってきたんです」


 最初に調査に来た人たちだ。


「最初は『どうしよう』って思ったんですけど、『そうだ! この人たちで試してみよう!』って思って、中に招き入れてステージをやったんです」


 やっぱりすごい度胸。

 私なら絶対に隠れてる。


「そしたらみんなとっても喜んでくれて! しかも、私のステージパフォーマンスに感動してお金をくれたんです! そのおかげで、食料や衣類、あとお店で出すクッキーの材料やお茶の葉を買えました!」


 さっき食べたクッキー、瑠璃の手作りだったんだ。

 なんか知ってる味だなーって思ったんだよね。あっちの世界で瑠璃からもらって食べたことあったから。


「音楽は幻聴魔法で流せるし、お菓子とお茶も出せるし、これはいけるって!」


 なんで音楽が流れてるんだろう? って、ちょっと思ってた。

 また何かの魔道具とかなのかな? って。

 あの音楽って、魔法だったんだ。

 瑠璃って、こっちの世界に来てからすぐに魔法を使いこなしてるってことだよね。

 私なんてステッキにヒントをもらいながらやっと使ってるのに……。


「けど私ひとりで接客とステージをやるのはかなり大変で……。そしたらある日、地下室でメアリを見つけたんです。あ、メアリって私が付けた名前です」


 メアリ?

 あー! あのオートマタ!


「ティアラに聞いたら『魔力を注入すれば動く』っていうから、試してみたんです。そしたら本当に動いて。私、びっくりしちゃって!」


 すごいけど……廃墟でオートマタと暮らすって、まあまあ恐くない?


「メアリ、すっごく優秀で、なんでもしてくれるんです。お茶を淹れるのもとっても上手なんですよ!」


 わかる!

 このお茶すっごくおいしいもん!


「それからは接客をメアリに任せて、私はステージ集中して。そのおかげでパフォーマンスのクオリティも徐々に上がってきて、お客さんも増え始めたんです」


 みんな噂してたよ。

 酒場でも、みんな『廃墟行きたい廃墟行きたい』って言ってた。


「料金については、金貨2枚はちょっと高いかな? とは思ったんです。けど最初に貰ったお金が金貨2枚だったから、それがこの世界の相場なのかなって」


 そうだよね。

 こっちの世界の基準ってわかんないよね。

 酒場でも、みんな『カネが、カネが』って言ってた。


「とにかく、料金に見合うパフォーマンスをしようと思って頑張りました! そしたらお客さんがいっぱい来てくれるようになって、徐々にコンカフェの営業が軌道に乗り始めたんです!」


 両手をぐーにして、力強く話す瑠璃。

 表情にも自信があふれている。


「そして今日、先輩がやってきて、今に至ります。って、先輩?」


 私の目から涙が溢れる。


「ん? あれ?」


 瑠璃の話を楽しく聞いていたつもりだったのに……。

 瑠璃、この廃墟でひとりで頑張ってたんだって思ったら、自然と涙があふれてきて……。


「お前が泣いてどうする」


 ステッキが呆れている。


「あら、後輩の話でこんなに泣いてくれる先輩なんて、ワタクシは素晴らしいと思いますわ」


 ティアラがツンと反論する。


「……」

「……」


 睨みあう(?)二人。

 そこへ、瑠璃が割って入る。


「もう! 二人とも、喧嘩しないでください!」


 ステッキがプイっと横を向く。


「ごめんごめん、もう大丈夫だから」


 私は指で涙を拭うと、落ち着くためにお茶をひと口飲んだ。

 そして一息つくと、瑠璃とこれからについての話を始めた。

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