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コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたら魔女に出会った話
42/58

1. 依頼の話

廃墟に魔女が住み着いた!?

カールラさんから調査依頼を受けた私は、とある町にいた。

効率よく調査を進めるためにアルバイトを始めた私。

いろんな情報が集まってきたんだけど……なーんか変なんだよね。

廃墟にいるのって本当に魔女なの?

「聞いたか? 例の噂」


「ああ。廃墟の話だろ?」


 おじさん二人組が隣のテーブルでひそひそと会話をしている。

 といってもお酒を飲みつつちょっと興奮気味で話しているから、私には丸聞こえなんだけどね。


 私は今、とある町のレストランにいる。

 そして晩御飯のパスタをフォークで巻き取りながら、おじさんたちの話に聞き耳を立てていた。


「まさかおまえ、もう行ったのか?」


「いやまだだ。やっぱり怖いだろう」


「そうだよな。噂じゃ、廃墟に行った奴は魂を抜かれたようになって戻ってくるらしい」


「それは怖いな。だけど興味もあるんだよな。行ってみたい気もするな」


「魂を抜かれるかもしれないぞ?」


「そうだよなぁ。やっぱり怖いよな。けど、行ってみたい気もするな」


 おじさん、前のめりになったかと思えば腕組みをしたり、さっきからずっと落ち着かない態度。

 表情もくるくる変わる。


 行きたいの!? 行きたくないの!? どっちなの!?


「実は俺、次の休みの日に行ってみようと思ってるんだ。なあ、お前も一緒に行かないか?」


「えっ!? 俺も!? どうしようかな。けどやっぱり怖いよな。だけど行――」


 前後に揺れるおじさん。

 気持ちが動きに現れちゃってるよ。


 もー! 行きたいんでしょ!? 行きなよ!!


 おじさんのはっきりしない態度に少しイラっとしてつい立ち上がってしまい、テーブルにおもいっきり脚をぶつけた。


「いったぁ!」


 痛みで思わず声が出る。

 そんな私を見るおじさんたち。


「スミマセン」


 私は二人に会釈し、しおらしく椅子に座りなおした。

 煮え切らないおじさんのせいで足ぶつけちゃったよ、もう!


 おじさんたちが再び会話を始める。


「なあ、一緒に行こうぜ。ひとりだとちょっと怖いんだよ」


 煮え切らないおじさん、腕を組んで考え込んでる。

 しばらくして、


「よし、行くか!」


 ずっと眉間にしわを寄せていたのに、途端に明るい表情になった。

 結局行くことにしたのね。


 おじさんたちの会話は続く。


「それで、廃墟へ行くのに何か必要なものはあるのか? ランタンとか?」


「いや、必要なのはカネだ」


「カネ?」


「ああ、カネだ。カネがないとだめらしい」


 煮え切らないおじさんの表情が曇る。


「カネはどれくらい必要なんだ?」


「どうやら、ある程度はないとだめらしい。俺は少し多めに持っていくつもりだ」


「カネかぁ。俺の持ち合わせで足りるかな……」


 その後もおじさんたちの会話は続いた。

 けど、いつの間にか廃墟の話から小遣いが少ないことに対する愚痴に変わっていた。

 うん、おじさんたちの家庭の事情には興味ないし、もう他の情報は得られそうにないからさっさと食べて宿に戻ろっと。




 宿の部屋。

 ベッドに腰かけた私は、さっきレストランで聞いたおじさんたちの話をステッキと確認していた。


「初日から情報を得られたな」


「おじさんたち、廃墟の話をしてたね。けど、お金が必要ってなんなんだろう?」


「事前に聞いた情報にはなかった気がするが」


「うん、なかったと思う」


 事前に聞いた情報っていうのは、カールラさんから聞かされていた話のこと。

 私は今回、彼女から調査の依頼を受けてこの町に来ていた。


 その依頼というのが《廃墟に住み着いた魔女》の調査。

 この町から少し離れたところにある廃墟に魔女が住み着いた。

 町の男たちが調査に向かったところ、皆魂を抜かれたようになって戻ってきた。

 死者などが出ているわけではなく、今のところ実害はない。

 というもの。


 たまたまこの町が王都へ向かう途中にあるってことで、王都支所経由で私に調査の依頼が来たってわけ。


 私の主な任務は町での聞き込み調査。

 もし危険がなさそうであれば廃墟まで調査してほしい、とのこと。



 テーブルの上に地図を広げる。

 この町に着いたときに雑貨屋さんで買った地図。

 この町と町周辺の情報が描かれている。


「廃墟は確か――あった!」


 町を出て森を抜けた先に、建物の形が描かれている。

 地図で見た感じだと、町からはそんなに遠くはなさそう。


 この廃墟、もとは富豪のお屋敷だったそう。

 ひとりで住んでいた富豪は数年前に病気で亡くなって、お屋敷が廃墟になったらしい。

 独身で跡継ぎがいなかったんだって。


「それで、明日からどうする?」


「明日は町で聞き込みをしてみようよ。まずは情報を集めよう」


 依頼内容は町での聞き込み調査だからね。

 それに、いきなり廃墟に乗り込むのも危険だと思うし。


 私は地図を畳むと、お出かけ用の鞄にしまった。



    ◇



 翌日、大通りの市場。


「――ありがとうございました」


 お礼を言ってその場を後にする。

 時間は既にお昼近く。朝からずっと聞き込みをしているけど、有力な情報は得られていなかった。


 この町、そこまで大きくはないんだけど村のように小さくはない。

 市場にはたくさんのお店が出ているし、人の往来も多い。


 ――なんだけど、みんな忙しそうにしていて、なかなか話を聞いてもらえずにいた。

 聞いてもらえたとしても、『知らない』って感じのそっけない返答。


 私は道の端で人通りを眺めながらため息をついた。


「はぁ……地道にやるしかないよね……」


「そうだな。だが場当たり的にやっても効率が悪いな」


「そうだよねぇ。あーあ、どこかに廃墟のことを知っていそうな人が集まってる場所とかないかなー」


 両手を逆手に組んで大きく背伸びをする。


「そうだな……なくはないが、行ってみるか?」


「え? あるの? どこ? 行きたい!」


 慌てて背伸びをやめて、鞄から地図を取り出す。

 そして通行人の邪魔にならないように地図を広げた。

 ステッキが地図を眺める。


「この町にもあるはずだが……おそらくは――ここだな」


 ステッキが指示したのは町のはずれの方。建物が密集した感じの地区。


「ここね。わかった。行ってみる!」


 私は地図をしまうと、早速その地区へと向かった。



 賑やかな大通りをはずれ、一本奥の通りへと入る。

 魔道具や特殊な道具を扱う専門店が軒を連ねている。

 通りを行き交う人たちも、大通りとはちょっと違う感じ。


「なんか懐かしい感じの通りだなー。私のよく知ってる町みたい」


 私がきょろきょろとお店を見回していると、ステッキがさらに奥の路地を指し示した。

 

「こっちだ」


 そこは、昼間なのに少し薄暗い路地。

 道幅も狭くて、ちょっと近づきがたい感じ。


「……ここに入るの?」


「そうだ。行くぞ」


「う、うん」


 ちょっと尻込みしながら、私はその路地へと入った。


 道の両端には二階建ての建物が隙間なく並んで建っている。

 その建物が陽の光を遮って路地を薄暗くしていた。

 それぞれの建物には、お店の入り口らしき扉。

 扉にはジョッキやキスマークなどが描かれている。


 ガハハと笑う声や、ちょっとセクシーな声がかすかに聞こえてくる。


「ここって……」


「盛り場だ」


 やっぱり。

 あっちの世界にも有名な町がいくつかあるけど、私は行ったことがない。

 ちょっと恐いし。


 昼間なのに薄暗い道を恐々と進む。

 やがて――


「ここだな」


 ステッキがとある店の前で私を止めた。

 扉にはジョッキが描かれている。

 ここって、居酒屋とかバーみたいなお店?


「酒場なら効率よく情報を集められるだろう」


「そうかもしれないけど……私、入っても大丈夫なの? あっちの世界だと未成年なんだけど」


「大丈夫だ。この世界には年齢制限はないからな」


 お酒を飲みに来たわけじゃないから、大丈夫だとは思うんだけど。

 窓もないし、中の様子もわからない。

 扉の奥からはかすかに笑い声が聞こえてくる。

 かなり勇気がいるよ、この中に入るの。


「入るぞ」


「え? もう?」


「ここに立っていても仕方ないだろう。それに、逆に不自然だぞ?」


 ステッキに言われて周りを見回す。

 道に座り込んだおじさんと危うく目が合いそうになった。

 確かに、ここでうろうろしている方が不自然かも。


「うん、入ってみるよ……」


 私は覚悟を決めて、扉をゆっくりと開けた。




「がははは! そいつは傑作だ!」

「お待たせしましたー!」

「おーい! こっちにも酒だ!」

「くそっ! また負けた!」


 路地とは違ってものすごく賑やかな店内。

 ガタイのいいおじさんがジョッキを煽り、カウンターのおじいさんがゆっくりとグラスを傾ける。

 カードゲームに興じているテーブルもある。

 カウンターの中ではダンディーな感じのおじ様マスターがお酒を作り、気さくそうな女性店員が両手にいくつものジョッキを持ってテーブルをまわっている。


 テーブル席もたくさんあって、店内はかなりの広さ。

 天井から吊るされたいくつもの灯りが店内を照らしていて、かなり明るい。


 そんな店の雰囲気に完全に飲まれてしまい、入り口で立ち尽くす。


 そこへ、さっきの気さくそうな女性店員が近づいてきた。

 ぱっちりとした瞳に、ぷっくりとした唇。すらっとした長身で、ブロンドの髪を頭で丸めている。


 よし! この店員に聞いてみよう!


「あ、あの……」


 私が声をかけようとしたそのとき、その女性店員が私の腕をつかんだ。


「やっときたね! ほら! こっちこっち!」


「えっ!? あっ!?」


 私は女性店員にぐいぐいと引かれ、店の奥へと連れ込まれた。

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