10. 後日の話
高級レストランの個室。後日、事件の解決に協力したお礼とその後の報告を聞くために、私はカールラさんと二人で食事をしていた。
海沿いの高級レストラン。海の幸をふんだんに使った料理の数々。どれもものすごくおいしい!
私はすっかり料理に夢中になっていた。
「本当においしそうに食べるわね」
彼女が微笑みながら私を見ている。
「本当においしいです! ありがとうございます!」
気にせず召し上がれって言われてるからね。もうね、遠慮とか無し。
「落ち着いて食べろ」
横で呆れているステッキ。
「だって、温かい料理は温かいうちに、冷たい料理は冷たいうちに食べたいじゃない!」
この冷製スープおいしい! お代わりしたい!
私は夢中で料理を頬張った。
「今回の事件、あなたがいなければこんなにスムーズに解決できなかったわ。本当にありがとう」
「いえ。私も助けられましたし。それに、海賊も絶対に許せなかったですから!」
あの船長の顔が頭に浮かぶ。
だめだめ! せっかくの料理がまずくなる!
私は首をブンブンと振ると、ドリンクをぐっと飲み干した。
コース料理が終わり、デザートとお茶の時間。
ゼリーのようなデザートをつつきつつ、事件のその後について尋ねた。
「それで、あの村の処罰はどうなったんですか?」
「『事件に関与した者は島から出ることを禁止する』ということになったわ」
「え? 牢屋に入れられるとか、そういうのは」
「もちろん誘拐監禁は重罪だけど、事件の発端は海賊たち。海賊が主犯ということで、このような処罰に落ち着いたのよ」
そっか。村の人たち、海賊に脅されて仕方なくって感じだったもんね。
「それで、子供たちは……」
「子供たちは機関と連携して見守っていくことになってるわ。安心して」
子供たちのケアもきちんと考えてくれてるんだ! よかった!
私はほっとしつつも、一番気になっていることがあった。
「あの、ロニーという子についてはなにか情報はありませんか?」
「ごめんなさい、子供たち個人の情報までは……」
「そうですか。いえ、大丈夫です」
きちんとケアしてくれるんだもんね。
うん、心配ないよ、きっと。
彼女が話を続ける。
「海賊についてだけど、海賊船が沈没した海域をくまなく探索して、残党がいないことを確認したわ。もしもに備えて、近隣の漁村には海賊を見かけたら知らせるように通達もしてある」
「そうですか」
海賊については、直接手を下していないとはいえ、ちょっと後味は悪かった。
もちろん許せない気持ちは今も変わらないから、納得はしているんだけど……。
私と彼女は無言になり、部屋にはお茶をすする音だけが響いた。
そんな空気の中、突然ステッキが口を開いた。
「俺からも聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「ええ、どうぞ」
「王都はどうなっている?」
私も気になってはいたけど、その質問は今回の事件とは関係ないから遠慮してた。
ステッキの問いに、考え込むような表情の彼女。
「そうね。王都の状況をお話ししましょうか」
彼女は王都の状況について話し始めた。
「王都はそこまで混乱はしていないわ。王の宣言によってすべての魔力は失われたけど、国民の生活には大きな影響が出ていないから」
そうなんだ。
てっきり大混乱になっているのかと思ってた。
「魔道具が動作しているからでしょうね。既に道具に込められた魔力には影響がなかったのよ。新しい魔道具の作成はできないから、いずれ影響が出るとは思うけど」
ちょっと不思議だったんだよね。この世界から魔力が失われたのに、なんで魔道具は使えるんだろう? って。けど、やっぱり新しく作ることはできないのか。
ステッキが続けて尋ねる。
「王のご様子は?」
「王宮にいるわ。最低限の従者のみが出入りを許可されているけれど、中の様子を語ろうとはしないのよ。だから、私たちもわからないわ」
王様、引きこもっちゃってるのかー。私はどこか他人事な感じで二人の会話を聞いていた。
――ステッキが次の質問をするまでは。
「魔力を持つ者がいたことは、報告するのか?」
ん? えっ? 報告? 報告って何?
魔力を持つ者……って、それって、私のことだよね?
何? 私、捕まったりするの?
一気に全身に鳥肌が立つ。
ステッキの質問に、彼女が静かに答える。
「『魔力を持つ者を発見したらすみやかに報告せよ』との命を受けているわ」
そんなぁ! 彼女の前で思いっきり魔法を使っちゃってるよ!
それに、ステッキが私のことを全部話しちゃってるよね? なんで話したの!?
「既に報告済みよ」
終わった。私、終わった。
「――『事件はすべて私が解決しました』ってね」
えっ?
「料理人の協力は得たけど、人質事件の解決、海賊船の壊滅、すべて私の策で解決したことになってるわ。ヤシの木も私が精霊魔術で燃やしたことになってる。それに、マホロちゃんが魔法を使えることは兵士たちも知らないわ。みんなマホロちゃんを料理人だと思ってるみたい」
「すまない」
ステッキが頭を下げる。
なんかよくわかんないけど、助かったんだよね。私、助かったんだよね?
気が抜けてへなへなになった私を、カールラさんが優しい表情で見る。
「私もマホロちゃんに期待してるのよ。王都を救ってくれるかもしれないってね」
「あの、ありがとうございます。私のこと、黙っててもらって。えっと、王都を救えるかどうかは、まだちょっとわかんないですけど、がんばります……」
私がもじもじしていると、突然彼女がぱんっと手をたたいた。
「そうそう、ひとつ伝え忘れてたわ! 風呂屋のおばさんは禁固刑! 窃盗と今回の事件は無関係だしね」
すっかり忘れてた! そうだよね! 私がステッキを盗まれたのって事件とまったく関係ないよね!
もー! 思い出したら腹が立ってきた! しっかり反省してください!
ひととおりの話が終わり、私たちが談笑していると、扉をノックする音がした。
扉が開くと、ガチガチに緊張したスタッフが入室してきた。
「し、しつれい、しますっ! お、おちゃのおかわり、を、お持ちしましたっ!」
持っているポットの蓋がカチャカチャと鳴る。
新人さんかな? わかるよ、初めは緊張するよね!
コンカフェ初出勤の日、私もそうだったよ――って、
「ロニー!? どうしてここに!?」
私はびっくりして椅子から立ち上がった。




