表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたらダンジョンを踏破した話
24/58

9. 条件の話

「ただし、ひとつ条件がある」


 え? 条件?

 う、うん……それはそうだよね。

 意味もなく助けたりしないよね。

 なんだろう、条件って。お金とか?


 ――えっ!? まさか!?


「じょ、条件って……」


 反射的(はんしゃてき)に腕で胸を覆い、おそるおそる尋ねる。


「お前を助ける条件は……(めし)だ」


 飯? ごはん?


「お前ら、さっき旨そうなものを食ってたろ。あれを俺にも食わせろ」


 旨そうなのって、カレーのこと?

 お礼にカレーをごちそうすればいいの?

 そんなのでいいの?


「助けてくれるなら……どれだけでも作るけど……」


「本当か! よしっ! 決まりだな!」


 ゴブリンは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「よろしく頼むぜ!」


「う、うん、よろしく」


 なぜか私はダンジョンでゴブリンとパーティーを組むことになった。



「けど、なんで私たちが食事をしていたことを知ってるの? 食べてたところを見てたってことだよね?」


「お前らがここに来てからずっとあとをつけてたんだ。食い物の匂いがしてたからな!」


 後を付けられてたなんて全然気づかなかった。

 私、背後を確認する担当だったのに、まったく役に立ってなかったんだ……。


 ん? そもそも匂いで魔物に存在がバレてるって、ダメじゃない?

 アミュレットのおかげで無事だったけど、もしかしたら私たち、食材ごと食べられてたってことだよね!?


「見つかったのが俺でよかったな!」


 ゴブリンがけらけらと笑った。



    ◇



 私とゴブリンは、ルイザさんを救うためにダンジョンの奥へと向かっていた。

 通路の罠の位置はゴブリンが全部わかっているから、とても安全に進めている。


「あれが食えるのか。楽しみだなー」


 手を頭の後ろで組んで、ぺたぺたとご機嫌で進むゴブリン。

 私はその後ろをついていく。


「こっちだ」


 ゴブリンが分かれ道を左へ曲がる。

 さっきからまったく迷いがない。


「転移罠で飛ばされる部屋は決まってるからな」


 ゴブリンがずんずんと先へ進む。

 前を進むゴブリンに、私は後ろから疑問をぶつけた。


「聞いていい? 何であんな罠が仕掛けてあるの?」


 純粋に疑問。

 なにもあんな手の込んだ意地悪しなくてもいいじゃない。

 まあ、勝手に入ってきてお宝探してるんだから、こっちもちょっとは悪いけどさ。


「転移罠のことか? そりゃ、お前らみたいな侵入者(しんにゅうしゃ)を捕まえるためだ」


 先行するゴブリンが振り返らずに答えた。


『捕まえる』って。

 簡単に言うけどさ、それ、かなり怖いよ?


「このダンジョンに入ってきたのはお前らが初めてだからな。あの女が最初の犠牲者(ぎせいしゃ)ってわけだ」


 ゴブリンがけらけらと笑う。


「犠牲者って……ルイザさん、無事なんだよね?」


「たぶんな。だけど急いだほうがいいだろうな」


 ゴブリンの言葉に胸がざわつく。

 あせる気持ちと、怖い気持ちと、いろいろな感情が一気に押し寄せてくる。


 早く助けに行きたいけど、私はゴブリンの後ろを付いていくことしかできない。

 私は自分の感情を抑えながらゴブリンの後ろを歩いた。



 その後も右へ曲がり、左へ曲がり、階段を下りて……ひたすらゴブリンについていく。


「ここを右だ」


 ゴブリンが通路の突き当たりを右に曲がる。

 そこは、行き止まりだった。


「ちょっと待ってろ」


 ゴブリンがあちこち壁の石を押し始めた。

 そして最後の石を押し込んだとき、何かが噛み合ったような音がした。

 ダンジョンに響く重い音。

 目の前の壁が、横にスライドして開いていく。

 隠し扉ってこと?


「行くぞ」


 ゴブリンがその中へ入っていく。

 私も後に続く。


「こんな仕掛け、あなたがいなかったら絶対わかんないよ」


「な、俺を信用してよかっただろ?」


 ゴブリンは得意げだ。

 けど、それは本当。この扉だけじゃない。ここまでの道順もそう。

 私一人では絶対に無理だった。


「うん、信用してよかったよ、本当に」


 私はゴブリンの背中に向かってつぶやいた。



    ◇



 隠し扉の先は、やや広めな部屋になっていた。

 石で作られた壁と床。

 今まであった部屋とあまり変わらない感じ。


「着いたぞ」


「え? ここ? 誰もいないけど……」


「あの女はその扉の先にいる」


 ゴブリンが指さした先。

 何もないと思っていた部屋には、両開きの扉があった。

 わざと目立たないようにしているのか、装飾(そうしょく)などは一切なくて、小さな取っ手が付いているだけの扉。


 あの扉の先にルイザさんが!?


「早く行こう!」


「俺が案内できるのはここまでだ」


 駆け出した私の足は、ゴブリンの言葉でぴたりと止まった。


「え!? ここまでって、どういう……」


「女がいるところまで案内する約束だったからな。この先はお前ひとりで行ってくれ」


 そんな! たしかに『案内する』って言ってたけどさ!

 ゴブリンが続ける。


「悪いな。俺も立場があるからな。お前らに加勢(かせい)はできないんだ」


 立場? 加勢?


 私もゴブリンも無言になる。

 静まり返る部屋。



 その静けさで気が付いた。

 扉の向こうから、かすかに音が聞こえる。


 これは――金属がぶつかるような音?

 何が起こっているのかわからないけど、何かが起こっている音。


 その場から動かないゴブリン。

 扉の向こうから断続的(だんぞくてき)に聞こえる金属音。


 どうしよう……。

 って、どうするもなにも、ここまで来て後戻りはできない。

 中に彼女がいることはわかっている。


 行くしかない!


 覚悟を決め、私は扉を押し開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ