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コンカフェで働いてたら村を救った話  作者: たこやき風味
コンカフェで働いてたらダンジョンを踏破した話
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8. 扉の中の話

 通路の途中、左側の壁に設置された木の扉。

 窓はなく、取っ手だけが付いている。

 扉の向こうがどうなっているのか、私たちの側からは当然わからない。


 ルイザさんが扉の隙間を覗く。


「中は――部屋っぽいね」


「どうしますか?」


「入ってみよう。その前に、まずは扉に罠がないか調べないと」


 彼女が扉を念入りに調べ始めた。

 隙間という隙間を覗き、ナイフの先端をそっと差し込む。

 少しだけ扉を揺らし、手ごたえを確認する。

 軽くたたいて音を確認する。

 扉に対していろいろなことを試した彼女が、取っ手に手をかけた。


「罠はないみたい。開けるよ」



 扉の先は小部屋になっていた。

 六畳間くらい? の部屋。

 頭は打たないけど、天井はそこまで高くない。


 そして、小部屋の真ん中には――宝箱っ!!

 宝箱を見た瞬間、恐怖心が一瞬で興奮に変わった!


「宝箱だ! 初めて見たっ!」


 宝箱に吸い寄せられるように手を伸ばす。

 あと数センチでその蓋に触れる、まさにその瞬間――


「待って! 罠があるかも!!」


 彼女の叫び声に、私はそのままのポーズで固まった。


 そうだった。ここはダンジョンだ。

 あぶないあぶない。



 彼女が宝箱の罠を調べる。

 扉のときよりも念入りに。

 そして――


「罠はないみたい」


 彼女はゆっくりと宝箱を開けた。


 宝箱の中には、おにぎりくらいの大きさの宝石が入っていた。

 清らかな輝きを放つ透明なその宝石は、ランタンの光を壁に乱反射させている。


「これって宝石ですよね!? すごくおっきい!!」


 大興奮している私の横で、彼女はその宝石を無言でまっすぐに見つめている。

 やがて、彼女はゆっくりと宝石へと手を伸ばした。

 宝石を手に取り、持ち上げた瞬間――


「しまっ――」


 声にならない声を残して彼女が消えた。

 宝石は床に落ちて砕け散った。



 静まり返る小部屋。

 状況が理解できず、立ち尽くす私。


 ステッキが砕けた宝石を調べる。


「宝石に見せかけた転移(てんい)罠だな。おそらく、このダンジョンのどこかに飛ばされたんだろう。ご丁寧に《魅了(みりょう)》の効果もかけてあったようだな」


「そんな……」


 私は崩れるように床に座り込んだ。



    ◇



 小部屋の隅で膝を抱えたまま、時間だけが過ぎていた。


「ここにいつまでもいてもらちが明かないぞ」


「わかってる……」


 ステッキが言うこともわかる。ここにいても仕方がない。

 だけど、私をここまで連れてきてくれたのはルイザさんだ。

 その彼女が罠にかかった。あんなに慎重だった彼女が。

 私は罠なんてぜんぜんわかんないし、もし魔物が現れても戦えない。

 進むことも、戻ることもできない。


 完全に詰んでいた。


 私は膝を抱えた形のまま床に倒れた。

 倒れた勢いで、目から涙が流れた。


「……ダンジョンなんて……来るんじゃなかった……」


「ったく、情けねぇなぁ」


 落ち込んでいる私をステッキが煽ってきた。


「ひどい! こんな状況で! そんな言い方しなくてもいいじゃない!!」


 起き上がり、ステッキに詰め寄る。


「俺は何も言っていない」


「えっ!? それじゃ……誰が!?」


 あたりを見回す。

 誰もいない。

 幻聴? 絶望しすぎて幻聴が聞こえた?



「お前、ピンチなんだろ? 俺が助けてやってもいいぜ」


 やっぱり聞こえる!

 誰かいる!


「誰っ!? 助けてくれるのっ!?」


 見えない相手に話しかける。


「助けてやるよ。けどその前に、アイテムの効果を解除してくれないか? お前に近づけないんだ」


「ア、アイテムって?」


「お前、魔物除けみたいなアイテムを持ってないか?」


 魔物よけ……アミュレットのことだ!

 けど効果を解除って、どうやれば。


「持ってるなら、そのアイテムに『俺は安全だ』と伝えてくれ」


 そっか、アミュレットに伝えればいいんだ。


 ……ちょっと待って。

 アミュレットで近づけないってことは、この声の主は――魔物!?


 恐る恐る、私は声の主に確かめた。


「あなた、もしかして……魔物なの?」


「ああ、お前たちからすれば俺は魔物だな。けど安心しろ、お前を襲ったりはしない」


「そう言われても……」


 私の言葉に、魔物が続ける。


「お前、困ってるんだろ? 今は俺の言葉を信じるしかないんじゃないのか?」


 ……たしかにそうだ。

 この魔物の助けを断っても終わり。

 この魔物が嘘をついていれば襲われて終わり。

 どっちにしても終わりだ。

 でも、魔物の言葉が本当なら助かる可能性がある。


「う、うん、わかった。あなたの言葉を信じるよ……」


 胸元からアミュレットを取り出し、クリスタルの部分に触れる。

 そして『この魔物は安全である』とアミュレットに念じた。

 アミュレットが返事をするかのように、小さく点滅した。


「おっと、アイテムの効果が解除されたみたいだな。よし、今からそっちに行くぞ」


 扉の向こう、通路の方からペタペタという足音が近づいてくる。

 私は扉に向かってステッキを構えた。


 そして――

 扉の前に魔物が現れた。


「よう。助けに来たぜ」


 そこには、子供くらいの身長の魔物が立っていた。

 体は深緑色。

 耳は尖っていて、口には小さな牙。

 腰巻を巻いていて、ベルトから短剣をぶら下げている。


 ゲームで見たことがあるような魔物。

 ゴブリン? だっけ?



 私は現れたゴブリンに尋ねた。


「あ、あの、本当に私を助けてくれるの?」


「ああ。罠で飛ばされた女のところまで俺が案内してやるよ」


「よかった……ありがとう!」


 私がホッとしたのも束の間、


「ただし、ひとつ条件がある」

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