落ち着かない気持ち
夕食後は、肝試しを残すばかりとなった
正直先ほどの後藤とのやり取りが頭に残って
志保は心から楽しめないような気持ちだった
(ほんと恋愛脳の奴って自分さえよけりゃいいのかよ…)
志保は貰い事故にでもあったような気分で
ますます恋愛ごとに対して苦手意識が芽生えていた
肝試しは今までの活動と違いグループ関係なく
好きな人と自由に回れるので、仲の良い友達グルー
プで回るもよし、両思い同士で回るもよし…
ここまで考えて志保は嫌な予感がした
なんだか先ほどから視線を感じる気がする
少し離れたところに野球部の集団がいてそちらから熱い視線が送られてるのでは…
(まじでやめてくれ…勘弁してくれ…)
後藤と2人きりで回るのは嫌だ
先ほどのような空気になるのは絶対にごめんだ
誰か自分と回ってくれる人はいないか
周りを見渡す、が愕然とする
(なにこれ、カップルばっかりなの?)
たまたまかもしれないが、志保の周りは男女のペアが囲んでいた
しばらく目を凝らして探すと遠くの方に女子のグループが見えた
そちらに混ぜてもらおうと足を向けた時
後藤がこちらに向かって歩いてくるのが見えた
(…やばい!)
咄嗟に振り返って、逃げようとしたとき
志保の目の前に優吾が立っていた
「…っゆーご!私と組まない!?」
「声デカ…。別にいいけど」
どこのバディの誘い文句だ
と自分でツッコミを入れながらここで優吾を捕まえられたことにホッとする
―――――――――――――――――
「優吾は佐々木とかと組まなかったの?」
肝試しの順番が回ってきて、山道にあるスタート地点から2人で歩いて行く
もう山の中は真っ暗なのでライトで照らしながら進んでいく
佐々木翼は優吾が特に仲良くしてる男子で、学校ではほとんど彼とつるんでいる
「んートイレに行って戻ってきたら、もう大体決まってたから1人で行こうと思ってた」
「なるほど」
優吾は出遅れてきたようだった
どおりで他の女子に捕まってなかったのか
「トイレにずっといたの?もしかして具合悪いの?貧血とか喘息は大丈夫なの?」
いつもの調子で志保は優吾に尋ねる
優吾は小さい時から、少しハードなことをするとすぐに喘息や貧血を起こしてしまうためつい確認するのがクセのようになっている
「ただのしょんべんだよ。大体喘息とかいつの話だよ。」
さすがにうんざりしたような顔で言われてしまい、少し寂しいがホッとする