表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

予想外の出来事






施設に着いてからはグループみんなで協力して

屋外のアスレチックを攻略したり

創作ダンス、湖でカヌーを体験したりと



なかなかハードなスケジュールをこなした





そして残すところはカレー作りと肝試しだけとなった





「じゃあ私野菜切ってくるね!」



調理時間が始まるやいなや志保は率先して作業に取りかかる



志保は小さい頃からよく料理を作るので

包丁さばきもなかなかのものだし皮剥きだって朝飯前だ




カレーなんかは優吾にもよく食べさせたりもしていた




「俺もそっち手伝っていい?」




志保がザルに入れた野菜を持って

炊事場へと向かおうとすると同じグループの後藤仁太(じんた)が声をかけてきた





飯盒(はんごう)係とハンバーグ焼く役目取られたから、俺にもやらして」




志保の手からザルを取り上げながら、後藤が続けて言う




「オッケー、んじゃ一緒にやろ」

「おー」





2人は炊事場に行くと、錆びたパイプ椅子に腰掛けながら、ゴミ箱を囲んで野菜の皮剥きを始めた





「俺こーゆうの初めて。柳は料理する?」




後藤が目線はピーラーを持った手元に落としたまま問いかけてくる





「するするー。割と料理すんの好きだからさ。

お菓子も作るしご飯系も大体作れるよー」





志保は包丁でジャガイモの皮を器用に剥きながら

難なく答える





「まじで!めっちゃ家庭的ってやつ?」





「まぁ今時料理するくらいで家庭的って言われてもなぁ。レシピもGoogle先生見たら誰でもできるし」




軽く笑いながら志保は謙遜して話す




「いやーすげーよ。俺めっちゃ不器用だから超尊敬するわ。今度食わしてよ」




ハハっ…と乾いた笑いでその依頼を受け流す





ーーー後藤ってこんな奴だっけ?





後藤仁太は野球部に所属していて

いつも部の仲間と群れているいわゆる陽キャだ




低学年の頃はもっとヤンチャで乱暴者で

志保はあまり良い印象がないというのが本音だ




だが今はどうだろう




(私にお世辞なんか言っちゃって…)




「柳って好きな奴とかいる?」




なんだか気味が悪いと思っていたら、さらに嫌な雲行きになってきた





「……いやー、あんまり興味なくてね」


「じゃあ今は誰もいないってこと?」


「うん、まぁ」


「じゃあ俺はダメ?」





(うわー1番やな流れだったー)




「…うーん、それは無いかなぁ」


なるべく平静を装って、波風を立てないように答える


「うわっ即答」


後藤はふざけて傷ついた顔をしながらも

可笑しそうに笑っていた



「だって後藤私のこと好きじゃないっしょ?」



「なんで決めつけんだよ。柳のこといいなって思ってたけど?

まぁ柳は俺のことなんとも思ってないとも思ってたけど」



軽い感じで言っているが、なんとなく嘘を言ってるようには見えなかった



そう言われるとなんだが信じられないと思いながらもなんだか申し訳ない気持ちになる




「後藤がダメとかじゃないんだけど

あんまりそういう恋愛のこととか正直よくわかんなくってさ」




思ったより後藤が話しやすいからか、志保も正直な気持ちを打ち明ける




「ぶっちゃけまだ小学生なのにそういうの早いっていうか…」




「フッなんだそれ、そんな客観的な視点で自分のこと見てんの?」




後藤に吹き出したように笑いながら言われ

確かにそうだなと志保は思った




「まぁそれは後付けでさ、ようするに恋する気持ちってやつがどーにも理解できんのよ」




「じゃあそれを理解するために俺と付き合うってのは?」




わざとおどけたように言った言葉に、後藤が被せるように言ってくる




「ごめん、それはほんとに無理」



志保は謝りながらゴミ箱にぶつかるほど

大袈裟に頭を下げる



「……」



今度も笑ってくれると期待したのに


後藤は黙って人参の皮を剥きながら下を向いていた





「じゃあ友達からってやつは?それも無理?」




沈黙に耐えながら次の言葉を待っていると


後藤が呟くように言った



漫画とかでよく見るやりとりだが

こんな気まずいシーンだったのか、と頭の片隅で冷静に考えてしまう






「…うん、わかった。」


こう言うしかないよな状況に追い込まれてるよな…と思いながら


この状況を乗り切るにはこれしかないなと志保は答えた








―――――――――――――――――――


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ