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再び






金曜日の放課後




今日もまた人々は汗を滲ませながら、秋の気配は到底感じられない気温の中歩いていた





志保もまた駅まで向かいながら

昨日起こった出来事を考えていた




昨日優吾に告白されて


どんな風に答えるのか


そもそも答えは必要なのか


もう話しかけてもいいのか



今日は朝から色々なことがぐるぐると頭の中を巡って逃げ出したいほどだった




しかし、いざ学校に行ってみると

志保の悩みの原因を作った張本人が見当たらない







恐る恐る優吾のクラスを覗きに行ったが、どうやら昨日の体調不良が原因で今日は休みのようだった






(…助かった…)






優吾と話せたことは純粋に嬉しかったが

この後どんなふうに振る舞えばいいかが全く

わからなかった






今優吾に会ったら、とても平静を保てる自信がない







このまま週末に入り、何事もなかったよう終わってしまうのか




それとも優吾は何かを志保に求める意味で伝えたのか





どちらにしても優吾にしか答えはわからないのだが





電車が来てからも、志保の頭は優吾のことでいっぱいになっていた。




――――――――――――――――






今日はあっという間に最寄り駅に着き、のろのろと歩きながら改札を抜ける




今日は優吾がいないため寄り道する必要はないが




なんとなく家ではなくどこかに行きたい気がした





昨日は行けなかったので今日こそ本屋に行って、心が落ち着く本でも買おう




そう思って方向を変え、歩き出したとき




「柳」



呼び止める声がしてビクリと反応してしまう



この声は




「…佐伯…」




振り向くと白いTシャツにゆったりとしたパンツ姿というラフな格好をした優吾が立っていた





志保が驚きながらも声を絞り出すと

なぜか優吾は少し眉をひそめた気がした






「体調はもう大丈夫なの?」






顔色は随分と良いようだったが、帰ってからもそれが気になっていたので志保は尋ねた





「帰ってすぐ寝たら一晩で治った。今日は念のため休んだけど」





それを聞き志保はほっと息を吐く





「そう…じゃあ良かった」






「昨日は色々迷惑かけてごめん。スポドリと栄養ドリンク助かった」






まさか優吾にお礼を言われるとは





いや、そんな礼儀知らずじゃないだろうけど




世話を焼かれるのが嫌だと言われてから、

優吾に何もかも拒否されているような気がしてしまっていた




だからこそ、昨日の告白がより理解不能で

なぜなのか?と堂々巡りしていたのだった






「……っ全然大したことじゃないから。気にしないで、じゃあ」




これ以上はどう話したらいいかわからず、

志保はこの場からとにかく足早に立ち去ることに決めた




しかし




「待って」



立ち去ろうとする志保の前に優吾が立ちはだかって、引き止める





返事が欲しい?




それともあれは体調が悪くておかしくなってたとか言う?




やっぱり取り消し?




また世話焼かれてウザかった?




一瞬のうちに頭の中に色々な言葉が浮かんだが

どれも実際に声に出して言うことは出来なかった




「…なにか…用?」




できるだけ冷たい声音にならないように

余計なことは言わないように

志保はその一言に全神経を使った




今の優吾の目線は志保の目線よりずっと高い



目を合わせないようになるべく下を向いている




優吾は志保のことをきっと見ているだろう



頭のてっぺんに意識が集中して、ヒリヒリしてるような感覚になる





「……ここで柳のこと待ってた。」




「俺柳と…志保と昔みたいに話がしたかった」




志保の脳裏に記憶が蘇る




優吾と過ごした宝物のような日々





ああ、ずるい


そんなこと言って


私がどれだけ我慢していたか


どれだけ寂しかったか



知らないくせに




突っぱねてやりたい



勝手なこと言わないでって



でも





「ごめん……志保。ほんとにごめん。」





喉が詰まって声が出ない





今喋ったら泣き出してしまいそう




泣き虫は優吾のほうだったはずなのに




優吾のせいで私のほうが泣き虫みたい








何も言えずに下を向いて

目を見開いて涙を堪える






そのまましばらく固まっていると




優吾が屈んで志保の顔を覗き込んだ



久しぶりにこんな間近で顔を合わせた



かっこいいってみんなに言われてるけど

小さい時とやっぱり変わってない



強くて優しい目






「泣かせてばっかでごめん。」


その一言で我慢の限界だった






優吾の胸に顔をうずめて声を上げて泣いた





優吾は私を抱きしめて

「ごめん」と言いながらずっと髪を撫でいた






―――――――――――――――――



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