昔のように
「しーちゃん、大丈夫だよ」
志保は昔のことを思い出していた
一緒にいるときに突然優吾の具合が悪くなることがよくあった
そんな時、志保は優吾が死んでしまうんじゃないか
消えてしまうのではないかと不安になった
不安気な志保の顔を見て、優吾はいつも反対に励ましてくれた
自分が辛くても、人のことばかり考える優しい子だった
本当は弱虫なんかじゃない
優吾は強くて優しかった
そして志保はそんなゆーごを守らなければと強く思ったことを
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「貧血?体調…悪いの?」
志保もしゃがみ込み目線を合わせて声をかける
俯いて膝に顔を突っ伏していた優吾が顔を上げ
一瞬目を見開いた気がした
「歩けないなら誰か呼ぼうか?」
続け様に志保が問いかける
少しの沈黙の後
優吾が小さく口を開いた
「………いや、大丈夫。
少し休めば治るから。もう行っていいよ」
「…………」
手助け不要と言われても
どう見ても平気そうには見えない
「…すぐ治るように見えないんだけど。体調悪いの?なんか薬とか持ってる?」
「……ちょっと風邪気味で。朝は大したことなかったけど、悪化したみたい」
どうやら痩せ我慢していたようで
志保が去らないことを確認すると事情を説明した
「ちょっと待ってて」
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すぐ近くのコンビニに行き
水とスポーツドリンク、栄養ドリンクを買ってきた
「今日はおばさん仕事?迎えに来れる人いる?」
水を手渡しながら、志保は尋ねる
「居ないし、家までなら歩いて帰れるよ。
少し休んだら平気」
優吾は先ほどよりは少しましな表情だが
まだ青白い顔をしながらペットボトルの水を飲んだ
「本当に平気だから柳は帰っていいよ」
今度は顔の前に手を出し抑えるような仕草をする
随分と嫌われたものだ、と志保は思った
小さい時はしーちゃんしーちゃんと着いてきたくせに
今度は悲しい、というよりだんだんと腹が立ってきた
あんなに面倒を見てやったのに自分は1人で大きくなったような顔をして
(…せめて心配くらいさせてくれたっていいじゃん…
そんなに私に構われるの嫌だっていうのかよ…)
「……そんなに心配するようなことじゃない
もう帰っていいよ」
冷や汗をかきながら優吾が続けて話す
(帰れ帰れってうるさいのよ…
……っていうか…)
「こんなに具合悪そうな人普通放っておけないっつーの!」
(あぁ…言っちゃった……)
なんとか穏便にやり過ごそうと我慢していたが
ついに爆発してしまった
優吾は驚いたような顔でこちらを見て、固まっている
だがもう止めることは不可能だった
「私に姉貴面されたくないのはよーくわかった!
私だってあんたみたいな無表情の可愛くない弟なんかいらない!
だけど体調悪くて倒れてる人放っておいて、帰ったら寝覚め悪いでしょーが!ましてやそれが知ってる人間で!」
つい勢いで要らぬことまで言ってしまった気がするがもうどうにもならない
心のどこかでは、後悔の嵐が吹き荒れているが
「…っとにかく!少し休んだら、私が家まで送って行くから。途中で倒れてたらって気が気じゃないし。
家に入ったの見届けたらそれで満足するからいいでしょ!?家近いんだし」
優吾の顔は見ずに勢いよく捲し立てた
断られる雰囲気にならないようにわざとだ
お願いだから断らないで、と念じていると
「わかった」と一言だけ答えてくれた
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