第94話
次の日になりミラとシリルの2人が家へと来た。2人によるとシルビアは覚えることが出来たのでダンジョンで練習してくるとのことだった。
「すいませんが、今日もお願いします」
2人が頭を下げてお願いしてくる。
「じゃあ、今日も庭で僕とセシリアの2人で教えるから行きましょうか」
4人で庭へと向かう。そんな時に2人から魔法を習得する方法について聞かれる。
「魔法は発動したときのイメージがちゃんと出来てるかが大事だと僕は思っているね。シリルさんに教えている《風魔法ウインドフィールド》は弱い風を周囲に張り巡らせる事が第1ステップ、第2ステップでその風に物が触れたときに感じること事だね。その魔物の正体までは知る必要は無いよ。何かがいるということが分かればいいんだからね。いることが分かれば観察も索敵も楽になるよ。でも、対象がないとよく分からないかな?」
「そうですね。風を周囲に張り巡らせることは出来ているとは思うのですが物に風に触れている感じがよく分からないです」
シリルは風を周囲に発生させる事は出来ているみたいだが自分の発生させた風と魔力が繋がっていないいないために風に触れた物を感じることが出来ないみたいだった。後は周囲に発生さている風に魔力をつなげる練習をすればいいだろう。
「セシリア、僕はシリルさんを連れて街の外の森に訓練に行ってくるけど、そっちはどうする?」
ミラさんと練習していたセシリアが少し考えて一緒に行くと言ってきたために一緒に街の外に出ることにした。
そして、森に着いてから僕はまず最初に自分で《風魔法ウインドフィールド》を発動させる。
「ここから、左前方にゴブリンが数匹いるみたいだ」
僕はそう言うと魔法を解除する。そして、シリルに今度は使ってみるように言う。
「《風魔法ウインドフィールド》」
シリルが魔法を使う。シリルはその発生させた風に集中する。
「あれ、この反応が魔物ですか?あ、動いているのが分かる」
どうやら、コツを掴んだらしい。魔力を風に込めるのは実は結構面倒である。風自体が目に見える物では無い上に霧散してしまう事もある。魔力を込めすぎると魔物に気づかれる可能性もある。そのため、風に込める魔力量の感覚が掴みやすい人もいれば掴みにくい人もいる。シリルさんの場合は斥候をやっていたせいか繊細な作業が得意なのだ。しかし、そのためなのか風に魔力を込めるのは出来たのだがその魔力量が逆に少なすぎていたために魔物に触れた時の風からの魔力が戻ってくる前に霧散してしまっていたのだった。
ここで、実際に僕が使って見せてどれくらいの魔力量を使っているのかを見て、感じたことでどれくらいの魔力が必要か分かったことで出来るようになった。
「後は、練習して魔力操作に慣れたら使用する魔力量も少なくなる。実際、僕は今回込めた魔力よりも半分ぐらいの魔力量で使えるからね。だから、練習だけは欠かさずするようにね」
僕の言葉にシリルが頷く。
「あ、ゴブリンがこっちに近づいて来てる」
魔法でまだゴブリンを見ていたシリルが言う。
「それじゃあ、今度は私の番だね。よーし、頑張るよ-」
ミラが今度は自分が頑張る晩と力を込める。
「ああ、まずはセシリアがお手本を見せよう。それで、魔力の流れや込めた魔力量を知ってね」
僕は最初はセシリアがお手本を見せると、頑張ろうとしていたミラを消沈させる。
「いきなりやるように言わないよ。シリルさんの時も最初に僕がやって見せたでしょ。最初はセシリアがお手本を見せて、その魔法がどういった効果を生むのかを知るのも重要だからね。魔法はイメージがかなり重要だよ。後は、どれくらい魔力を込めればいいのか、それをセシリアの発動した魔法を見て覚えてね」
ミラが少し悲しそうな顔をして頷く。
しばらくして、ゆっくりと歩いてきているゴブリンを発見する。ゴブリンは4匹いてそれらがこちらを発見すると走り出してきた。セシリアは全員の前に立ち迎え撃つ。
「皆、目を閉じて!《光魔法フラッシュ》」
目を閉じていても分かるぐらい強烈な光が瞼を叩く。
そして、光が収まったときに目を開けるとゴブリンが4匹目を手で覆いながらもがき苦しんでいた。それを見て、皆で手分けしてゴブリンを倒す。
「ミラさんは今ので分かった?」
「えっと、何となくですけど分かりました。かなり、光量が強かったので魔力消費量は結構ありますよね?」
「そうですね。この魔法は一瞬の魔力放出にかかっていますね。込めた魔力量が少ないと弱い光にしかならないですから意味は無いですね。ミラさんが昨日していたのは瞬間的に魔力を使うのでは無く、持続的に魔力を使っていましたから魔法としては《光魔法ライト》になっていましたね」
「ああ、《光魔法ライト》の使い方だったんだ。それだと魔法名と違うせいで発動しなかったんだね。魔力の使い方と魔法名は重要だから、魔法が不発してたんだね」
「昨日、私が魔法を使えていなかったのは魔力を持続して込めようとしていたせいだったんですね。《光魔法フラッシュ》の場合は一瞬の魔力が大事なんですね」
ミラは魔法の仕組みを聞き、一人頷きながら言う。
「じゃあ、ちょっと、やってみようか。ゴブリンを呼んでくるから少し待っていて」
僕はゴブリンを探すために森の中に入る。そして、3匹ほどで森の中を徘徊していたゴブリンを引き連れてセシリア達の方へと戻って行く。そして、ミラがセシリアの前に立ち魔法の準備をする。
僕はミラやセシリア達を追い抜くとミラが魔法を使う。
「《光魔法フラッシュ》」
強い光量がゴブリン達とセシリア達の目を焼く。因みに、僕は嫌な予感がしたため後ろを向いたままだった。そのために、ミラの魔法の効果を受けなかった。
その場に、手を押さえて転がるゴブリン達とセシリア達がいる。
「使うときは、セシリアがしていたように目を閉じるように言ってから使おうね。この魔法って何故か自分は大丈夫なんだけど、他の人には効果があるからね」
「すいません、今度からはまず使う前にちゃんと言います」
流石にミラも反省しているみたいなのでそれ以上言わずに、まだ悶えているゴブリン達を仕留める。
それから、セシリアとシリルの目が回復するのを待ってから街へと戻った。
ミラは戻る前にセシリアとシリルの2人に猛烈に文句を言われていたがそれは仕方ないことなのでフォローに入らずに2人の気が済むまでやらせていた。
街に帰ったときにはミラはかなりぐったりしていた。シリルもミラもこれで魔法が使えるようになったので後は練習を欠かさずやるように言ってからそれぞれの家へと帰った。