第91話
助けた冒険者パーティー『女神の翼』と分かれて11階層を進んで行く。
「ご主人様、魔法の属性を調べるのを無料でして良かったのですか? もし、彼女たちが他の人達に話しでもしたら面倒になったのではないですか?」
セシリアが『女神の翼』のメンバーに属性を調べるのを何故したのか疑問に思ったらしい。
「別にしなくても良かったし、お金をもらっても良かったんだけどね。まあ、カルラの知り合いみたいだったからね。まあ、後は口止め料も兼ねてるけどね」
「口止め料ですか?」
「カルラが奴隷だったのを知っているみたいだったからね。って事は手足を再生する手段を持っていることが知られたわけだ。まあ、だから調べてあげる代わりに誰にも言わないでねって事だよ」
「気にせずに話してしまうかも知れませんよ?」
セシリアはまだ納得しないみたいだった。
「大丈夫じゃ無いかな? あの、リーダーのシルビアって人は商家のお嬢様らしいからね。どっちが特かは分かっているだろうから、メンバーの人に言わないように言うだろうね。まあ、戻ったら魔法の使い方について聞いてくるかも知れないけどね」
「セシリア姉の心配も分かるけどね。あの人達は大丈夫だと思うよ。ウチのご主人の強さを見たからね。嫌われて敵対するような事はないよ」
カルラが彼女たちは大丈夫だと言う。カルラが奴隷になる前に『女神の翼』のパーティーのミラからは一緒にやらないかと言われていたらしい。
カルラのいた前の冒険者パーティーは田舎で一緒だった幼なじみだった。だから一緒にやって来ていたが最後の方はカルラは幼なじみ達よりも強くなっていた。11階層以上をいけたのもカルラという壁役がいたというのが大きかった。そのためにカルラが手足を無くし奴隷になった時に冒険者を諦めて田舎に帰ったのだ。
ミラは合同パーティーの時に一緒に戦って、その実力を見てカルラとならもっと上を目指せると思って誘っていたのだ。ただ、カルラは上に行くより幼なじみ達と一緒に冒険するこの方が大事だったためにそれを断っていた。しかし、大暴走に巻き込まれて結局は幼なじみ達との冒険も無理になってしまい、自分から奴隷になるしか無かった。奴隷になったこと聞いてもミラは何故か良く話をしに商館に来てくれていた。何故来てくれていたのか結局は分からなかったみたいだった。
「まあ、カルラの話を聞く限りは良い人達みたいだから大丈夫じゃ無い? とりあえず、もう少し進もう。そろそろ夜になっている頃だろうからね。休める部屋を見つけないと」
しばらく進んで行った所にあった部屋に入る。その中にはリザードマンが4体と他の4体より大きいリザードマンがいた。
「あれはリザードマンキングだね。この11階層で極まれに出てくるって言うレアな魔物だよ。あれの魔石はハイオーガよりも高く売れるんだけど、普通のリザードマンよりかなり強いって聞くね。この11階層に来たばかりの冒険者で運悪く出会ってリザードマンキングにやられる奴がいるんだよね。あたいの前のパーティーは見かけたときにすぐに逃げたけどね」
「ふーん、ならキングは僕がやるよ。まあ、もう休みたいから神剣を使ってサクッとやるから他のリザードマンは任せたよ」
そう僕は言うと神剣を構えてリザードマンキングに向かって走って行く。リザードマンキングは走ってくる僕に対して大きな剣を構える。そして、剣を大きく振りかぶった所で走る速度を上げて振り上げた腕を切り落とす。リザードマンキングは自分の腕が切られたショックで叫び声を上げる。僕はさらにその足を切りつけて転ばせてから未だ叫び声を上げているリザードマンキングの首を切り落とす。
僕がリザードマンキングと剣を交えようとしているとき、カルラとフィーナもリザードマン4体と対峙していた。4体は今まで出会ったリザードマンと違い手強かった。
「前にギルドで聞いていたけど、リザードマンはキングがいると何故か強くなるんだよね。連携もそうだし力も速さも上がっているんだ。フィーナ、ご主人がキングを倒すまでは深追いは止めて守りに専念するよ」
「うん、わかった」
フィーナは深追いは止めて守りに専念する。実際、守りに専念するしか無かった。このリザードマンは隙があるように見えて、実はその隙はリザードマンがワザと作った隙でそこを攻撃しようとすると他のリザードマンから必ずといってよいほどに邪魔が入る。そして、それが少しずつストレスになっていた。しかも、セシリアとマリアの魔法の射線に入らないようにカルラとフィーナの位置を上手に動かして壁にしている。そのために、セシリアとマリアはカルラとフィーナの援護が出来ないでいた。
均衡が崩れたのはキングが叫び声を上げた時だった。その叫び声を聞いてリザードマンは距離を取ってキングの方へ振り返ってしまった。そして、キングがその腕を切られて悲鳴を上げてさらには足を切られ首を切られる所を見てしまう。
それを見たリザードマンは4体全てで僕の方へと向かってくる。
「こっちに向かってくるんだ。キングを倒されて敵討ちのつもりなのかな?」
僕は向かってくるリザードマンの剣を躱しながら、剣を刺して1体ずつ仕留めていく。
「カルラとフィーナでもリザードマンを1体も仕留められなかったの?」
リザードマン達を倒して安全になった部屋で夕食を食べながら僕はカルラとフィーナに聞く。
「リザードマンはキングがいると何故か格段に強くなるんだよね」
「そうそう、こっちに必要以上に踏み込んで来ないし、隙が出来たと思っても他のリザードマンから必ず邪魔が入って攻撃が出来なかったんだよね」
カルラもフィーナも今まで通路で出会ったリザードマンよりも強かったと言う。
「かなり強かったと思います。私もセシリアさんも攻撃するタイミングを計っていましたがリザードマンはカルラさんとフィーナさんを上手いことに壁に使って私達が魔法を使うのを邪魔していました」
マリアが魔法で攻撃しようとしたけれど出来なかったと言う。
「凄いね。キングがいるだけでそこまで強くなるなんてね。オークキングと一緒にいたジェネラルは強くなっていなかったのに、魔物も面白いね。リザードマンキングで訓練したいけど滅多に出ないんだっけ?」
僕がカルラに聞くと滅多に出会うことは無いと答えた。
「じゃあ、仕方ないか。出会ったときに訓練するぐらいにして先に進むようにしよう。今回は次の12階層が目的だからね。それで、夜だけど皆で僕、カルラとセシリア、マリアとフィーナで見張りをやるようにしよう。時間は1組3時間位を目処にね。一応、夜のとばりを使っておくから大丈夫だとは思うけど、念のためにね。最初はマリアとフィーナ、次は僕で最後はカルラとセシリアね」
「分かりました」
セシリアが代表して返事をする。
「よし、ならご飯を食べたらテントを立てて今日は休もうか」
夕食を食べてテントを立て明日に備えて眠りにつくのだった。