第90話
部屋で休む事にしたときにカルラが手足を無くして奴隷であったときの事を知っている者がいた。そして、どうして手足があるのか聞いてきた。
「ああ、このご主人は手足の再生する手段を持っていてね。それで、治してもらったんだ」
カルラが素直に答えてしまう。それから、小声で僕に話しかけてくる。
「この人は以前からあたいに声をかけていてくれてね。よく知っているんだ。奴隷になってしまったときも顔を見に来てくれてたからね。だから、誤魔化しきれないと思ったんだよ」
カルラがごめんよと謝ってくる。相手の女性は驚いた用に僕を見てくる。
「まあ、いいか。確かに僕には人の身体を再生する手段を持っているよ。でも、誰彼構わず再生するつもりは無いよ」
「そうなんだね。そんな力があれば教会も貴族も放っておかないよね。ああ、そうだ、助けてくれたのに自己紹介もまだだったね。私達は冒険者パーティー『女神の翼』ていう女だけのパーティーで私はミラっていうの。カルラは前のパーティーにいたときにちょっとしたことがあって仲良くなったんだよ」
ミラと名乗った女性が何故か嬉しそうに話す。
「カルラが元気になって良かったよ。奴隷になってたときは死んだような表情をしてたもん。でも、コボルトと戦っていたときにチラッと見たんだけど昔より強くなってない? 前に合同でパーティー組んだときより明らかに強くなっているよ」
「まあ、ご主人にあれから鍛えられたからね。魔法も教えてもらったのも大きいかな」
「魔法も使えるようになったの? え、魔法の系統は何? どうして使えるようになったの?」
ミラが驚いたのか大きな声でカルラに問い詰める。それを聞いて他のメンバーもやって来た。
「どうしたのミラ、大きな声を出して」
リーダーの女性と思われる人が代表して声をかけてくる。
「あ、あなた、ごめんなさい。助けてくれたお礼を言ってませんでしたね。私は冒険者パーティー『女神の翼』のパーティーリーダーをしているシルビアです。この度は助けて頂きありがとうございました」
シルビアはお礼を言うと綺麗に頭を下げる。頭を下げるその姿を見るだけでも貴族階級の女性の用に思える。
「因みに私達のリーダーはある商家のお嬢様だよ。まあ、政略結婚が嫌で家を飛び出して冒険者をしているんだけどね」
「ミラ、私の事は言わないで。それより、さっきは大きな声を出していたみたいだけど何があったの?」
「リーダー聞いてよ。カルラが前に会ったときより強くなっているんですよ。どうしてなのか聞いたら魔法を使えるようになっているみたいで、それに驚いていたんですよ」
シルビアがそれを聞いて驚いていた。
「やっぱりカルラさんだったんですね。手足を無くして奴隷になってたとミラから聞いていたんですけど、その姿は……」
「あ、リーダーその辺は何か複雑な事情があるみたいで聞かない方が良いかも。それよりもカルラが魔法を使えるようになったことですよ」
ミラがシルビアの言葉を遮り言う。
「それは大事だと思うのですけどね。分かりました、何か事情があるみたいなので聞きません。それより、カルラさんの魔法が使えるようになったのは何か理由があるのですか? 前の合同パーティーの時は使えなかったのに」
「ああ、あたいはご主人に教えてもらったよ。ご主人が言うには人にはそれぞれ最低1つは才能があるらしいからね。あたいは地属性だったから分からなかったんだよ」
「まあ、普通は水か火は生活に直轄するから調べる事は多いけどその他は調べないことが多いからね。だから気づかなかったのか。私達のパーティーの魔法使いの子は師匠に調べてもらったらしいけどね」
ミラは1人納得したように頷き、シルビアは何か考え事をしていた。
「あの、その魔法の属性を調べるのですけど、私達に出来ますか?もちろん報酬は払います。私とミラ、後もう1人斥候の子がまだ魔法を使えることが出来ないんです。お願いできませんか?」
シルビアが頭を下げてお願いをしてくる。それにカルラが小声で話しかけてくる。
「魔法の属性を調べるのって結構かかるらしいんだよ。金貨数枚かかるの。水や火は村で使える人が調べてくれるから無料な事が多いけどね」
「別にお金はいりませんよ。助け合うのも冒険者だと思いますから。ついでだから全員の魔法の属性を調べてみましょうか。おーい、セシリア」
僕が座って休んでいたセシリアを呼ぶ。
「僕とセシリアで全属性を調べられますのでやってしまいましょう」
「本当ですか。あ、ありがとうございます」
シルビアが本当に嬉しそうに笑顔でお礼を言う。そして、それを見て何故かセシリアが僕の手を抓ってくる。
「ご主人様、何故呼んだのですか?」
「痛いんだけど、セシリア。この人達の魔法の属性を調べてあげようと思ってね。まあ、何となくだよ」
「何となくなんですか? こちらの女性が綺麗だからとかでは無くてですか?」
セシリアが何故か笑顔で、でも怒っているのが分かる声で言う。
「セシリアの方が綺麗じゃない?」
「ちょ、ちょっと、ご主人様何を言っているんですか。ああ、もう、属性を調べるんですよね。えっと……」
セシリアが慌てたように、そして誤魔化すように属性を調べようとする。
「ふふ、シルビアと言います。セシリアさんよろしくお願いします」
シルビアが笑って自己紹介をして、セシリアに手を差し出す。
「えっと、はい、よろしくお願いします。シルビアさん、魔力の流れを感じたら教えてください」
「分かりました」
セシリアがシルビアの属性を調べ始める。僕はそれをよく分からない顔でそんな2人を見る。
「ご主人って鈍感なの?」
カルラがふとそんな事を言ってきた。
「よくわからない。じゃあ、ミラさんだっけやろうか。魔力の流れを感じたら教えてね。順番に各属性の魔力を流して行くか」
「あ、えっと、うん、その、お願いします」
ミラがゆっくりと手を差して来る。僕はさっさと手を握ると、ミラは大きな声を上げる。
「うひゃあ」
「ああ、ミラは男の人と手を握ったのって初めてだっけ? ミラって乙女過ぎるからね。貴方のようなかわいい男の人に手を握られて恥ずかしいんだよ」
斥候と思われる女性がそんな事を言う。
「恥ずかし事じゃ無いと思うんだけどね。始めるよ」
「は、はひゅ」
ミラの声が裏返る。僕は気にせずに魔力を流す。
そうして、ミラには光属性の才能があるのが判明した。リーダーであるシルビアは地属性と光属性の2種類の属性を持っており、斥候と思われる女性は風属性、魔法使いの女性は新たに闇属性の魔法の才能があることが知ることが出来た。
「本当にありがとうございました。でも、お金の方は良かったのですか? 助けて頂いただけでなく魔法の才能まで見て頂いたのに」
「大丈夫ですよ。魔法に関しては誰に教えてもらうか。もし、機会があれば僕達が教えても良いんですけど、まだ奥に行くつもりですから」
「いえいえ、流石にそこまで面倒を見てもらうわけにはいきません。あ、でも、私達は今日はもう引き上げようと思っています。もし、町で魔法の習得に手間取っていたら教えてもらっても良いですか?」
シルビアさんが申し訳なさそうに言ってくるのでその時は良いですよと了承して、僕達は部屋を出て先に進んだ。