第89話
僕がハイオーガと戦い始めた頃、カルラとフィーナもオーガとの戦いを始めていた。
「フィーナ、オーガを壁の所の入り口から引き離すよ」
「うん、わかった」
カルラはこの後に来るリザードマンと助けた冒険者が戦うための場所を空けるためにオーガ達を引きつけるように戦いを始める。その中でフィーナはオーガに接近するとその鋭い槍の1撃でその命を奪う。すると、仲間を倒されたオーガ達がフィーナに群がる。それをフィーナは魔法で上げた身体能力でオーガ達の攻撃を軽々と躱していく。フィーナに集中しすぎていたオーガはセシリアとマリアの魔法によって次々と倒されて行き、セシリアとマリアに向かおうとすると隙が出来てしまい、そこをフィーナが仕留めていく。
(フィーナは凄いね。もうあたいよりは強いかも知れない。でも、今は躱すことが出来るけどそれが難しい敵もこれから出てくる。ああ、そうなったらあたいがフィーナのフォローをすれば良いのか。そうだよね、それがパーティーってもんだ)
カルラは色々と考えながらもオーガを1体ずつ確実に倒して行く。フィーナは踊るように槍を振るい、オーガの振るう武器を躱し、時に仕留めていた。
オーガは程なく全滅した。オーガは最初は数体に見えたが思ったよりも数がいた。
「お疲れ様、思ったよりもオーガの数がいたみただけど、余裕はあったみたいだね」
「そうだね、フィーナがオーガの速さを全然苦にしてなかったからね」
ハイオーガとの戦いの時にたまに見ていたがフィーナは魔法を使えばオーガぐらいでは相手にならない位強くなっていた。
「まあ、今は良いけどね。カルラはフィーナの方を注意深く見ておいてね。上手くいきすぎて調子に乗ってしまったらミスをしそうだ。戦闘中でそれは致命的だからね」
「ああ、分かってるよ、ご主人」
カルラと話を終えると、セシリアやマリアと楽しそうに話しているフィーナの所に向かう。
「あ、あの・・・」
僕とカルラがセシリア達の所に合流したところでリザードマンの群れを倒した冒険者のパーティーがおそるおそるといった感じに声をかけてくる。
「あ、お疲れ様です。そちらも無事に倒せたようですね」
僕は代表して冒険者パーティーに声をかける。
「はい、おかげさまで倒すことが出来ました。すいません、大きくなった魔物の群れを連れてきてしまいました。本当にすいませんでした」
そう言って、パーティー全員が頭を下げる。
「あれだけの魔物に追われれば焦るのも仕方ないよね。結果的に無事に倒せたんだから良かったじゃないか。オーガ達の魔石はもらうけど、そっちで倒したリザードマン達の魔石はそっちが持って帰って良いからね」
「え、でも、良いんですか。こちらは押しつけてしまったような物ですし、この土の壁が無ければオーガもリザードマンも纏めて来て、私達も体勢を立て直せませんでしたから」
「じゃあ、魔石の回収を手分けしてやろうか」
皆で手分けして魔石の回収をする。オーガもリザードマン、コボルトも魔石ぐらいしか価値がない。コボルトの肉は食べられるらしいのだが身体がオークよりも小さく取れる肉の量も少なく、値段も安いので放置されることが多い。
「改めまして、このたびは申し訳ありませんでした」
魔石を回収してから少し休む事にして少し先にある部屋の中に皆で入ってから冒険者パーティーの人達が謝ってきた。
「まあ、こういう時は助け合うのが普通だよ」
「あー、ご主人、こう言う時は助けられるなら助けるけど、普通は何処かの部屋に逃げていなくなるのを待つのが普通なんだよ。大体1日あれば魔物の群れは分かれてまた何処かに行ってしまう物なのさ」
どうやら、僕の考えは普通では無かったらしい。カルラ曰く、何処かの部屋に逃げ込んでいなくなるのを待つのが普通らしい。
「そうだったんだ、まあ、助けられそうだと思ったから助けたんだし、結果的には良かったじゃ無いかな」
「あそこで、助けようと思うのはこの町の冒険者パーティーだと1,2組ぐらいしかいないけどね。あたいの前にいたパーティーなら逃げてたね」
カルラがそんな事を言っていると助けた冒険者パーティーの1人から意外な言葉がかけられた。
「あれ、あなた、冒険者パーティー『レギオンドッグ』のカルラじゃないの?」
「『レギオンドッグ』って何?」
「ああ、あたいの奴隷になる前に田舎の仲間と冒険者パーティーを組んでいたのは話しただろう。その時のパーティーネームが『レギオンドッグ』なんだよ」
僕が小声でカルラに聞くとカルラも小声で返してくれた。
「あなた、『レギオンドッグ』の人達が田舎に帰るって話してたときにいなかったから聞いたら、手足を魔物に食べられて奴隷になったって聞いたのだけど、手足、あるわね。え、何で?」
手足のあるカルラに驚いているらしい。再生魔法というの使える人は普通はいない。手足を無くしたら誰かに養ってもらうか、奴隷になるか、死ぬかしかない。それが、治っているのだ。驚くのも無理はなかった。僕はどう誤魔化そうか悩むのだった。