第85話
ダンジョンから戻ってきたときにはすでに日が落ちていた。この町ではダンジョンで魔石が取れるために魔石で光を放つ魔道具で街灯が造られているために日が落ちてもそこまで暗くはなかった。それでも、開いているお店は酒場位の所ぐらいしかない。日が落ちると普通の食事処は閉めてしまうのが普通である。そのため僕達は家に戻ってから食事を取ることにした。
家に帰り食事の席で明日からの予定を決める。
「明日だけどダンジョンの中では12階層迄行くと行ったけど止めにする。それで、明日はダンジョンに行くのも止めて休みにしようと思う。明日は身体をゆっくり休めて明後日に備えて欲しい」
「どうして明日はダンジョンに行かないのですか?」
セシリアが食事をしながら聞いてくる。
「今日の10階層で帰って来た時には日が暮れていたからね。12階層迄行ったら何処まで遅くなるか分からないからね。明後日はダンジョンで野営することも試しておこうかなって思ってね。そのための食事の用意も魔法袋に用意しておこうと明日は休みにするんだよ」
「野営するためにテントが必要になりますね。6階層から10階層迄ならテントを張るのも良さそうですね。あ、でも、ご主人様はテントを1つしか用意してませんよね?」
「そうなんだよね。だから明日はテントも買いに行かないといけないね。それはカルラに任せようかな。カルラはダンジョンでの野営の経験もあるよね?」
「ああ、大丈夫だよ。経験はあるよ。普通は7,8階層で一度野営をするもんなんだけどね」
食事をする手を止めてカルラが答える。
「なら、カルラとフィーナでテント等の野営に必要な道具を1式買ってきて欲しい」
カルラは頷き、フィーナは聞こえていないのか黙々と食事をしている。
「フィーナ、聞いてた?」
僕が強く聞くと、フィーナが慌てて顔を上げる。
「ごめんなさい、聞いてないです」
フィーナははっきりと聞いていなかったと謝罪する。
「「はあ」」
それに僕とマリアはため息をつく。
「明日はダンジョンに行かないから、その代わりにカルラとダンジョンに野営するための道具を買ってきて欲しい」
「明日はダンジョンに行かないんだね。分かったよ。カルラお姉ちゃんと一緒に買い物に行けば良いんだね」
フィーナは元気よく言う。
「マリアとセシリアは僕とダンジョンに持っていく食事を作ろう。魔法袋に入れるから汁物以外なら何とかなるからいくつか試行錯誤しながら作ろうか。今まではその場で肉を焼くことしかしてこなかったけどせっかく魔法袋があるんだからそれを活用しないとね」
「ふと、思ったのですが、ご主人様は今まで魔法袋に干し肉か生肉しか入れてませんでしたよね。それでは駄目なのですか?」
「いやあ、少し前に料理した物を入れておく事も出来るなって思ったんだよね。何で思いつかなかったんだろう」
「ああ、魔法袋は時間の流れが遅いんでしたよね。なら、料理を入れておいても大丈夫かも知れませんね。先入観から袋の料理を入れるのを思いつかなかったのかも知れませんね」
セシリアの言葉に僕は納得する。
「だから、明日は魔法袋に入れる料理を作ろうと思う」
「「分かりました」」
セシリアとマリアが返事をする。
そして、次の日になりカルラとフィーナは野営の荷物を買いに出かけていき、僕とセシリアとマリアは厨房で料理を作る事にする。
「まず、魔法袋の性質的には上下左右って感覚は無いけど汁物などは止めた方が良いかもね」
「そうですね。汁物がもしこぼれてしまえば他の料理にそれがかかってしまいそうですから」
「でしたら、肉を香草や香辛料等で焼いておく程度の事しか出来ないかも知れませんね」
マリアとセシリアがそれぞれ意見を言う。
「後は、サンドイッチとかもありだよね。飲み物や汁物は現地で作るしかないね。その辺は挑戦するのは怖い。ああ、だけど水はカルラとフィーナのために用意しておいた方が良いね。僕達は魔法で水が出せるけど、カルラとフィーナは水を生み出せないから」
「それはどうしてですか?」
マリアが聞いてくる。
「このダンジョンではないみたいだけど自由都市マルンのダンジョンだとパーティーを分断する罠とかあるらしいんだよね。そうなったときに、すぐに合流できるなら良いんだけど出来ない場合もあるだろうからね。水は生きていく上で必要な物だから、いざというときに飲めるように用意しておきたいんだよね」
「そうなると、保存用の水を入れる容器を用意しておいた方がよろしいのでは無いですか?」
「ああ、そうか。携帯用の水を入れる容器を新たに買わないといけないか。なら、僕がこれから買ってくるよ。セシリアとマリアはさっき言った肉やサンドイッチを作っておいて欲しいかな。それらを入れる容器もついでだから買ってくるよ」
セシリアとマリアが頷くのを見て僕は買い物に出かける。3日分ぐらいの用意できるくらいの容器をいくつかの店で買って帰ると思った以上に肉やサンドイッチを用意している2人を見て僕はさらに容器を買うために出かけるのだった。