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第83話

 9階層へと降りていく。9階層は森となっていて8階層迄の草原に木が生えているといった様相は打って変わっていた。


「森になっているけど、これじゃあ、アサシンイーグルはこちらを狙え無いのでは無いですか?」


 マリアがふと疑問に思い口にした。


「アサシンイーグルは木の枝にいてね。そこ9階層へと降りていく。9階層は森となっていて8階層迄の草原に木が生えているといった様相は打って変わっていた。


 カルラが8階層よりも厄介だと言う。


「木の枝からだと、ちょっと面倒だね。僕が魔法で周りの警戒するよ。《風魔法ウインドフィールド》」


 僕が魔法を唱えると弱い風が周囲を囲む。


「これはどんな魔法なんだい?」


「これは、周囲に風の結界みたいなのを巡らせてその中の動く者や障害物などにぶつかると僕に知らせてくれるような魔法かな」


「それって、かなり上位の魔法なのでは無いですかご主人様?」


 カルラの質問に僕が答えるとセシリアが恐る恐る聞いてくる。


「前に森で暮らすには必須だとおじさんに聞いたけどね。セシリア達の村では使える人はいなかったの?」


「私の村では使える人はいましたけど使う人はいませんでしたよ。魔力の高いエルフでも持続時間がそこまで続きませんから」


「そうなんだ。慣れれば魔力の使用量も減るし、使えれば便利なんだけどね。因みに、僕は1日ぐらいなら使い続けられるよ」


「ご主人様、凄すぎです」


 セシリアが呆気にとられているとマリアが聞いてくる。


「ご主人様はどうしてエルフ族のセシリアさんより魔法を使うのが上手いのですか?」


「僕の場合は親から受け継いだ物だからね」


「普通は人族はエルフ族の人に魔力では勝てないはずなんですけど」


「そういえば、マリアとフィーナには言ってなかったっけ? 僕は人族とハイエルフ族の混血だよ」


「えっ、ハイエルフ族の方はまだ生きていたのですか?」


 マリアが僕の想像と違う驚き方をしていた。


「いや、確かに人数は少ないけど生きているよ。森の奥に村があってそこから出ることはほとんど無いけどね」


「なるほど、ハイエルフ族の方との混血だからご主人様の魔力は高いのですね」


「ハイエルフ族の人って凄いの?」


 フィーナが疑問に思ったのか聞いてくる。


「ハイエルフ族の方は創造神ソルテール様と大地母神フォルティナ様が最初に創った人類ですよ。魔力が高くとても綺麗な姿で一説には創造神ソルテール様や大地母神フォルティナ様の姿を元に生み出されたとか、私達の国では千年前に滅んだと言われていましたが生き残っていたのですね」


 マリアが何故か本当に嬉しそうに言う。


「マリアって歴史が好きだから、滅んだって言われてたハイエルフ族の人が生きてたって知って喜んでいるんだよ」


「そうなんだ」


 知らなかったマリアの一面に僕は驚きを隠せなかった。


「ゴホン、すいません、少し取り乱しました。ダンジョン内で取り乱して申し訳ありません」


 マリアが大きく咳払いをして謝る。


「いや、周囲は僕が注意しているから大丈夫だけどね。じゃあ、落ち着いただろうか先に進もうか」


 マリアが落ち着いたところで先に進んでいく。


「少し進んだところにバーサークベアと思う反応があるんだよね。後、アサシンイーグルが1匹だけどいそうだね」


 僕が言うとセシリア達が緊張する。


「近いのはアサシンイーグルの方だね。マリア、あそこの木の枝にアサシンイーグルがいるけど見える?」


 僕はアサシンイーグルがいる枝を指さしてマリアに聞く。


「どれですか。……ああ、あの枝の所にいる奴ですね。見えました」


「よし、ならマリアはアサシンイーグルの方を注意しておいて、バーサークベアは僕が戦う。ただ、戦っている間はウインドフィールドでの索敵が出来ないからカルラとフィーナとセシリアで周囲を警戒してね」


 セシリア達が頷くのを確認するとバーサークベアと思われる反応の方へと向かって行く。しばらくするとゆっくりと歩いているバーサークベアが目に入った。僕達は、木の木陰に入り様子を見る。バーサークベアは倒れている木からキノコ等を食べている。それだけを見ると魔物には見えない。


「あれって、バーサークベアだよね? 普通のベアって事は無いよね?」


 僕はカルラに確認のために聞く。


「ああ大丈夫、あれがバーサークベアだよ。こちらに気づいていないからだね。こちらに気づいたら魔物としての本性が見えるよ」


 そう言うので、僕はバーサークベアの前にその姿を見せる。すると、バーサークベアはいきなり両腕を上げて吠える。すると、バーサークベアの身体が真っ黒く変わっていく。そして、想像よりも早く僕の方へと駆けてくる。


 僕は身体を低くして走りその足をすれ違いざまに切る。バーサークベアは足を切られて大きな音を立てて倒れるがすぐに起き上がる。


 バーサークベアは足から血が流れていても気にせずにまたこちらへと向かって来た。


(いや、普通は痛みで走ることも出来ないと思うんだけど、これがバーサークベアって呼ばれる所以かな)


 僕もバーサークベアの方に向かって走り出す。まだ距離があったのにバーサークベアは右手を大きく振りかぶり、そして振り降ろす。すると、大きな風の動きが生まれて僕は動きを止めてしまう。バーサークベアは動きの止まった僕に殴りかかろうとする。


「《風魔法ウインドストライク》」


 僕は自分に向けて風の塊をぶつけて身体を飛ばしその拳から避ける。


(思ったよりも頭が良いな。振り降ろした拳の風圧で相手の動きを止めてから仕留めようとするなんてね。もしかしたら風魔法が使えるのかも知れないけど、本能で使っている感じかな)


 バーサークベアは風魔法によって離れた僕にまた走って向かってくる。そして、また同じように腕を振り上げて風を起こそうとする。


「流石に今度は対策できるよ。《地魔法アースウォール》」


 僕は目の前に土の壁を作り上げる。そして、土の壁がバーサークベアの起こした風を食い止める。バーサークベアは土の壁を殴り壊すがその先に僕はいなかった。僕は土の壁が風を食い止めているときに木に登りバーサークベアの上を取っていた。バーサークベアはいない僕を首を振って探す。僕は登っていた木からバーサークベアへ向かって飛び降りる。その勢いのままその頭を貫く。バーサークベアは動きを止めると大きな音を立てて倒れた。


 僕は皆の方へ振り向こうとしたらマリアの放った火の槍がこちらへと向かっているのが見えた。僕が驚いているとその槍は僕を追い越して後ろから迫っていたアサシンイーグルを貫いていた。


「旦那様、油断してはいけませんよ」


 マリアが笑顔で言ってくる。


「いや、こういうときのためにマリアにアサシンイーグルを見てもらってたんだからね。でも、一言言って欲しかったかも、流石にいきなり目の前に火の槍は心臓に悪いんだけど」


「大丈夫です。私が旦那様に攻撃は出来ませんから、旦那様に当てるように魔法は使えません」


「それは分かっているけどね」


(まあ、バーサークベアに集中しすぎていたのも良くなかったかな。もっと、周りも意識して戦わないといけないね)


「ご主人様は強いかも知れませんけど、それが油断になっているとマリアさんは言いたいのではないですか?これからは、1人で戦おうとしないで私達も使ってくださいね。ご主人様が死なれると私達は困りますから」


 セシリアにも言われてしまう。


 僕はこれからは1人で戦わないことを約束させられてしまう。そして、10階層を目指して9階層を慎重に進んで行くのだった。

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