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第78話

 どうしてこうなったのだろうか。


「セシリア、そっちに向かって逃げた。魔法で何とか倒して」


 僕は叫ぶが、セシリアの方にもワイルドドッグが向かっていたのでセシリアはそっちの方へ魔法を使わなければならず、セシリアの方へ逃げたシーフモンキーを攻撃することは出来なかった。


「私の槍を返してー」


 フィーナが叫ぶ、しかし、シーフモンキーがそんな言葉など何処吹く風でセシリアの前で急カーブで曲がり逃げ出す。


「《地魔法アースウォール》」


 僕はシーフモンキーが逃げる方向に向けて土の壁を作りその逃げ道を塞ぐ。


 カルラとマリアは複数いるワイルドドッグの対応をして貰っているためにシーフモンキーを追いかけることが出来ない。


(いや、本当にどうしてこうなったんだろう)


 事の発端はフィーナが何故か。シーフモンキーが潜んでいることが多いと言われる木の所に何か実がなっているのを見つけたのだ。


「お兄ちゃん、あの木に成っている実って食べられるのかな?」


「どうだろう。見た目的にはリンゴみたいには見えるけど、このダンジョンにそういった果物がなる木が生えてるって聞いてないけどね。その辺はどうなの?」


 僕は後ろを歩いているカルラに聞いてみる。


「あたいも聞いたことは無いね。もし、果物みたいな見た目をしていたとしても食べない方が良いと思うよ」


「ええ、もしかしたら美味しいかも知れないじゃない。取っていかないの?」


「シーフモンキーが出るかも知れないから流石に行きたくないな」


 僕はそう言うがフィーナはだだをこねたように行きたいと言う。


「はあ、カルラ周辺にワイルドドッグは見える?」


 僕はため息をつくとカルラに聞く。


「まあ、周辺には見えないけどね。けど、草が生い茂っているからもし、ワイルドドッグが伏せっていたら分からないよ」


 フィーナがカルラの言葉を聞いて、僕に潤んだ瞳を向けてくる。


「ああ、もう分かったよ。でも、武器はちゃんとしっかり握っているようにね」


「わーい、お兄ちゃんありがとう」


 周辺に注意しながらリンゴっぽい実のなっている木へ向かって行く。


 木の周辺に着いてもシーフモンキーの姿は見えなかったので僕は1つだけ実を取ってきてそれを切ってみることにした。


「見た目も切口を見る限りリンゴに見えますね。・・・少し食べて見た所、リンゴで間違いないかと」


 セシリアが木に成っていた実を試食してみてリンゴだろうと言う。


「こんなダンジョンにリンゴなんてなるものかな?しかも、1本だけポツンとあるっておかしいよね?」


 僕は皆に聞くが、フィーナ以外は僕の言葉に頷く。


「そんなのどうでも良くない? 果物って高いからここでできるだけ取っていかない?」


「まあ、良いか。後でギルドで聞いてみよう。セシリアすまないけど取ってきてくれない?」


「分かりました」


 セシリアはスルスルと木に上って行きリンゴを取る。


「セシリア、全部は取らなくて良いからね。10個もあれば十分だから」


「ええ、全部取っちゃおうよ」


 フィーナは全部取るように言う。


「他の人が取りに来るかも知れないだろう。売りに出すのでは無ければダンジョン産とはいえ取り過ぎは良くないよ」


「ぶう」


 フィーナは頬を膨らませてふて腐れる。その時、皆がリンゴのなる木に集中してしまっていた。


 ふい、フィーナの肩を軽くトントンと叩く者が現れた。フィーナは何気なく振り向くとそこにはニタアと笑うシーフモンキーの姿があった。


「きゃあああぁぁぁぁ」


 フィーナが突然の悲鳴を上げる。そして、シーフモンキーがフィーナの手を叩き槍を落とさせるとその槍を持って逃げてしまったのだ


 フィーナの悲鳴で皆が振り返った時にはシーフモンキーは走り出していた。それに、フィーナや僕達は走って追いかけようとする。セシリアが木の上から弓で射るがシーフモンキーはそれをジャンプして躱すとワイルドドッグに飛び乗ってさらに逃げようとする。


 どうやらワイルドドッグの群れが草むらに伏せって隠れていたらしい。そんなワイルドドッグをシーフモンキーは使役しているみたいだった。セシリアがさらに弓を射かけてワイルドドッグを仕留める。シーフモンキーはワイルドドッグから転がり落ちる。セシリアはその隙に木から下りてシーフモンキーを追って走り出している皆に向かって走り出す。


 シーフモンキーは起き上がると大きな鳴き声を上げるとワイルドドッグの群れがフィーナの方へと殺到する。一番前を走っていたフィーナを標的にしたらしい。


「「《火魔法ファイヤースピア》」」


 僕とマリアが魔法を放ちワイルドドッグを焼いていく。それを見てシーフモンキーは今度は雄叫びをあげた。すると、ワイルドドッグが遠くから走って来たのだ。


「《地魔法アースウォール》」


 僕は土の壁をシーフモンキーの後ろに作り逃げ道を塞ぎつつワイルドドッグに対処する。フィーナやカルラも沢山のワイルドドッグを相手にしていてシーフモンキーに近づけない。そんな様子をシーフモンキーは馬鹿にしたようにはしゃぎながら見ている。一頻りはしゃいだ後、逃げようとして僕の作った壁に勢いよくぶつかる。


「チャンス! カルラお姉ちゃん犬の相手をお願い」


 壁にぶつかって倒れたシーフモンキーを相手に好機とみたのかフィーナがワイルドドッグの対応をカルラに任せてシーフモンキーに肉薄する。


 シーフモンキーは起き出して自分に向かってくるフィーナに気づき悲鳴を上げる。すると、今度はスカイホークが降りてきてシーフモンキーを捕まえる。スカイホークはワイルドドッグを戦っているこちらの上を飛んで逃げようとする。


「《火魔法ファイヤースピア》」


 マリアが魔法を放ちスカイホークを焼くとシーフモンキーは何とか着地をして今度はセシリアの方へと向かう。セシリアの方にもワイルドドッグが数体向かっておりシーフモンキーが向かって来ていることに気づいていない。


「セシリア、そっちに向かって逃げた。魔法で何とか倒して」


 しかし、ワイルドドッグの対応をしていた為にシーフモンキーに対応できない。


「私の槍を返してー」


 フィーナは叫ぶがどうすることも出来ない。そして、シーフモンキーがセシリアの方へ向かって走り出す。


「旦那様、セシリアさんの右側に壁を作れますか?」


 マリアがそんな事を言ってくる。僕はマリアの方を見て頷き魔法を唱える。


「《地魔法アースウォール》」


 セシリアの方に向かっていたシーフモンキーがセシリアの目の前で急に曲がる。そして、曲がった先に出来た壁にセシリアの方を見て馬鹿にしたように笑っていて前を見ていなかったシーフモンキーがぶつかる。


「《火魔法ファイヤースピア》」


 セシリアはそれを見て冷静に魔法を放ちシーフモンキーを仕留める。シーフモンキーが倒されると残っていたワイルドドッグが途端に逃げ出した。


「シーフモンキーってもしかして他の魔物を操る力とかあったりするのかな?」


「そうかも知れませんね。9階層迄出てくるとの事でしたから、もし、操れるのでしたら注意しないと危ないかも知れません」


 僕の独り言にマリアが応える。フィーナは倒したシーフモンキーから自分の槍を取り戻すとセシリアのお礼を言う。


「セシリアお姉ちゃんありがとう。取られちゃった時にどうしようって焦っちゃったよ」


「まあ、あれはどうしよう無いよね。さ、皆にもお礼を言わないとね」


「お兄ちゃん、カルラお姉ちゃん、マリア、ありがとう。何とか取り戻せたよ」


 フィーナは使っていた槍が戻って嬉しそうに言う。


「今回のは仕方ないかな。シーフモンキーが他の魔物を操る事が出来るかも知れないから次の7階層でも気をつけようね」


「うん、しっかり持ってる」


 シーフモンキーの想定外の行動に今度は気をつけるようにして7階層へと向かった。

ワイルドドッグと戦っているときは予備の武器を使用しています。

皆、予備の武器が魔法袋に入っています。

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