第76話
5階層を周回してから1ヶ月が経った。その間にフィーナとカルラは魔法を戦闘で何度も試し、魔力も増えて使用時間も増えていった。マリアもセシリアと訓練して使える魔法を増やし魔力も伸ばしていた。
「さて、明日から6階層の攻略を開始するんだけど、そろそろ、自由都市の方に向かいたいのもあるから、2ヶ月ほどでダンジョンを攻略したいと思います。6階層からは動物型の魔物が多いからマリアとフィーナは動物型の魔物とは初めてだろうから最初の6階層で少し練習しよう」
「分かりました」
マリアは応えてフィーナは夕食に出ているパンを食べながら頷く。
「カルラに以前聞いた7階層だとシーフモンキーは確定で後はファイヤーボアとアーミードッグだったね」
「それはどういう魔物ですか?」
マリアが聞いてくる。
「シーフモンキーは武器を盗んでいくのが特徴だね。それさえ気をつければ弱いから何とかなるね。ファイヤーボアはそのままで炎を鼻から吐いてくるボアだね。鼻から息を吸い込んだら炎を吐いてくるし、地面を踏み固める動作をしたら突進してくる。アーミードッグは連携が上手い犬だね。ただ、それには指示を出す司令塔となる1匹がいるからそれを早く見つけて倒さないといけない。因みに司令塔を倒すと残りは一斉に逃げ出すらしいからなるべく早く倒したいね」
「へー、お兄ちゃんそれを全部覚えているの?」
「まあ、覚えておいた方が良いことは覚えておくよ。因みに、今のは全てカルラから聞いた話だからね。マリアはもしかして聞いていたかな?」
「はい、一応、ダンジョンの奥に行くと聞いていましたからカルラさんから聞いておりました」
当然というようにマリアは言う。
「え、私は聞いてないけど」
フィーナはやっぱりというか聞いていなかった。
「一応、前にダンジョンのことをカルラに聞いておいてねって言わなかった?」
「言っていたような、言ってなかったような?」
フィーナはかわいい仕草で言う。
「そんな事でだまされないよ。ダンジョンに行くんだから聞いておくように言ったからね。カルラ、今日は夜にフィーナに話しておいてね」
「ああ、分かったよ」
カルラが困った顔で応える。
「さて、じゃあ今日は休んで明日に備えようか。フィーナはちゃんとカルラにダンジョンの予習をしておくようにね。明日は7階層迄しか行かないからそのつもりでね。」
そうして、次の日に朝食を食べる時にフィーナの目に隈が出来ていた。
「そこまで遅くまでやっていたの?」
僕がカルラに聞くと、首を横に振る。
「フィーナさんがカルラの部屋を出る音が聞こえたのが夕食を食べて終わってから2時間ほどしてからでしたよ」
カルラの部屋の隣の部屋を使っているセシリアが言う。
「フィーナさんが眠そうなのは私が戻ってきたときに覚えるまで復習しておくように言ったからですね」
マリアが朝食に出ていたパンを食べながら言う。
「フィーナさんは王宮にいたときから勉学は苦手としていましたから、ちょうど良い機会と思いまして少し厳しめにさせて貰いました」
マリアは良い笑顔で言い切る。
「まあ、それは良いけど、急いで詰め込み過ぎても良くないからほどほどにね」
「分かりました。今度はほどほどにしておきます」
マリアが厳かに頷く。
「フィーナは今日は大丈夫だよね。眠いからって動けないとかは無いよね?」
「はっ!大丈夫だよ、お兄ちゃん。シーフモンキーに取られないようにしっかり武器と魔法袋を持っているよ」
「いや、そういうことは聞いていないけど」
フィーナは寝ぼけているのか違うことを言う。
「ま、寝ているときに襲われる事も・・・僕が側にいれば月魔法があるからあまりないかな。それも良い訓練になるから、今日もダンジョンに行って貰うからね」
「うん」
「それじゃあ、早くご飯を食べてダンジョンに挑もうか。5階層までは急いで攻略するからね」
そうして、5階層迄を駆け足で攻略していく。倒した魔物の素材は今までの周回でかなり貯まっているので魔石だけを取り出して後は放置しておいた。
6階層に着いてその自然を見てマリアとフィーナは声を無くす。
(これは初めて見たら驚くだろうからカルラにも6階層からのダンジョンの様子だけは言わないように言っておいたけど、やっぱり驚いてくれたね)
「あの旦那様、私達はダンジョンにいるのですよね?外に出たとかは無いのですよね?」
マリアが自分の目で見たのが信じられないと聞いてくる。
「大丈夫だよ。ここはダンジョンの6階層に間違いないよ。驚かせたくて5階層の周回の時にわざと6階層には足を踏み入れなかったけど、驚いてくれて嬉しいな」
「旦那様にもこういう遊び心があったのですね。私も驚きましたがそれよりもフィーナさんの方が驚きすぎていますね」
フィーナはポカンと口を上げて6階層のフィールドを見ている。
「フィーナ、大丈夫かい?」
カルラが声をかける。
「私もご主人様も最初に見たときに驚きましたからね。仕方ないかも知れませんね。まあ、幸い近くに魔物はいないみたいなのでフィーナさんが落ち着くまで待てば良いのでは無いですか」
セシリアがそう提案し、皆に飲み物を用意する。
フィーナは飲み物を受け取りそれを飲むと落ち着きを取り戻していた。
「お、お兄ちゃん、すごいね。ダンジョン凄いね。こんな自然がいっぱいなダンジョンって凄いね」
飲み物を急いで飲むと、今度は落ち着きが無くなっていた。
「フィーナ、少し落ち着いたらどうだい。そんなに騒いだら魔物が近づいて来てしまうよ」
カルラがフィーナに落ち着くように言うと、フィーナが慌てたように口を手で塞ぐ。
「マリアもフィーナも驚いたと思うけどここが6階層で間違いないからね。それじゃあ、少し休憩して進んで行こうか」
セシリアにもう1度飲み物を用意して貰い落ち着いてから6階層の攻略を進めることにした。