第71話
冒険者ギルドに着きいつもの受け付けのお姉さんのところに向かう。
「あ、フレイさんお久しぶりですね」
「そういえば、最近見てなかったですね。何処か行かれていたんですか?」
「何処かって、王都に行ってお預かりしていたグリフォンの魔石をオークションに出していたんですよ。後、王都が色々忙しそうだったので、そちらのギルドに臨時でお手伝いしていて帰ってくるのが遅くなったんですよね。臨時のお手伝いって給料がいつもより多く貰えるのでお得なんですよね」
詳しく聞くと、ハイメルン王国との戦争に参加できるのは王都の冒険者のみという事を国が言った為に勝てる戦争なので儲けるために王都に冒険者が沢山集まったらしい。そのために、ちょうど王都に来ていた受け付けのお姉さんが臨時で働いて欲しいと言われて働いていたみたいなのだ。
「そのおかげで王都で観光も出来ましたし、お買い物するお金も増えたので良かったですけどね」
「それで、オークションに出してもらったグリフォンの魔石はいくらになりました?」
「はい、グリフォンの魔石はですね。何と金貨700枚で売れました。滅多に出ない物なので貴族の方が最後迄競り合っていましたね」
僕はそれに驚く。ギルドで売る場合はツインヘッドビーストの魔石とグリフォンの魔石で金貨500枚だったのだ。それを考えればかなり高めに売れたみたいだ。
「ただ、手数料として2割が引かれますので残りの金貨560枚がフレイさんの取り分になります。よろしいですか」
「はい、大丈夫です」
僕はお金を受け取りギルドを出て家へと向かう。
家に帰るとフィーナとカルラが模擬戦をしていた。フィーナはカルラに何度も槍を突き出しているが、カルラはそれを冷静に盾で防いでいる。フィーナも工夫をしているみたいなのだが、それでもカルラの盾を破ることは出来ずカルラの身体に穂先を掠めることさえ出来ないでいた。
(カルラは魔物との経験値があるためか、フィーナの攻撃を簡単に捌いているね。まあ、フィーナはまだまだ経験不足だね。ゴブリンとの戦いを見たけど動きがまだ固いんだよね。今はまだ才能の力だけで戦っている感じかな。これで、経験積んだらかなり強くなりそうだね。確か、この国の聖武具は槍だったから、フィーナに持たせるのも悪くないかもね。まあ、それはこの国の近衛騎士団長が持っているって聞いているから無理かも知れないけど)
等と考えているところでカルラがフィーナの槍を盾で大きく弾いて隙を作り、その懐に飛び込んで剣を首元へ突きつけて模擬戦が終了した。
「やっぱり、負けちゃった・・・。今度こそは勝てると思ったんだけどなあ」
「流石に1週間前に槍を握ったばかりの子に負けるほどあたいも弱くは無いよ。これでも、パーティーの壁役をやっているんだからね」
どうやら、カルラとフィーナの模擬戦はカルラの圧勝らしい。
(まあ、それは仕方ないね。流石に今までの経験が違いすぎるよね)
僕が近づくとカルラとフィーナが気づき振り向いてくる。
「あ、お兄ちゃん帰ってたんだ」
「ああ、ご主人お帰り」
「うん、ただいま。それはそうとカルラは最初に魔法が使えないって言っていたよね」
「ああ、あたいは使えないね」
僕の言葉にカルラは応える。
「それって、全部の属性を確かめたのかな?」
「いや、火と水の属性だけかな。それ以外はあたいの町では無理だったから」
「なら、今ここで試してみようか。流石に何も使えないって事は無いと思うからね。普通に生活する分には火と水があれば便利だからそれは調べるんだろうけどね」
水や火が使えれば生活がかなり楽になるのでそれを使えないかと調べる人はいるらしい。それでも1割ぐらいの人位しか使えないとは言われている。
「あたいが魔法か。ご主人的にはあたいが魔法を使えた方がやっぱり助かるのかな?」
「助かるね。地魔法が一番嬉しいかな。セシリアが使っていたでしょ《地魔法ストレングスアップ》を、あれなら身体能力を上げてくれるからね。前衛なら一番欲しい魔法だよ。後は、光でも闇でも良いかな。僕はほとんど使わないけど強烈な光とか突然の闇は目潰しとして使えるからね。魔法も武器もだけど用は使い方だし、出来ることが多い方が戦いやすいよ」
「確かに出来ることが多い方が良いか。なら、ご主人お願い出来るかな」
そして、カルラの魔法適正を確認する。すると、カルラには地の魔法適性があるのが分かったのだ。
「あたいは1つの属性しか使えないのか。何か皆に比べて、なんて言うか。うん、残念だな」
「何でそう思うかな。逆に1つの事に集中して訓練できるから良いと思うけどね。それに、身体能力を上げる魔法である地魔法は一番カルラに合っているじゃないかな」
「そう言われるとそうだね。ご主人の言うとおりだ。あたいは地魔法を覚えて壁役としての完成を目指すよ」
カルラは自分の手を強く握り決意を固めたようだ。
「お兄ちゃん、私にも何か教えてくれないの?」
「いや、今のは教えていたわけじゃ無いんだけどね。まあ、ちょうど良いかな。フィーナとカルラには《地魔法ストレングスアップ》を覚えてもらおうかな。これは武器を持って戦う場合は有利になるからね。覚えていた方が良いからね」
「やっと、私も魔法を使えるようになるんだね」
フィーナが無邪気に笑う。
「ご主人、それは簡単に使えるようになるものなのかい?」
「イメージが一番大事だけどね。身体能力の向上を地の魔力を使ってするだけだからね。後はイメージの問題だけど、僕は大地母神フォルティナ様の力を借りているイメージでやっているね。昔から、《地魔法ストレングスアップ》は大地の力を身体に巡らせて身体強化すると言われているからね」
「大地の力を身体に巡らせて身体強化って言われてもよく分からないけど」
カルラが困った用に言った。
「後は簡単なのはカルラは僕の右手を握って、フィーナも僕の左手を握ってね」
カルラはビクビクしながら僕の右手を握り、フィーナは大きく返事をして左手を握る。
「僕が魔法を使うから、その魔法の魔力がどう流れているのかを感じてね。カルラもフィーナも地魔法が使えるから感じ取れるはずだから。じゃあ、やるよ。《地魔法ストレングスアップ》」
僕が魔法を唱えると魔力が身体の中を巡る。カルラとフィーナはその魔力の流れを感じて身体を震わせる。
「じゃあ、今の魔力の流れと身体能力の強化のイメージを合わせて魔法を使ってみてね。1回で出来るとは思っていないけど、出来れば今日中には出来るようになってもらいたいかな」
そして、僕は《地魔法ストレングスアップ》を使った状態の動きと使ってない状態での動きの違いを見せてイメージをしやすくしてから2人の訓練を始めた。