第70話
マリアが相手をするゴブリンを探すためにダンジョンの1階層を歩く。1階層ではゴブリンしか出ないとはいえ、それを専門に狩るような冒険者もいて探すのにかなり時間がかかっていた。
「やっと見つけたね。まさか、ゴブリンを探すために3時間もかかるとは思わなかったよ」
そして、やっとの事でゴブリンが1体で歩き回っているのを見つける。
「まあ、マリアとしても物足りないかも知れないけど戦おうか。もちろん、魔法を使っても良いからね」
「分かりました」
そして、ゆっくりとマリアがゴブリンに向かって歩いて行く。ゆっくり近づいてくるマリアに気づき雄叫びを上げてマリアに向かって行く。それに、マリアは冷静に杖を構えて魔法を唱える。
「《火魔法ファイヤースピア》」
杖から、炎の槍が放たれてゴブリンへと向かって行く。ゴブリンはそれを見て地面に伏せて魔法を避ける。炎の槍はゴブリンの後方で地面に当たり消えてしまう。ゴブリンはそれを見て急いで起き上がりマリアに向かって走り出す。
それをマリアは冷静に魔法の準備をする。
「《火魔法ファイヤースピア》」
今度も炎の槍をゴブリンに向けて放つ、ゴブリンはまた地面に伏せて避けようとしたが今度の槍は角度が違った。炎の槍は伏せたゴブリンの足を打ち抜き炭にする。ゴブリンは叫ぶ声を上げて動くことが出来なくなった。それにもう1度冷静に魔法の準備をして放ちその身体を焼き尽くした。
「あのさ、マリア今の手を抜いたよね?最初の1回目でゴブリンを倒せたでしょ。魔法の操作できるよね?弾道が直進しすぎたけど」
「すいません、確かに最初の魔法で当てることも出来ましたが、ゴブリンがどのように避けるのか見ておきたかったのであえて素直な魔法で攻撃しました」
マリアが最初の攻撃はゴブリンがどうやって避けるのか見るためにあえて直進する軌道で魔法を打ったらしい。
「なるほど、そう言う理由があるならいいや。ちょっと、時間が掛かったから2階層には行かないで戻ろうか。明日は4階層迄行ってオークジェネラルと戦おうか」
「分かりました」
セシリアが代表して頷く。
ダンジョンを出て、家には帰らずに食事が出来るところに寄ることにした。お昼を食べるには少し遅くなっていたためかすぐに席に着くことが出来た。
「じゃあ、食事を頼もうか。ここでは、ボアやブルのお肉を使った料理が美味しいって前にギルドで言っていたからね。たまには外で食事をするのも良いでしょ。後、僕は食事が終わったらギルドに寄って帰るから皆は先に帰っておいてね」
「おにいちゃん、どれくらい頼んで良いの?」
フィーナが無邪気な声で聞いてくる。
「好きなだけ頼めば良いよ。食べられるならね」
僕がそう言うとフィーナは3人前のお肉を注文した。それを見て全員が目を疑う。
「えっと、フィーナは本当にそれだけ食べられるの?」
セシリアがたまらず聞く。
「うん、戦ったからなのか、ものすごくお腹が空いているんだよね。だから、これぐらいは食べられるよ」
そして、出てきた料理は塩や香辛料と一緒に焼いた野菜と肉や野菜を煮込んで取った出汁で作ったスープ、こちらは最後に塩で味付けがちゃんとしてあるみたいだった。後はボアのステーキが出てきた。
フィーナはその3人前をペロリと食べきってしまう。それを見て3人は言葉を失う。
「本当に食べきったよ」
「フィーナ、お腹は大丈夫苦しくない?」
「あたいでも食べられて2人前がせいぜいなのに・・・」
「あの、フィーナさんもしかして今まで我慢していましたか?」
マリアがたまらずに聞く。
「我慢はしてないよ。ただ、今までは動いて無かったからそんなにいらなかっただけだよ」
「では、戦って動いてお腹が空いたって事ですか?訓練の時はそこまで食事量増えなかったじゃないですか」
「訓練の時もお腹空いていたけど、おかわりは、はしたないからしなかったの」
訓練の時は家での食事のために皆に同じ量が用意されている。どうやら、フィーナには物足りなかったらしい。
「マリアもセシリアも、今度からフィーナの量は他の人より増やして良いからね。ただし、流石に3人前とかは駄目だから、多くて1.5人分にしてね。流石に体型が大きくなるのは動きに支障が出るからね。フィーナの武器の一つは速さなんだからね」
「「分かりました」」
マリアとセシリアが同時に返事をする。それをフィーナがお腹をさする。
「そんな事無いよね。太って無いよね」
小声でそんな事を呟く。
「そうならないために、食事は他の人より少し多いぐらいで我慢してね。その分、訓練はしないとすぐにお腹が大きくなるから訓練は毎日するようにね」
「う、うん」
フィーナが何度も頷く。
「それじゃあ、食べ終わったから出ようか。最初に言ったけど、僕はこの後冒険者ギルドに行ってくるから、皆は家に帰っておいてね。ああ、買い物があるなら行ってきても良いからね。お金はセシリアが持っているから必要ならセシリアからもらってね」
「分かりました。では、商店通りに行って食材を少し買って帰りましょうか」
そうして、セシリア達と分かれて僕は冒険者ギルドへと向かうのだった。