第65話
2人をカルラの再生した部屋に連れて行き寝かせる。マリアは何処か疑念を持った顔をしており、フィーナは怯えたような顔をしている。
「大丈夫ですよ。カルラも私もご主人様に治してもらいました。そうは言っても信じられないかも知れませんが、ただ、寝ていれば治るんです。だまされたと思って目を閉じていればすぐにすみますよ」
セシリアが安心させるためなのか声をかけている。その話し方だと逆に不安にならないかと僕は思うのだった。カルラは何も話さずにただ見ているだけだった。というか、何故か2人ともマリアとフィーナの再生の場面を見たいのかこの部屋から出て行こうとしなかった。その理由を聞いてみると
「いやあ、あの時はあたいは再生される側で余り詳しく見られなかったから、今回は見学がしたいと思ってね。別に構わないよね。あの時、セシリア姉は見てたわけだしさ」
外から見てみたいというのは分るのでカルラの好きなようにさせる事にした。
「よし、じゃあ、始めようか。といってもそんな面倒な事をするわけじゃ無くてね。僕はただ、大地母神フォルティナ様の力を少し借りるだけ」
「フォルティナ様のお力ですか?」
フィーナが呟き、マリアは驚きで目を見開いている。
「始めるよ」
僕は神剣フォルティナを掲げる。
「大地母神フォルティナ様の力をここに顕現すること願い奉る。この者達の身体の欠損をそのお力により癒やしたまえ、《神魔法リジェネレイト》」
神剣フォルティナから光が溢れる。そして、その光がマリアとフィーナを優しく包み込む。そして、ゆっくりと手足が再生されていった。
その様子をカルラは言葉を無くし、ただ、見つめているだけだった。マリアとフィーナは再生された自分の手足を見つめている。
「本当に再生した」
「私の手足、あの貴族の男に切り落とされた手足、ちゃんとある・・・」
今にも泣きそうな顔で見つめている。
(2人分だったためか思ったよりも神剣の魔力を使っているなあ。これだとまたしばらくは使わない方が良いかもね。僕の魔力も半分ぐらいは使われている感じだね。まあ、今日はダンジョンに行くのはやめてマリアとフィーナの日用品を買いに行くかな)
2人分の再生ということで神剣の魔力と自分の魔力を想像より使ってしまったらしい。
「さて、マリアもフィーナも身体の調子はどうかな。再生はちゃんと出来ているとは思うけど」
自分の手足の感触を確かめていた2人が顔を上げる。
「はい、大丈夫です。旦那様は凄い方だったのですね」
「お兄ちゃん、すごいよ。本当に私の手と足が治ったよ」
「お嬢様、旦那様に対してお兄ちゃんは良くないですよ。ちゃんと、旦那様かご主人様と言わないといけませんよ」
「えっ、お兄ちゃんじゃ駄目かな?」
「いけません!」
マリアがフィーナに怒る。
「別にいいよ。お兄ちゃん呼びでも構わないよ」
僕のその言葉にフィーナの顔が笑顔になる。
「うん、お兄ちゃん!ありがとう!」
フィーナが笑顔で元気よくお礼を言ってくる。
「お嬢様、私達は奴隷なんですよ」
マリアはそんなフィーナを見て頭を抱える。
「ご主人様はそんな事で怒りませんよ。さて、そろそろお昼ですから何か作りますね」
セシリアがご飯の準備をするために部屋を出る。
「私も手伝います」
そう言ってマリアがセシリアの後を着いて行く。
「ご飯が出来るまではちょっと、フィーナの魔法適性を見ようか」
「魔法適正ですか?」
フィーナが僕の言葉に首を傾げる。
「君たちを買った理由の一つにダンジョンに一緒に行くパーティーメンバーを増やすっていうのもあったからね。だから、まずは魔法適性が無いか調べようかと思ってね」
「ご主人、まさかフィーナもマリアもダンジョンに連れて行くつもりなの?」
「そうだよ。5人でダンジョンを攻略する予定だよ」
「えっと、私がダンジョンですか?大丈夫でしょうか?」
フィーナがよく分らないと言った感じで聞き返してくる。
「最初は誰でも弱いさ、でも、全員に強くなってもらいたいんだよね。セシリアには言ったんだけどね。僕が死んだらフィーナはどうなると思う?」
「え、それは、その、分りません」
「一時は奴隷から解放されるだろうね。だけど、すぐに奴隷に逆戻りするだろうね。それを回避するにはダンジョンにいけるぐらい強くならないと難しいよ。冒険者になれば生活は出来る。それには強さが必要だ。だから、マリアもフィーナも2人とも強くなってもらう」
僕の言葉にマリアは難しい顔をする。余りよく分ってないというような顔をしている。今まで王女様だったというから、世間に疎いのだろう。これは食事の時にでも、マリアも入れてちゃんと話した方が良さそうに思えた。
「とりあえず、魔法の適性を見るのは食事の後にしよう。僕も魔力を使ったばかりだから少し休みたいからね」
「はい、わかりました?」
フィーナがよく分らないという感じで首を傾げた。
「カルラはフィーナを連れて家を案内してもらっても良いかな。僕は自分の部屋で少し寝ているから、ご飯が出来たら起こしに来てくれると嬉しい」
「ああ、セシリアにも言っておくよ」
そうして、カルラはフィーナの手を取り家を案内するために部屋を出る。僕は自分の部屋に戻りご飯が出来るまでの間、少し眠ることにした。