第63話
朝食を食べてから1人で奴隷商へと向かう。この町にあるのは一つだけなのでカルラを買ったところでもある。そのためにカルラを連れてはいけない。カルラを見るとその手足が治っていることが知れてしまう。そうすれば、いらないことで時間を取られるだろうと思い1人で来たのだ。
僕は奴隷商の扉を入って行く。すると、奴隷を買ったときに対応してくれた人が僕に気づき近寄って来た。
「これはこれは、以前に当店で奴隷を買って頂いたお方ですね。本日はどういった奴隷をお求めですかな」
奴隷を買ってから数ヶ月経っていたのだがこの店員は僕を覚えていたらしい。
「最近、ある王国が滅びたと聞いてね。出来ればそこでメイドでもしていた女性を探しているんだけど」
「ふむ、メイドですか。当店では確かにある王国からの奴隷は入ってきていますが、メイド経験者は入ってすぐに買い手が見つかりますね」
店員が答える。仕事が出来る奴隷はすぐに売れるだろう事は僕も予想はしていた。しかし、僕の求めている奴隷は別に五体満足である必要はない。
「別に手足が無くても構わないよ。僕の所にいる他の子にメイドの仕事を教えてくれればね」
「なるほど、前回のカルラさんのような状態でも構わないということですね。それでは、1人だけいるのですが、ちょっと特殊でしてね。もう1人とセットでと本人が言うのですよ。なので、2人セットで構わないでしょうか」
「それは、両方メイド経験者というわけでは無いんだよね?」
「はい、1人だけですね。もう1人はどうやら使えていたお方らしくてどうしても一緒でお願いしたいと言うのです。そのもう1人はどっちかというとおまけですね」
僕は考える。2人とも売れてないということは値段が高いか、どっちも何処かが無いのだろう。神剣の魔力はほとんど回復しているので2人であろうと再生できると思い、とりあえず、どういった状態なのか
見てみることにした。
「それでは、その2人を見せてもらっても良いですか?」
店員が笑顔になり店の奥に案内してくれる。
そして、部屋に案内されるとそこには左手と左足の無いまだ10代前半といった幼さの残る少女とそれを支える右手と右足が無い女性がいた。
「彼女たちは某王国の貴族の生き残りでしてね。あの、戦争で捕まってしまいまして、その、ね、ひどい目に遭いまして、しかもある貴族が言うこと聞かないことに腹を立てて手足を切り落としてしまったんですよ。この通りの姿なので売れないんですよね。1人で歩く事も出来ませんから」
「ああ、そう言う貴族はいるって聞くね。分りました、この2人は僕が買いましょう。2人でいくらですか?」
「ありがとうございます。こちらの2人は貴族の方より金貨20枚も払わされてしまいましてね、申し訳ないんですが金貨40枚になってしまいますがよろしいですか?」
貴族が絡んでいたので高いとは思ってはいたがやはり高かった。セシリアを買ったときも金貨20枚したのだがその2倍もするとは思ってはいなかった。しかし、これ以上条件の揃った奴隷はいないだろうと思い買うことに決めた。
「大丈夫です。それで、よろしくお願いします」
店員は笑顔で2人に話しかける。
「良かったですね。こちらの方が貴方たち2人を纏めて買っていただけるそうです。こちらの方は冒険者として活躍されていますからね。ちゃんと、面倒を見てくれますよ」
店員の言葉に少女の方は怯えた表情をしており、女性の方は余り表情を出さずに少女を抱きしめている。
「それでは、早速契約の方をさせてもらいましょうか」
僕は金貨40枚を払い契約を済ませて奴隷商を出る。少女と女性はお互いが支え合うようにして僕と向き合う。
「これから、よろしくお願いします」
女性が何処か疑っているような声で挨拶をしてくる。少女の方は小さく頭を下げるだけだった。
「お嬢様、これからお世話になるのですからちゃんと挨拶はしてください」
女性が少女に注意する。それに少女が弱々しく答える。
「うん、えっと、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね。今は不思議だろうけど君たちを買ったのは理由があってのことだからね。まあ、君たちにも恩恵はあるからね。まあ、今は家に帰ろう。荷車が無いから僕が二人を背負って行く方が速いかな」
「あの旦那様、流石に女性とはいえ2人も背負うのは無理なのでは無いでしょうか」
女性が聞いてくる。
「僕は冒険者だからね。身体能力を上げる魔法ぐらいは使えるよ。《地魔法ストレングスアップ》」
僕は身体強化の魔法を使う。まず、女性に少女を背負ってもらい。さらにはその女性と少女を紐で結んで落ちないようにしてから僕は女性を背負う。
「何か、とても恥ずかしいです」
少女が恥ずかしそうに言う。
「お嬢様、しばらくの辛抱ですから我慢してください。旦那様の家に着くまでですから」
「分りました」
女性の言葉に少女は渋々了承する。
「なら、頑張って早く帰ろうかな。揺れるかも知れないけどそこは我慢してね」
そして、僕は2人の女性を背負って家へと向かうのだった。