第61話
次の部屋に行くとそこには1つだけ宝箱が置いてあった。
「最初の5階層の宝箱は余り期待できないんだよな」
カルラがそんな事を呟く。
「まあ、とりあえず開けてみようか」
そして、宝箱を開けてみると出てきたのは魔鉄製の両刃の斧だった。それを見て皆が微妙な顔をする。
「別に悪い物では無いんだけど使う人がいないからね」
「そうですね。流石に私は使えません」
「あたいも剣の方がしっくり来るから使わないね」
「よし、帰ってから売るかな。さて、じゃあ、次の階層に行ってみようか。次の階層は何が出てくるのか教えて」
僕がカルラに次の階層で出てくる魔物に着いて聞く。
「6階層からは動物型の魔物が多いかな。6階層はワイルドドッグが群れで出てくる事が多いね。まあ、群れと言っても6匹ほどだけど、後はスカイホークかな。これは空からの奇襲にさえ気をつけていればなんてことは無いね。6階層で一番やっかいなのはシーフモンキーかな。こいつは6階層から9階層に出るんだけど持っている武器を盗んでいくんだよ」
「盗むと言っても難しくない?」
「シーフモンキーは他の魔物との戦いの最中に隙を突いて武器を落とさせて、それを拾って逃げるんだよ。シーフモンキーは足音もさせないし気配も感じにくいから対処が難しい上に自分から戦うことはしないんだよなー。追いかけて取り返すしか無いんだけど、シーフモンキーは他の魔物がいる方向へ逃げる。そして、その魔物の相手をしているときにその盗んだ武器を使って攻撃をしてくることがあるんだよ。また追いかければ良いだろうと魔物に集中してそのシーフモンキーにやられる冒険者がいるらしいよ」
「かなり面倒な魔物だね。シーフモンキーの姿ってどんな感じなの?」
「シーフモンキーはゴブリンをもっと人に寄せたような感じだね。シーフモンキーは売れるのは魔石だけだから見つけたらさっさと倒した方が良いね」
「なら、シーフモンキーが出たら魔法を使ってでも速攻で倒そうか。じゃあ、6階層に挑戦しようか。少し挑戦したら今日はもう帰るからね」
二人が頷くのを確認して6階層へと向かって行く。
6階層に降りてみて驚いた。そこには草原が広がっていた。所々、木々が生えているぐらいで見渡す限りの草原である。天井には何故か空が広がっていた。
「何これ?」
「・・・」
僕はそれに驚きでそう呟くことしか出来ず、セシリアはびっくりしすぎて言葉を無くす。
「まあ、最初は驚くよね。この6階層から10階層迄はこんなの自然が続いているよ。どうしてとか聞いても分らないからね。ギルドの話によると聖霊様のお力で作られてるんだろうって言われているけど誰も本当の事は知らないんだよ」
僕は足元にある草を見ると、土から草が生えていた。空を見てみると何故か太陽も出ている。
「聖霊の力って凄いんだね。まあ、分らないことは分らないままだよね。考えても仕方ないか。空に所々飛んでいる鳥が見えるけどあれがスカイホークでいい?」
「ああ、そうだよ。あそこから急降下してきて嘴や鋭い爪で攻撃してくるのさ」
「あれ、結構大きいよね」
「ああ、スカイホークは翼を広げた状態で3メートルはあるからね。人よりは全然大きいよ。シーフモンキーは木に隠れていることが多いから木の近くでは戦わない方が良いよ」
「では一通り戦ってみようか。あ、シーフモンキーはやめよう。もし、逃がしたら面倒なことになりそうだからね。さて、セシリアはあの空にいるスカイホークまで矢を届かせる事は出来る?」
「・・・風のエンチャントを使えれば出来ると思います」
セシリアは少し考えてそう答える。
「なら、どのスカイホークでも良いから狙ってみて」
「《風魔法エンチャントウインド》」
セシリアが矢に風のエンチャントをかけてスカイホークに射かける。スカイホークはそれを簡単に躱して今度はこちらに急降下してくる。セシリアはすぐに次の矢を構えてスカイホークを射る。スカイホークは急降下している最中なのにそれを器用に避けた。それを僕が矢を番えて放つ。最初の矢は少し遅くして放ち、そして、その矢に遅れて2つめの矢を放つ。2つめの矢は力を込めて早く鋭く放つ。スカイホークは1つめの矢は避けられたが2つめの矢が羽を居抜いた。それにより落ちてくる場所が変わって地面に激突する。僕は落ちてきたスカイホークの頭を切り落としその息の根を止める。
「セシリアの弓は素直だね。僕がやったように緩急を付けたりして獲物に当てられる用に努力しないとね。因みに、あれは狩りの基本でもあると思うんだけど」
「すいません、村では狩りは男の仕事でやったことが無かったのです。弓矢は撃てますがそれだけです」
「これも要練習だね。ところで、スカイホークは何が売れるのかな?」
それにカルラが答える。
「スカイホークはその爪と嘴、後は魔石だね。肉も売れたね」
「肉は食べられるのかな?」
「ああ、美味しいらしいけど、結構高値で売れるからあたい達は売るだけで肉は食べたことは無いけどね」
「それは、勿体ないと思うけどね。食べられるなら今度食べてみよう」
そして、解体をしてからワイルドドッグを探すことにした。