表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/191

第52話

 奴隷商へと着いた僕達は早速中へと入る。


「いらっしゃいませ、本日はどのような奴隷をお捜しでしょうか?」


 店の店員らしき人が話しかけてくる。周りを見ると奴隷を見ている冒険者らしき人達もいる。


「この町のダンジョンで冒険者をしていた人の奴隷っていますか?」


「それでしたら、当店でいる奴隷のほとんどがそうですね。ダンジョンで仲間を失い、他のパーティーに入れて貰ってもなじめずに酒場に入り浸り借金を作り奴隷になった者やダンジョンで他のパーティーを襲い金品を奪っていた者が捕まって奴隷になった者等ほとんどがこの町の冒険者でダンジョンに行っていた者たちばかりになります」


「なるほど、あちらで奴隷の人を見ているのもそういった元冒険者の奴隷を買う人なんですね」


「そうですね。奴隷は主に対して裏切る事は出来ません。主の命令にも逆らうことは出来ませんから扱いやすいんでしょうな」


「では、この町のダンジョンに詳しい人っていますか。かなり奥まで行った人などがいたら嬉しいのですが」


 店員が少し考える。


「そう言われましても、今現在いる奴隷でしたら5階層ぐらいまでなら行ったことがある者ならいましたかね」


「それだと、たいしたことないですね。この町のダンジョンって15階層あって10階層以上まで行かないと一流って呼ばれませんよね」


「それだけいけるのであれば普通に稼げるので奴隷落ちはほとんど無いですな。奴隷になってもすぐに買われてしまいますよ」


「まあ、そうですよね。なら、手足が無くても良いので奥に迄行ったことがある奴隷の人はいますか?ただ、しゃべれないと情報が手に入らないのでしゃべれる人でお願いします」


「情報だけでもですか。ギルドに行けばお金さえあれば情報は手に入ると思いますけどね」


 店員が訝しげに僕を見る。


「その奴隷がもしかしたらギルドに話していない情報を持っているかも知れませんし、ギルドに払うお金より安く買えますからね」


「その奴隷のための食事やら生活のためのお金の方がかかると思うんですけどね。分りました、こちらとしても抱えていても出費にしかなりませんから紹介しましょう」


 店員と一緒に店の奥へと向かう。そこにはいくつかの部屋があり窓から中の様子が窺えるようになっていた。しかし、ほとんどが普通に手足がある奴隷でそのドアに値段が張ってあり、良いお値段がした。


「先程、紹介しましょうと言っておいたのですが実は当店ではそういった奴隷は今現在一人しかおりません。一番奥の部屋におります」


 一番奥の部屋には鍛え抜かれた筋肉をした女性がいた。しかし、その女性には片足と片腕が無かった。


「こちらの女性はダンジョンに挑戦していた冒険者ですでに13階層迄到達していました。しかし、その帰り道でダンジョンでたまに起こる大暴走に巻き込まれましてね」


「大暴走って魔物が大量発生する現象ですよね。最終的には魔物同士の共食いが起こるからそれ迄はその階層を封鎖するほどの魔物災害ですよね」


「ええ、そうです。大暴走がどうして起きるのかは分っていませんが、一部では聖霊が気まぐれで起こしていると言われていますね。おっと、話が逸れましたね。ダンジョンの帰り道で大暴走に巻き込まれまして、彼女のいたパーティーは何とか次の階層を目指していたらしいのです。何とか大量の魔物を倒しながら次の階層への階段の近くまで行ったらしいのですが体力の限界だったのでしょうね。その目前で彼女は足と腕を噛みちぎられたらしいのです。そして、仲間に自分に構わず逃げるように言って仲間を逃がしたそうです」


 店員はそこで言葉を切り息を吐く。


「仲間達も限界だったので泣きながら階段を上っていったみたいです。そして、彼女が死を覚悟を決めたときに奇跡が起きたのです。その階層の奥からこの町では誰も知らない人はいないと言われるほどの最強パーティーである『ドラゴンの牙』の人達が来て魔物を倒してくれたらしいのです。さらには地上まで送ってもらったそうです」


 店員が興奮したように力強く言う。しかし、その後に悲しそうに言う。


「まあ、それでも、無くした手足では冒険者活動は出来ません。彼女はパーティーメンバーに迷惑をかけられないと自分で自分を売ったのです。どうも聞いた話ではすでに帰る家が無いらしく行く当てもないのでどうしようも無かったみたいですね。さて、それでどうなされますかな。彼女なら13階層迄は到達されていますので条件にも合致すると思いますけども」


 僕はセシリアを見ると今の話を聞いて泣いていた。いや、まあ泣ける話ではあると思うけど本当にあった話かは分らないんだけど・・・。


「彼女と話してみても良いですか?」


「ええ、もちろん構いません」


 店員が窓を開くとその彼女に話しかける。


「カルラ、こちらのお方がお話があるそうです」


 カルラと呼ばれた女性がこちらを向く。その目は諦めた目をしていた。


「ねえ、君は本当にこの町のダンジョンの13階層迄行ったの?」


 その言葉に彼女は首を横に振る。それを見て店員が慌てる。


「き、聞いた話では13階層迄行っているという話だったじゃないか。まさか、嘘をついたのか。それはそれで問題だぞ!」


「あの話はあたいが手足を無くした時の話だろ。あたい達のパーティーは最後の15階層迄行ったことがある。まあ、15階層の魔物を見て逃げ帰ったけどね」


 店員が言葉を失う。まあ、13階層迄と思ってたらそれより奥まで行っていたのだ驚くだろう。


「これは、逆に掘り出し物になるかな。すいません、彼女を買いたいんですけど良いですか?」


 店員が我に返り笑顔を作る。


「いや、まさか15階層迄行っていたとはこちらもびっくりしました。それで、彼女の値段ですけどもこちらに書いてある通り金貨25枚になっております。一応、情報も値段に含まれていますのでこの値段となっております」


「大丈夫です。それではお願いします」


 部屋の中に入りお金を払い契約を行う。


「これで、こちらの奴隷はお客様の奴隷になりました。また必要な奴隷がご入り用でしたらお越しください」

 

 彼女にフード付きのマントを身につけてもらい、僕とセシリアが肩を貸して奴隷商を出る。


(帰ったら彼女の寝具や家具を買いに行かないといけないね。神剣の魔力がまだ満タンにはなってないけど間に合うかな)


 帰ってからの問題を考えながら家に帰るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ