第49話
セレティグト伯爵領主の館
「それで、マルスの遺体はオークによって食い散らされていたというのだな」
ドアの前に執事が立っていて領主に報告する。
「はい、帰りが遅いので騎士達と向かった所、数十のオークが騎士だった者たちとマルス様の遺体をむさぼっていたとこちらに向かっていた商人達が言っていました。商人達はオークが食事に夢中になっている間に急いで逃げたとのことです」
「ふむ、それでは、マルスは言っていた冒険者では無くオークに殺されたのだろうか?」
「マルス様付きの騎士は素行に問題あった者たちばかりで実力は無かったですね。オークに遅れを取るのも当然かと思われます」
「わかった。なら、あの冒険者では無くオークに殺されたとして処理しよう。これで、穏便に次男に後を継がせられるな。マルスは問題がありすぎた。それを問題なく廃嫡および、亡き者にしてくれたのだ。魔物も時には役に立つのだな。所で、そのオークはちゃんと処理はしたのだな」
「はい、オークは全て処理をしておきました」
それに、伯爵は頷き持っていた飲み物を飲み干すのだった。
僕とセシリアがセレティグト伯爵領を出てから2週間程、聖霊のダンジョンがあるというゼイル侯爵領に到着した。そして、ゼイル侯爵領に到着した最初の町の酒場である噂を聞いた。
「おい、聞いたかよ。どうやら隣に国のハイメルン王国に攻め込むらしいぞ」
「ああ、聞いたよ。でも、大丈夫なのかね?あそこはファールン王国と仲が良いからファールン王国が援軍に来るんじゃ無いのか?」
「どうやら、ファールン王国は今回は身動きが取れないらしい。どうやら、ガイナラント帝国がファールン王国に攻め込んでいてそっちへの対処のためにハイメルン王国に援軍を送る余裕が無いだろうって話だ」
「ガイナラントが攻めてきてるのかよ。それなら、こっちがファールン王国に援軍を送らないといけないんじゃ無いか?」
「ウチの王様がファールン王国に食料と武器を送ったらしいぜ、騎士団の派兵は見送ったらしいけどな。まあ、死の森への崖があるおかげで平野での戦争ってわけじゃない。今までも追い返していたわけだからそれで十分だろうってことじゃないか?」
「帝国が攻めている隙にハイメルンを攻め滅ぼうって事か、帝国が撤退するまでに終わるのかね?」
僕とセシリアはそれを聞いても自分たちには関係無いと思い、ゼイル侯爵領の迷宮都市に向かうのだった。
迷宮都市は中心都市からは離れた場所にはあったが、迷宮から出る宝箱(ちなみに、この宝箱は聖霊が気まぐれに用意していると言われている)や倒した魔物の魔石や素材があるためにかなり大きな町になっていた。
迷宮都市に着いて宿に泊まり、部屋で今後の事を話し合う。
「とりあえず、ダンジョンに挑戦します」
「はい」
セシリアが緊張した面持ちで頷く。
「だからと言ってもすぐすぐに奥までは行かないからね。最初は浅い階層で戦闘訓練とお金稼ぎがメインで行こう。急ぐことは無いから半年から一年ぐらいはこの迷宮都市でお金を稼ごう」
「それだけ長いこといるのでしたら一軒家を借りても良いのでは無いでしょうか?」
僕は考えてセシリアが言うとおりに一軒家を借りることに決める。
「家を借りるのって何処に行けば良いのかな?これも、冒険者ギルドに聞けば何とかなるのかな?」
「私には分らないのでギルドで聞いてみてはどうですか?」
「ああ、そうだね。ここで考えるより聞いてみた方が速いよね。なら、早速行こうか」
そして、宿を出て冒険者ギルドへと向かう。ギルドは昼間だというのに沢山の人で溢れていた。その沢山の人の中には自分の実力を言い、パーティーに入れて貰おうとしている人や、どういった人をパーティーに入って欲しいのかと募集している人達が多かった。僕達はカウンターに行きこの迷宮都市での決まりを聞いてみた。
「この迷宮都市での決まり事ですか?そうですね、まず、ダンジョンに入るにはランクは必要ありません。ただし、たとえダンジョンで亡くなったとしてもそれは自己責任になります。ダンジョンで手に入れた素材や魔石、後は宝箱の中身は手に入れた冒険者様の物になります。ここのダンジョンは何度も攻略されていますので各階層で出る魔物の魔石や素材の買い取りは決まっています。そして、こちらがその買い取り表になりまして、素材の状態が悪かったら買い取り金額は下がりますのでそれはご了承ください」
「あっちでパーティーを募集してたりしている人達は、他にパーティーメンバーいないのですか?」
「ダンジョン内で亡くなってしまった等が多いですね。やはり、人数が多いとそれだけ安全ですし、所でフレイさんは2人でダンジョンに行かれるんですか?」
「はい、2人で行ってみて無理そうならパーティーメンバーを集めてみようかなと思います。後、この迷宮都市で家を借りるとしたら何処に行けば良いですか?」
「それでしたら、当ギルドでも受け付けしていますよ。迷宮都市なのでダンジョンに挑戦する冒険者さんが拠点として家を借りることが多いので当ギルドでも受け付ける事にしてるんですよ」
「そうなんですね。それでしたらお願いしても良いですか?」
「分りました。家の規模的には部屋数等希望はありますか?」
僕が考えているとセシリアが横から口を出す。
「あの、台所が欲しいです」
基本的にこういう人が多い場所で声をかけてこないセシリアが声を出したことで僕は驚いた。
「まあ、それは欲しいけどね。部屋数は4部屋ぐらい、台所、後は訓練用に庭があれば良いんですけど」
「分りました。明日また来て頂けますか?物件を探しておきますので、後家賃は大体一月金貨20枚以上しますが大丈夫ですか?」
「大丈夫です。よろしくお願いします」
そうして、ギルドを出てまだ時間があったのでダンジョンに入ってみることに決めて向かうのだった。