第47話
宿を出て露天では無く商店が並んでいるところに向かう。そこでこれからの冒険で必要な香辛料等を買う。その後に武器屋の行く。
武器屋の入ると無骨なドワーフの男が剣と思われる武器を打っていた。
「すいません、武器が欲しいのですが」
僕は声をかけるがそのドワーフのおじさんはちらっと見ると
「少しだけ待ってろ。この剣を仕上げたら向かう」
そう言ってきたので僕とセシリアはその作業を離れた所で見ていた。しばらく経ってからおじさんが剣を水に浸けてからマジマジと見ている。
「ふむ、まあまあだな。……さて、待たせたな。どんな武器が欲しいんだ」
剣を横に置いてカウンターの方に来て聞いてくる。
「弓と後は彼女の近接用に何か武器が欲しいのですが」
おじさんがセシリアの方をマジマジと見る。セシリアは身体を硬直させていた。じっくり見られて緊張しているようだ。
「エルフか、そんな細腕じゃあショートソードか使えて細剣って所だろう。ちょっと、待ってろ」
そしておじさんが奥に入って行き戻ってきたときにはレイピアとショートソードを持って来た。
「どちらも一般的な長さの奴を持って来た。ちょっと、振ってみろ。レイピアは突く動きだぞ」
言われたセシリアは一通り振って見る。
「あの、どうでしょうか?」
おじさんが口ひげを触りながら考えていた。
「ふむ、思ったよりも力があるな。レイピアじゃなくショートソードの方が良いだろう」
「なるほど、ではショートソードで頑丈なのをお願いできますか?」
「少し待ってろ」
そして、おじさんがまた奥に入って行く。
戻ってきたおじさんが手にしていたのは魔鉄で作られたショートソードだった。
魔鉄は魔力の通りが良く剣に魔法効果を乗せるためには最低でも魔鉄を五割ぐらいは含めないと駄目だった。魔鉄より魔力の通りが良いのがミスリルではあるのだがミスリルの方が貴重であるために魔法剣を作るなら、魔鉄を使うのが一般的になっている。
「エルフだから魔力の扱いは上手いのだろう。ならこの魔鉄のショートソードが相性が良いだろうな。魔法効果は軽量化と切れ味を増す奴が込めてある」
「へえ、ちょっと振ってみても良いですか?」
僕はおじさんから剣を受け取り聞いてみる。どんな風なのか気になったので振ってみたかったのだ。
「なんだ、お前さんが振るのか? 別に構わないぞ」
僕は魔力を込めて剣を振る。軽量化は三割ほど軽くなっているみたいだった。
一通り振ってみてから剣をセシリアに渡す。セシリアは剣を受け取ってから少し振ってみる。
「これなら振れそうです」
僕は頷くとおじさんに値段を聞く。
「まあ、待て後は弓だったな。それならこのトレントの枝を使った弓でどうだ。普通の弓より頑丈で矢を遠くまで飛ばせる」
僕はそれも受け取り構えてみる。それは、思ったよりもしなやかで矢を引くのにも余り力が必要では無かった。
「良いですね。では、この2つにしたいのですが値段はいくらですか?」
「そうだな。2つで金貨100枚って所だな。打ち分けてはトレントの弓が20枚で魔鉄の剣が80枚だ」
「分かりました」
僕は金貨100枚をカウンターに置く。
「毎度、魔鉄の剣の手入れ用の布などはサービスしといてやるよ」
「ありがとうございます」
そうして、武器屋を出て2人でオープンテラスにあるレストランで昼食を取る。
昼食を取り終わり最後に出てきたコーヒーを飲んでいると見知らぬ男と護衛と思われる武器を持った男2人がこちらへとやってくる。
「見つけたよ。麗しき人よ。」
見知らぬ男が両手を大きく広げて僕達の方にやってくる。
「僕達に何か用ですか?」
「君では無い。そちらの麗しいエルフのお嬢さんに用があるのだ」
「私にですか?」
「うむ、実は先程大通りにいたであろう。その時に君の姿を見たときに衝撃を受けたのだ。これほど美しい女性がこの世にいるのかとね。そのような男などとは手を切り私だけの宝石になって頂けないだろうか。何、安心したまえ私はこれでもここの領主の嫡男だ。不自由などさせない。君は私の側で私だけのために輝いて貰いたい」
「お断りいたします」
はっきりとセシリアが断る。それに眉間を押さえながら男がよろめく
「わ、私の聞き間違いかな?お断りしますと聞こえたのだが」
「はい、お断りします」
「な、何故だ。私はこの都市の領主の息子で時期領主だ。そんな私の側にいられるだけの栄誉が目の前にあるというの何故その手を取ろうとしないのだ。そこの男より私の方が絶対に良い、その日の冒険者暮らしの何処が良いというのか」
「私はご主人様の奴隷であることに満足していますから」
その言葉に男が財布から金貨を出して僕に言う。
「奴隷だったのか。では、そこの男に言おう。彼女を私に譲るがいい。金はいくらでも出そうではないか
!」
「断ります」
僕ははっきりと断った。
「貴様のような冒険者風情より私の側の方が彼女は輝く。それが分からない貴様では無いだろうが!」
「分からないですね。それと、彼女は誰にも渡すつもりはありませんよ」
「貴様、私がこの町の領主の息子であると分かっていてそう言うのだな。貴族に逆らうというのだな」
「別に貴族に逆らうとかの話では無いでしょう。ただ、彼女を手放す気は無いと言っているだけです
」
「それが逆らっているというのだ。貴様は貴族に逆らった。お前達こいつを連行しろ!処刑してやる!」
「お断りします」
後ろに控えていた護衛と思われる騎士達が即答で断った。
「まて、お前達まで私に逆らうというのか?」
「マルス様わがままもそこまでにして頂きたい」
「こいつは貴族に逆らったのだぞ、処刑は妥当じゃないか!」
「いえ、逆らっておりません。旦那様もそう言われるでしょう。マルス様の行動は逆にこの国の法に触れております。もし、強行なされますと旦那様も僻地に所領移動を命じられるでしょう」
「な、何故そんなことになる」
マルスと言う領主の息子が慌てたように聞き返す。
「他人の奴隷に手を出してはいけません。これはこの国の法律にあります。マルス様は旦那様の権力を使い奴隷を手に入れようとしているように周りには見られるでしょう。それは貴族としては外聞が悪いのです。そして、他の貴族はそこを攻めてくるでしょう。この領地は各領地の中継地として人やお金が集まります。どの貴族もこの領地が欲しいのです。もし、ここでマルス様が強引にその奴隷を手に入れてしまったら他の貴族は法を破ったと喜んで王に直訴するでしょうね。そうなると法を破った旦那様にはふさわしくないと僻地に移動させられるでしょうね」
領主の息子が歯をガタガタ震わせて怯える。
「そ、それは不味い、父上に殺されてしまう。そ、そこの男今回の話は無かったことにして欲しい私は用事が出来たのでこれで失礼する」
領主の息子が逃げるように去って行く。
「此度は本当に申し訳ない」
護衛の騎士の2人が謝罪をし、領主の息子が向かった方に走って行く。僕達はそれを見送った後にコーヒーを飲み干し宿へと戻るのだった。