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第46話

 それから、1週間程かけてオークを相手にセシリアの魔法訓練が続いた。その結果《水魔法アイスメイク》を上空に作る事には何とか出来るようにはなった。ただ、《風魔法フォールウインド》をその後に使うことはまだ出来なかった。アイスメイクを自分の離れた場所に発生させるのは出来たのだがその後にフォールウインドをアイスメイクの上空からでは無く自分の真上で発生させてしまい、自分が地面に倒れてしまったのだ。


「あうぅぅ、また失敗してしまいました」


「なら、今度は《風魔法フォールウインド》を離れた場所で生み出せるようにならないとね。早く発生させないといけないと思って焦っているのかな? まあ、こればかりは練習あるのみだよ」


「はい」


 セシリアが俯きつつ返事をする。


「さて、とりあえずこの町の滞在は今日までにして明日には出発しよう。後2つの町を越えた先に貴族の住む中心都市がある。そこはいくつかの領地への街道が交差する場所だから物が集まるからそこで買い物をしてから目的地のゼイル侯爵領に向かおう」


「分かりました。所で、ゼイル侯爵領に向かうのはどうしてですか?」


「あそこには聖霊のダンジョンがあるらしいんだよね。だから、聖霊の加護を君に受けてもらおうと思ってね」


「聖霊の加護ですか? 私にダンジョンを攻略できるのでしょうか?」


「僕も一緒に入るから大丈夫でしょ」


「ご主人様も聖霊の加護を受けられるんですよね?」


「いや、僕は聖霊の加護を受けないよ。僕にはすでに加護を授かっているからね。聖霊の加護は受けれないんだよ。じゃあ、宿に帰ろう」


 セシリアが不思議そうな顔をしつつ頷く。


 次の日に町を出て目的地の中心都市セレティグトに向かう。ここはセレティグト伯爵が治めている中心都市である。ここはいくつかの貴族領地の経由地でありこの町から自由都市マルンへも向かうことが出来る。


 それから、1週間ほどかかって中心都市セレティグトに到着した。門を通り町に入って行くと大きな通りが中心にある貴族の館から伸びていた。そして、通りの脇には沢山の商人が露天を開いていた。僕達が露天を見ながら宿を探していると馬に乗った騎士達が大通りを勢いよく走って行く。


「どけどけい、邪魔をするな」


「きゃっ」


 と、それに驚いたセシリアが尻餅をつき被っていたフードが外れる。セシリアが慌ててフードを被り直した。


「大丈夫?」


「は、はい」


 僕はセシリアの手を引いて起こす。


「しかし、騎士の人は何を慌てているんですかね?」


 僕は露天の人に聞くと


「最近この近くで盗賊に襲われたって言う商人がいてね。その盗賊の討伐に騎士達が躍起になっているって聞いたからそのせいじゃないか?」


「そうなんですね。盗賊って何処の門を出た方に現れたんですか? 僕達はこれからゼイル侯爵領に向かうために南の門を抜けていくつもりなんですけど」


「聞いた話じゃあ、自由都市の方からこちらに向かっていた商人って話だったから。西の門を抜けた先じゃないかな。話によると冒険者崩れって話も聞いたから大方自由都市マルンで実力が無いくせにダンジョンに行って金がなくなったとかじゃないのか。あそこのダンジョンはそこそこ強いらしいって聞くからな」


「なるほど、ちゃんと魔物と戦うための知識も実力も身につけずに挑戦した愚か者なんですね。村の近隣に出るゴブリン等と一緒にしたら駄目なのにゴブリンやオークを倒していい気になって挑戦して失敗したわけですね」


「本当に馬鹿だよな。ちゃんと自分の実力と魔物の実力を把握してないからそんな目に遭うんだよな。今時の奴らは自分の実力を過信する奴が多いみたいだからな。お前さんもちゃんと経験積んでからダンジョンに挑戦した方が良いぞ」


「ありがとうございます。所で、この町の宿って何処にありますかね。冒険者用の宿なら嬉しいのですが」


「なら、冒険者ギルドで聞いた方が良いんじゃ無いか? 町の西側の方に冒険者ギルドがあるからそこで聞いてみな」


 僕達はお礼を言って露天を離れ町の西側にある冒険者ギルドに向かう。冒険者ギルドは西側の大通りに面したところに建っていた。


「すいません、宿を探しているんですが食事が出て治安が良いところで何処か無いですかね」


「宿ですか?食事が出来るところでしたらこの大通りを一つ入った所に水の鳥亭がお勧めですね。大通りに近いので治安も良く1階は食堂になっているので食事も出来ます。ただ、値段の方は高めになりますけど」


「水の鳥亭ですね。分かりました行ってみます」


 教えて貰った水の鳥亭に向かってみる。5階建ての綺麗な建物で食堂も酒場では無く落ち着いて食事を取るような高級な感じのする食堂だった。中に入りカウンターに行くとそこにはメイド服着た若い女性が受け付けをしていた。


「すいません、宿を1泊取りたいのですが空いていますか?」


「いらっしゃいませ、ご宿泊ですね。夕食、朝食付きで1泊二人部屋で金貨10枚になりますがよろしいですか?」


「分かりました」


 僕は金貨10枚を渡す。


「はい、それではお部屋の方に案内させて頂きます。ただいま、係の者をお呼びいたしますので少々お待ちください」


 僕は驚いた。今までは部屋の鍵を受け取り自分で部屋に向かうのが普通だったのだがここでは違うらしい。


(あ、これ本で読んだことがあるわ。確かチップとかいるよね。ここって見た目通りの高級な宿だったんだ)


「お待たせしました。私がお部屋まで案内させて頂きます」 


 執事服を着た人が来て部屋に案内してくれる。部屋に来ると部屋の内装等を説明してくれる。それが終わると僕はお礼を言って金貨を1枚渡す。


「お客様は当宿は初めてございますね。こういう場合は金貨では無く大銀貨1枚で十分でございますよ」


「あ、そうなんですね。教えて貰いありがとうございます」


「いえいえ、それでは何かございましたら遠慮無くお申し付けください。夕食の方は食堂でもお部屋にお持ち頂いても構いませんので、それでは失礼いたします」


 執事の方が綺麗にお辞儀をして部屋を出て行く。


「あの、ご主人様こんなに高い宿で良かったのですか?」


「まあ、何事も経験だよ。冒険者ギルドがこんな宿を紹介するとは思っていなかったよ」


「そうですよね。冒険者に勧める宿では無いですよね」


「もう宿を取ったんだからもう気にしちゃ駄目だって、さて、じゃあ、買い物に行こうか。ここで買うのは塩とかの調味料と後はセシリアの弓だね。塩は岩塩があればいいんだけどとりあえず、町をもう1度見て回ろうか」


「分かりました」


 そして、町に買い物に出かけるのだった。

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