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第40話

 夜が更けた頃何か呼んでいるような声がした気がして起き上がる。隣ではセシリアが寝ていた。僕はセシリアを起こさないようにゆっくりとテントを出る。


 すると、泉が輝きそこから半透明のフォルティナ様が姿を現す。僕は思わず膝をつき低頭する。


「良いのですよフレイ、今回は少しだけ裏道を使い姿を現しただけです」


 フォルティナ様が優しく微笑みながら言う。


「さて、今回は姿を見せたのは神具についての事なのです」


「神具にはとても助かっています。本当にありがとうございます」


「しかし、今はその魔力もかなり減少していますね。その魔力を回復する手段は伝えておかないといけなかったのですがそれを忘れていました」


(まあ、実際はわざとなんですけどね。そうしないと地上に顕現出来ませんし。神の決まり事も結構面倒なんですよね)


「ありがとうございます。確かにかなりの魔力を消費してしまいました。申し訳ありません」


 フォルティナ様がゆっくりと首を振る。


「いえ、それもテントにいる彼女を助けるために必要であったことでしょう。それに、その神具は貴方の神具です。どのように使おうと私が何かを言うことはありませんよ」


「ありがとうございます」


「それでは、本題ですが神具の魔力を回復するには地上にある魔力をゆっくり吸収させる以外にはありません。しかし、常に地上にある状態でも神具に魔力が充塡されるのは一年はかかるでしょうね。その間でも神具の力は使えますがその効果は限定的な物になるでしょう」


 僕は少し考える。


「あの、それは身体強化の効果も使わない方が良いのでしょうか?」


「身体強化には神具の魔力は使っていないので関係ありませんよ。神具の魔力を使う効果としては2つあります。一つは教えてありますね。再生の魔法です。もう一つは魔物の魔石を使い一度だけその姿を顕現させてその魔物を使役することです」


「使役ですか?」


「はい、ただし魔石に残っている魔力がつきればその魔物と一緒にその魔石も消失します。一度、試してみた方が良いかもしれませんね。うーん、でも今の神具の魔力ならオークぐらいの魔石ぐらいにしておいた方が良いかも知れませんね。オークの魔石ぐらいなら2日ぐらいの顕現が出来るでしょう」


「そうですか。ダンジョンに行く予定ですのでその時に試させていただきます。ただ気になることが一つあるのですが神具を地上にということは魔法袋の中では駄目と言うことでしょうか?」


 フォルティナ様が少し困った顔をする。


「駄目ですね。魔法袋は地上では無く異空間のような場所になるために魔力を吸収しないんですよね」


「それではどうすれば良いんでしょうか?神具は切れ味が良すぎて鞘が切れてしまい固定でき無いんですよね。抜き身では直ぐに町で捕まってしまうでしょう」


「分かっています。そこで、その神具のための鞘を今回用意しました。ソルテールに怒られてしまいましたよ。普通は鞘も一緒に渡す物だとね。でも、仕方ないじゃ無いですか。私は戦いを生業とする神なのではないのです。生命を生み出すのが私の神としての仕事なんですから」


 フォルティナ様が頬を膨らませて怒ったように言う。その姿はとてもかわいく見えて逆に微笑ましく見える。そんなフォルティナ様が大きく咳払いをする。


「ゴホン、話が脱線してしまいましたね。それでは、この鞘を受け取りなさい。貴方の人生が幸せであるように私は祈っていますよ」


 僕が鞘を受け取るとフォルティナ様が消えて泉の輝きも収まった。


 僕は鞘に神剣を収めてテントに戻りそのまま寝床に入った。


 次の日の朝、起きて朝食の準備をしているとセシリアがゆっくりと欠伸をしながらテントから起き出してきた。


「あ、すいません、朝食の準備も手伝いもせずに」


 セシリアが朝食の準備を手伝ってくれる。


「これでも、母の手伝いなどはしていましたので少しは手伝えると思います」


 そうして食事が出来て食べているとセシリアが話しかけてくる。


「あの、これからどうするのでしょうか?」


「聖霊のダンジョンがあるゼイル侯爵領に向かう予定だよ。向かう途中で君の実力を見たいのと後は訓練かな」


「そうですか。私にダンジョンに入るだけの実力なんて無いと思いますけど」


「それは、これから訓練して身につけて貰うよ。必死に食らいついてきてね」


「分かりました」


 そういって、うつむき朝食を食べる。それから数分ほどして顔を上げて話しかけてくる。


「あの、ご主人様は強いんですよね?」


 僕は食べるのを中断して


「まあ、それなりに強いとは思うよ。それがどうしたの?」


「あの、ここの子爵にですね、私の従姉妹がまだ奴隷としていまして、その従姉妹を助けていただけないかと思いまして・・・」


「無理だね。その従姉妹を買えるだけのお金は無いし、その子爵はお金を出せば手放しそうなの?」


「お金を積まれても手放す事は無いと思います」


「なら無理だね。助けるだけなら出来るよ。いまの子爵の周りは隣の領地で起こった奴隷の反乱に兵を出しているから今は兵が少しは減っているだろうからね。でも、それをすると僕はこの国の全てに狙われるだろうね。そんな状態で君たちも守りつつ逃亡生活なんて無理だよ。町にも入れなくなるだろうからね」


「そうですよね。すいません無理なことを言ってしましました」


 それからは喋ることも無く黙々と朝食を食べる。


「君が考えることはまず強くなることだよ。従姉妹の事が心配なのは分かるけど君自身がこの先も無事でいられるかなんて分からないからね。もし、僕が死んだらどうなると思う。その場では奴隷として解放されるけど直ぐに人に捕まって奴隷に逆戻りだよ。まずは自分の身ぐらいは自分で守れるぐらいにはならないとね」


「分かりました。帰るところもないので今、助けても逃げる場所も無いですよね」


「なら、君が今することは強くなることだ。なので訓練は真剣にやってね。よし、じゃあ、ご飯も終わったし片付けて訓練しようか。あ、ちょっと考えたんだけど明日までここでテント生活するからね。せっかく水場があるから」


「あの、荷車をおいてきていますけど良いのですか?」


「無くなってても別に構わないから、魔法袋があるからね。では、訓練を開始しようか」


「狩りの練習しかしてこなかったのでお手柔らかにお願いします」


 そして、訓練を開始するのだった。

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