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第37話

 あのエルフを買うという少年が帰った奴隷商の店主の部屋にノックが響く


「開いていますよ」


 そして、入って来たのは冒険者らしき服装がした人が2人だった。


「よお、店主奴隷は売れそうかい?1人の客が店に入っていったが出てきたときも1人だった。売れなかったのかい?」


「あなたたちでしたが、いえいえあの客は明日商品を取りに来ますよ」


 それに、冒険者らしき2人がニヤニヤと笑う。


「なら、いつも通りで良いんだよなぁ。後で頭に知らせるか」


「お待ちを今回の客は襲うのは無しでお願いします。というより、実入りは無いと思いますよ」


「そうなのか?確かに金は持ってなさそうだったが奴隷を買うんだろう。なら、それなりの金もあるだろうし、その奴隷も売れるだろう」


 店主が首を横に振る。


「いえ、あの客が買ったのは例の子爵が押しつけてきたエルフの奴隷なんですよ。流石に、あんな者をこちらにまた持ってこられても買い取れませんよ」


 冒険者達が驚いた顔をする。流石にあの手足がないエルフを買う者がいるとは思わなかったのだ。


「本当かよ。あんな生きているのもやっとのエルフを買う奴がいるなんてな」


「まあ、そのエルフも実験ですぐに死ぬでしょうけどね」


「実験、なんだそりゃ」


「昔からあるまだ成功していない実験でしてね。エルフの生き血を使えば長寿の薬が出来るとか言う実験があるんですよ。まあ、無理だとすでに結果は出ているみたいですが、実験する人はまだまだいるみたいですよ」


「そんな実験があるなんてな。でも、良かったじゃ無いか。子爵に金貨15枚で押しつけられたあの奴隷が売れたんだからよ。しかし、それなら、襲ってもどうしようもないな。流石にそんな奴隷は楽しむのも金にもならねえ」


「ええ、なので、それをこちらに持ってこられても買い取れませんよ」


「分かった。今日出て行ったあの客には手を出さないように頭には言っておく。これからもよろしく頼むぜ店主」


 そう言って、店主の部屋から男達が出て行く。


「さてさて、では、私は明日の準備でもしないといけませんね」


 そうして、店主が作業に戻って行く。


 次の日の朝、僕は荷車を買って奴隷商に向かう。流石に背負って移動はとっさの行動が出来ない。だからといって馬車は高い上に扱った事が無い。結果、荷車になってしまった。


「奴隷を買ったら、向かう先は聖霊のダンジョンのあるゼイル侯爵領に向かうかな。結構遠いけどそこは訓練しながらゆっくり向かえば良いかな」


 そうして、奴隷商に到着する。奴隷商の中に入ると店主が出てきた。


「お待ちしておりました。それでは、こちらにどうぞ」


 そうして、昨日のエルフ奴隷がいた部屋に案内される。


「それでは、これより主従契約を始めさせていただきます」


 この主従契約は大昔の古代文明時代の遺産で今では失われた魔法技術だ。


「この首に付いている文様の所にお客様の血を一滴でよろしいので垂らしてください」


 僕は言われたように指先に傷を付けて血を垂らす。すると、文様が一際大きく輝いた。光りは一瞬で消えたがこれで主従契約はなされたらしい。


「これで、完了になります。それでは、料金の方をお願いします」


 そして、僕は金貨20枚を渡す。すると、店主が大きい荷物を渡してきた。


「こちらは、このエルフが元々着ていた服や靴だそうです。流石に、もう着れないでしょうがこちらもお持ちください。まあ、あっても当店が困りますので持っていってください」


「分かりました」


 僕は苦笑いをして荷物を受け取る。それを荷台に載せて戻ってきて奴隷を見ると奴隷は力の無い目で僕の方を見ていた。僕はその奴隷を抱きかかえると荷台に載せて毛布を被せて中心都市を後にした。


「さてさて、途中で森の中に入りますかね。何処か泉のある場所があると嬉しいんですけどね」


 そんな僕が街道を歩いて行く。そして、暗くなって来て街道を逸れて野営の準備をする。そして、買っていた鍋で肉と野菜で作ったスープを作ってエルフの奴隷の口元にゆっくりと流し込んで食べさせる。


「・・・」


 エルフの奴隷はゆっくりとだがそれを嚥下していく。


「流石に、実験までに少しでも体力を回復して貰わないとね。初めての魔法だからどういった事が起きるのか分からないし」


 僕のそんな独り言にエルフの奴隷はゆっくりと顔を上げる。その顔に怯えているのが見えた。


「ああ、そんな顔をしないでね。流石に死ぬような実験はしないよ。ただ、まあ、誰も使った事の無い魔法だからどうなるか分からないってだけだからって、それが怖いのか。まあ、諦めて君は僕の奴隷なんだからね。だから、最後までちゃんと食べてね」


 全てを諦めたような顔でエルフの奴隷がスープを食べていく。


 食べ終わるとそのまま、エルフの奴隷は眠りについた。


 僕は《月魔法夜のとばり》を使いその寝顔を見る。火で焼かれたのだろうひどい顔をしている。しかも、足は切り落とされ、片手は無く耳も片方が無い。子爵は嗜虐的だと聞いていたがこれは予想以上にひどいと思う。


「そのおかげで君を買えたんだけどね。君は僕の奴隷なんだから僕を裏切らないでね」


 エルフの奴隷は静かに寝息を立てて寝ていた。その髪をそっと撫でる。


「さて、僕も寝るかな」


 そうして、僕も毛布をかぶって眠る。

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