第35話
朝起きて僕は中心都市へと向かって町を出る。
中心都市へ向かっている間も沢山の騎士とすれ違う。少し前に見た騎士とは鎧が違うことから今いるオルベルク子爵領の騎士とは違うところからの応援だろう。国として、貴族としての面子が大事なため反乱を起こした奴隷とその協力者を捕らえるのに躍起になっているのだろう。
(まあ、僕には関係無いですけどね。これが、今から行くオルベルク子爵領で同じようなのが起こったら困るけどね)
そうして、4日程街道を進んで中心都市オルベルクに着いた。
(とりあえず、ここでの目当ては実験用のエルフ奴隷かな。後は自由都市に居を構えたいね。何処かに長期滞在出来るところを作らないとね。出来れば、自由都市に定住できれば良いのだけれど)
そして、僕は門を抜けて中心都市オルベルクに入っていった。
(とりあえず、宿に泊まりますかね。目当ての奴隷がいれば良いのですが)
そうして、宿に向かって行く。宿では奴隷の女性が受け付けをしていた。
「宿に泊まりたいのですか?それでしたら、1泊でしたら大銀貨3枚です。食事が必要でしたら朝と夕食が付きまいて大銀貨5枚頂きます」
「分かりました。では、食事付きで2泊お願いします」
「それでしたら、大銀貨10枚になります」
そして、僕は大銀貨10枚を渡す。
「では、お部屋の鍵をお渡しします。ご利用ありがとうございます」
奴隷の受け付けのお姉さんは淡々と鍵を渡してくれた。感情など無いように・・・
(なるほどね。奴隷なら賃金など必要ないから簡単な受け付けをさせているのかな)
僕は部屋に入りそのまま、ベッドに腰を下ろす。
(さて、とりあえず、奴隷商に行く前に自由都市について調べようかな。結構距離はありそうだけど)
そうして、僕は冒険者ギルドに向かった。全ての冒険者ギルドでは飲食が出来るようになっている。さらには他の町についての情報なども見つかるかも知れないからだ。
冒険者ギルドに入ると数人の冒険者が昼間からお酒を飲んでいた。僕はその人たちに近づき自由都市マルンの事を聞く。
「自由都市マルンだあ、あそこは面倒だぞ。入るための金は高いし、物の値段も高いらしいぜ、あそこのダンジョンは稼げるらしいがダンジョンのモンスターは強いらしくてな、低ランクの冒険者じゃあ1層でも無理らしいぜ」
「ああ、ただ、一つのダンジョンは生活ダンジョンらしいけどな。その生活ダンジョンは危険が無いために冒険者は入れない決まりらしいぜ。冒険者は残りの2つのダンジョンしか入れなくてそれも魔物は強いらしい」
「行くなら、自由都市マルンじゃなくてゼイル侯爵領かな。あそこのダンジョンは聖霊のダンジョンだからな。そこそこの難易度らしいぜ。まあ、あそこの聖武具はこの国の近衛隊長が持っているから手に入らないけど聖霊の加護は持っているだけで恩恵はあるからな」
「なるほど。ありがとうございます。すいません、この人達にお酒を1杯おごってください。僕がお金を出しますので」
そう言って。僕は受け付けに金貨1枚を置く。
「お、兄ちゃん分かっているね。まあ、参考になったかは知らないけどダンジョンに行くならパーティーを組んだ方が良いぜ。まあ、ダンジョンがある所ならパーティー募集はあるからな。最初は誰かの
パーティーに入れて貰えよ」
「ありがとうございます」
そうして、僕はギルドを後にする。
(それにしても聖霊のダンジョンか。まあ、僕はフォルティナ様の加護があるからいらないけどね)
この世界には聖霊のダンジョンと呼ばれるダンジョンがいくつかある。その聖霊のダンジョンでは聖武具、聖剣やら聖槍ちいった物が一度だけ手に入るがその時に一緒に聖霊から加護を授けられる。神具は持ち主が亡くなれば消えて神の元に帰るが、聖武具はその場に残り、その聖霊の加護をもっている他の者が手に取ればそのまま聖武具の主となる。因みに、聖霊も意思を持っていて色々な姿を持っている。動物だったり人型だったりしていて会話も出来るのだ。
聖武具は強力な武器で、神具ほどでは無いが身体能力強化が付与されているため基本的にそのダンジョンのある国がそのまま使用していることが多い。まれに、冒険者が初踏破したダンジョンが聖霊のダンジョンだったということもある。そのために、冒険者が持っていることもある。
(僕じゃ無くて買った奴隷の人に聖霊の加護を授けて貰うかな)
僕はギルドで言われていたゼイル侯爵領の位置を調べる。ゼイル侯爵領はこの国の王都に比較的近い場所にあるらしい。自由都市はこの国の端のファールン王国との国境にあるため距離的には近くは無い。それでも、聖霊の加護はそれだけでも恩恵があるため行く価値はあると思い、次の場所はゼイル侯爵領へと決めた。
(その前に奴隷を買わないとね。実験はしておかないとね)
そうして、冒険者ギルドを後にして奴隷商へと向かうのだった。