第34話
僕がオニュクの町に向かって帰って1日が経ちそして、2日目の朝方に顔を隠した6人もの男達が剣や斧を構えて道を塞いだ。
「よお、兄ちゃん。ここを通りたかったら兄ちゃんが持っている魔法袋をよこしな!」
典型的な盗賊のような事を頭目っぽい男が言う。
「えっと、何処の誰か知りませんがお断りします」
「兄ちゃん、おとなしく渡せば死なずにすむぜ」
「こういう展開も物語としては面白いのかも知れませんが実際に合うと面倒っていうのが先に来るなー」
「兄ちゃんちょっと、腕が立つからってこの人数に勝てると思っているのか?」
「そうそう、おとなしく渡せば苦しまずに殺してやるぜ」
右隣の男が言う。
(いや、結局殺すのか)
「おい、言うなよな。せっかく助かるかも知れないっていう希望から地獄にたたき落とすその表情が見れないじゃないか」
「あ、すいやせん、頭」
(ああ、そんなのが好きなのか。面倒だから魔法で片づけるかな。お金も無いだろうし)
僕が右手の手の平を相手に向ける。
「お、やる気か兄ちゃんこちとら名の知れた盗賊団だぞ」
盗賊の男達が頭目を中心に集まる。
「我等、弱いと思われる者たちを中心に・・・」
(うん、最低だね。僕って弱く見られたのかな?)
「その荷物を奪ってその日暮らし・・・」
(その荷物をどうやって売っているんだろう)
「しかし、いずれは王国一の盗賊団を目指す者たち」
(それは、無理じゃ無いかな?・・・もう、いいや)
「そう我等は・・・」
周りの喋っていない男達は何故か花びらなどをせっせと振りまいている。
「うるさいですよ。《地魔法グランドホール》」
僕が魔法を使うと盗賊達の足元に大きな穴が突然出来る。
「「「「『毒蛇の・・・』うぉぉぉーーーー」」」」
最後まで言うことが出来ずに盗賊達が穴に落ちていく。穴の深さは10メートルほどあり、下を覗くと盗賊達が倒れているのが見えた。ただ、皆動いているので死んではいないようだ。
「名乗りの時に攻撃するのは盗賊団相手とは言えあんまりだろうが-」
頭目の男が叫ぶ。それに周りの男達も同調して叫んでいたが僕は放置してその場を離れた。
「あ、待ってください。落ちた衝撃で足が折れて登れないかも」
僕は気にせず歩いて行く。
(まあ、傾斜はあるから登れるでしょう。何か関わりたくないし)
そして、オニュクの町を目指して歩いて行く。
それ以降は盗賊などに会うことも無く無事に町に着きギルドに向かう。
「お帰りなさい。思ったより早く帰られたのですね。依頼は達成できましたか?」
僕は依頼達成の印がついた依頼書と魔法袋を出す。
「それでは、魔法袋の中身の方を確認してきますので少々お待ちください」
そして、受け付けのお姉さんが奥に入っていく。
それから、しばらくして戻ってきた。
「はい、ビックブル4匹を確認いたしましたので依頼達成になります。それでは、こちらが報酬になります」
僕は報酬として金貨1枚を受け取る。
そして、宿に泊まって明日に備える。明日には領主の治める中心都市に行くつもりだ。宿に併設してある酒場で中心都市について聞く。
「中心都市だぁ、まあ、綺麗な町ではあるな。治安は悪くは無い。ただ、冒険者として稼ぐにはいまいちだな」
「冒険者として稼げるとしたらダンジョンが一番でしょうからね」
「ああ、一番稼げるのはファールン王国との国境にある。自由都市マルンだな。あそこは周りにダンジョンが三つもある」
「なんで、自由都市になっているんですか?」
おじさんがエールを飲み干し教えてくれる。
「昔、この国とファールン王国がその自由都市を巡って争っていてな。ダンジョンが3つもあるから稼げるからな。何度もぶつかり合った。そのたびにかなりの犠牲者が出てな。その結果どちらにも属さない自由都市が出来たってわけだ。どちらの国もあそこでは貴族であるっていう肩書きは意味をなさない。もし、貴族の名前で好きに振る舞おうとしたら袋だたきになるって話だぜ。本当かどうかは知らないけどな」
「入るのにはどうしたら良いんですかね?ダンジョンに行きたいんですけど」
「入るのは自由だぞ、ただし、入ってきた側の国には自由に行き来出来るがもう一つの国に入るには検査が入るらしいがな。入ってきたときに入ってきた側の国の証明書が渡されるらしい」
「なるほど、ありがとうございます」
「おう、頑張れよ。ダンジョンの中は自己責任だからな。罠も色々なのがある。一人だと危ないから誰かとパーティーを組んでから入れよ」
「分かりました」
僕はおじさんにお礼を言って部屋へと戻っていく。
「当分はその自由都市を目指して頑張りますか」
そして、僕はベッドで眠りについた。