第33話
ブルーメ村向けて出発した僕は道中を順調に進んで行った。夜になり、休むときは少し道を外し月の女神スライナ様より貰った《月魔法夜のとばり》を使い身体を休める。そうして、朝日が完全に上る前に出発する。
そうして、2日かけてブルーメ村に着いた。そして、村に入って近くにいた村民に声をかける。
「すいません、ギルドの依頼を受けてビックブル退治に来た者ですけど村長はおられますか?」
僕はギルドの依頼書と冒険者証を見せる。
「ああ、冒険者の人ですね。村長でしたら村の中心にある大きな建物の集会場に今はいると思いますよ」
「ありがとうございます」
僕は頭を下げて言われた集会場に向かう。
「へえ、あんな礼儀正しい冒険者さんもいるんだね~」
村人は感心したようにつぶやくと仕事に向かって行った。
僕が集会場にたどり着きドアを開ける。
「すいません、村長さんはおられますか?」
そこでは、村長と数人の村の人が集会場の中心にある机で話し合っていた。話に夢中になっているのか僕の声は届いていないようだった。そして、僕はもう一度声をかける。
「すいません!」
その声にびっくりしたように話し合っていた人が全員僕の方に振り向いた。
「ん、そなたは誰じゃな?」
村長と思われる人が声をかけてくる。
「僕は冒険者ギルドから依頼を受けてきた冒険者です」
そう言って依頼書と冒険者証を見せる。村長は近くに来て依頼書と冒険者証を見る。
「おお、ビックブル退治を受けてくださった冒険者さんか。良く来てくれた。少し前よりこのブルーメ村の北側に少し行ったところにビックブルの群れが確認されてな。このままでは、村の農作物に被害が出ると冒険者ギルドに依頼したのじゃ」
「そうなんですね。その場所へは歩いてどれくらいかかりますか?」
「村の者が歩いて半日程行ったところで群れを発見して急いで村に知らせてくれたんじゃ」
「今は夕方ですから今からだと夜になってしまいますね。申し訳ないんですがこの村に泊まれるような所はありますか?」
村長が少し考え込む。
「家になると空いているところは無いのう。空いているとしたらこの集会場ぐらいしか無いがそれでも良いかのう?何、寝具は儂の所に余っているのがあるのでそれを届けさせよう」
「ありがとうございます。雨風がしのげるでとても助かります」
そうして、寝具を村長から借りて集会場の隅でその日は夜を明かした。そして、村長に退治に行く旨を伝えるために村長宅に寝具をもって向かう。扉をノックすると村長の娘さんらしき人がドアを開けてくれる。
「おはようございます。村長、寝具ありがとうございました」
「何と、わざわざ持ってきてくれたのか。後で、取りに行かせた物をすまぬな。それで、これから退治に向かってくれるのかのう?」
「はい、これから早速向かおうと思います。退治したブックブルは2頭はこの村に渡したらよろしいですね」
「うむ、それで頼む。そして、出来れば退治は5、6頭ぐらいで頼む。見かけたのは10頭ぐらいらしいのだが、あのビックブルは数が減ってくると奥に逃げて行く。そして、また数を増やして村の近くに来る。儂等はそれを定期的に狩ってその肉や角等を売っておる。ただ、儂等の中にビックブルを退治できる者がいないので冒険者ギルドに依頼しておるのじゃ。そうすれば、町にも定期的にビックブルの肉等が入るからのう。じゃから、全滅だけはさせんでくれぬか」
「なるほど、分かりました。では、5頭ぐらい狩って来ます」
「うむ、すまぬな。これも村のためでもあるのじゃ」
「では、今から向かいます」
そうして、僕は村の北側から進んで行きビックブルがいるという場所に向かう。
向かう途中で森の中入る。森の中にも人が一人通れるぐらいの道がありその中を進んで行くとオークが三匹周辺を見回しながら歩いているのが見える。僕は木の陰に身を隠しそれを観察する。
(オークは退治の対象じゃ無いから、その魔石や肉は貰えるよね)
そして、僕はミスリルの剣を握ると木に身を隠しながら近づいていく。そして、十分近づいてから1体の首を切り落としそのまま、次のオークに向かう。オークは仲間を倒されたことに怒ったのか大きな棍棒を振り上げながら近づいてくる。
「《地魔法ピットフォール》」
足元に落とし穴を作り1体を転ばせる。そして、向かって来ていたもう1体の棍棒を避けてその足を切りつける。足を怪我したことにより転倒したオークの首を切り落とし、落とし穴にはまって転んだ残った1体の首も難なく落とす。
(うん、オークなら簡単に倒せるようになったね。何処かに死の森にいたグリフォン達のような強敵はいないのかな。やっぱり、ダンジョンに行かないと無理かな?今度この国のダンジョンの情報を集めてみよう)
そんなことを考えながらオークを解体していく。オークを解体してから依頼のあったビックブルのいたところに向かう。
そうして、しばらく歩いて行くと大きな湖についた。そして、反対側の水辺にビックブルと思われる群れが10頭ぐらいいるのが見えた。
僕は慎重に木の陰に隠れるようにして近づいていく。ビックブルはのんきに水辺に生えた草などを食べていた。僕が倒すべき5匹を決めて魔法を生成する。
「《水魔法アイスメイク》」
そして、その5匹の上空に氷の刃を作りそれをビックブルの首に落としその命を刈り取る。そして、僕が姿を現し剣を構えると残ったビックブルの内1匹が蹄を地面に何度も叩き僕にその大きな角を向ける。残ったビックブルもこちらに向き直る。そして、蹄を地面に叩いていた1匹が僕に突進してくる。僕はそれを軽く避けてその首を剣で半分ほど切る。そして、ビックブルは走った勢いのまま横倒しに大きな音を立てて倒れる。
それを見て、残ったビックブル達は僕とは反対方向の森の奥の方へと走り去っていく。
(最初の5匹の時に逃げると思ったけど、まさか向かってくるとは思わなかったな。まあ、でも、6匹ぐらいなら大丈夫かな?)
僕は退治したビックブルの死体を魔法袋に入れてブルーメ村に帰るのだった。
僕がブルーメ村にたどり着き村長に6匹のビックブルを退治したことを報告する。
「ふむ、それで奥には6匹ほど逃げて行ったのじゃな。うむ、それだけ逃げたのなら大丈夫じゃろう。これは依頼達成として良いだろう。では、依頼書を出してくれんかのぅ」
そして、僕が出した依頼書に達成したことを示す印を書いてくれた。
僕は村でまた1泊させて貰いオニュクの町に向かって行った。