第32話
僕は3日ほどかけて隣のオルベルク子爵領へと入った。そうして、オルベルク子爵領に入って1日経ってから町にたどり着いた。
そこで、町に入るために門に並んだ。ここに来るまでにベルン伯爵領へと向かう騎士の集団を何度か見かけた。奴隷の反乱により領主の家族が殺されたことにより混乱しているベルン伯爵領の治安維持と奴隷達の捜索を兼ねているのだろう。そんな反乱を成功させては貴族としてだけでは無く国としての威厳に関わってくるため騎士達も慌ただしく向かっていた。
僕は何食わぬ顔で検問をするために門に並ぶ。
「冒険者か、ベルン伯爵領から来たのか?そういえば、ベルン伯爵領では奴隷の反乱が起きていてその奴隷が北側から出て行ったらしいな」
そんな風に門番の人が言っていて僕が驚いた。
「あれ、ベルンブルを出るときに門番の人が奴隷達は南側から出たと言っていましたけど、北側から出ていたのですか?」
それを聞いていた門番が
「ふむ、ちゃんと門番から聞いていたのなら奴隷どもの仲間では無いようだな。すまないな、あの反乱で奴隷の仲間がベルンブルの町に潜んでいたらしくてな、そんな者を入れるわけにはいかないから試させてもらったんだ。よし、通って良いぞ」
「なるほど、聞いていた話と違っていたのでびっくりしましたがそういった理由があったんですね」
「そういうことだ。さあ、行った行った。手間が増えたんで急がないと列が終わらないからな」
「あ、すいません」
僕は頭を下げてその町、オニュクの町に入っていった。
(しかし、オニュクの町ってお肉の町って事?)
町に入りまず始めに冒険者ギルドへと向かって行った。
冒険者ギルドに入ると数人の冒険者が昼間からお酒を飲んでいた。僕は気にせず受け付けの近くの提示板に向かう。この提示板に町の人や周辺の村からの依頼が載っているのだ。一応、僕も冒険者なので依頼確認してみるとある村の近くに現れたオークを退治して欲しいとか村に現れたビックボアを退治して欲しいとか、ビックブルを退治して欲しいとかある。見事に食肉用になる魔物や動物ばかりの依頼が多い。
(だから、オニュクの町なんて呼び名が付けられたのかな?)
そして、僕はビックブルの退治依頼を受けることにして受け付けに持っていく。
「いらっしゃいませ、本日は依頼を受け付けて頂きありがとうございます。依頼の説明をさせて頂きますと、この町の北側の門を出て2日ほど行った先にあるブルーメと言う村に出たビックブルの退治になります。こちらの依頼は4日ほど前に受けた依頼でして、まだどなたも受けられていない依頼になります。ビックブルは四匹ほど確認取れたそうです。今回はそのビックブルを四匹以上退治してほしいとのことです。ここまでは良いですか?」
僕は頷く
「では、続けさせて頂きます。退治したビックブルは二匹をその村に渡してください。そして、残りの二匹以上を当ギルドに持ち帰ってください。それで、依頼達成となります。もちろん、ブルーメ村にも手紙鳥で確認を取ります。そして、肉を持ち帰るために魔法袋を貸し出します。もし、依頼を達成せずに魔法袋を持ち逃げした場合は冒険者ギルドからの追放兼奴隷落ちが待っています。逃げても指名手配されて全ての冒険者に狙われますのでやらない方が良いと思いますよ」
「分かりました。流石にギルドの物を取ることはしませんし、依頼もちゃんとやりますよ。冒険者は信用が無くなったらおしまいですから」
「そのお心があれば大丈夫ですね。では、魔法袋をお持ちしますね」
そう言って、受け付けのお姉さんが奥に入っていく。そして、しばらくして戻ってきた。
「こちらが魔法袋になります。依頼は本日より2週間以内で達成してください。それを越えた場合は依頼料は支払われないと思ってください。それでは、気をつけて行ってくださいね。たとえ動物とはいえビックブルは人より大きいのでその突進をまともに受けてしまえば命に関わりますから」
「はい、心配してくれてありがとうございます。気をつけて行って来ますね」
そうして、僕は宿を取ることも無く北門に向かう。そして、北門の門番の人に依頼書と冒険者証を見せる。
「北側の道は時々ゴブリンも出るらしいが、まあ、ビックブル退治を受ける兄ちゃんには大丈夫か。でも、気をつけろよ。油断したらたとえ強者でも不覚を取ることがある。思わぬ怪我をしたらその怪我が元で死ぬこともあるからな」
「はい、分かっています」
「では、無事に依頼をこなしてくれよな。これは、ブルーメ村に取って絶対に退治してもらいたい依頼なんだからな」
僕は頷くとブルーメ村に向けて出発するのだった。