閑話1
それは、フレイが神の試練のダンジョンに入る頃の話である。フレイがダンジョンの奥にに入ったときに神々が住まう場所では試練のダンジョンに人が入って来た事を知らせる鐘が鳴った。
「うん、誰かダンジョンに入ってきたな。しかも、中心のダンジョンに入ってきたなんて何千年ぶりだ?」
ちょうど、鐘の近くにいた海の神ライナルがその音に気づいた。そして、創造神ソルテールに連絡を入れて、人の住まう世界を見る水鏡に五大神が集う。
「ほう、試練のダンジョンに人は来るのは久しぶりだな。しかも、中心のダンジョンとは今度の挑戦者はクリアすることが出来るのかな?前回はもう一歩の所で全滅したからなー」
創造神ソルテールが楽しそうに水鏡を見ながら言う。
「まあ、普通の人間がグランに勝つなんて生半可な努力では無理ですからね。しかし、今回は一人での挑戦ですか?今回も無理ですかね?」
太陽神スレイルが諦めたように言う。
「三人ともお茶をお持ちしましたよ。流石に直ぐには最深部につくことは無いでしょうから。のんびり待ちましょう。今回の子は強いのかしら?」
大地母神フォルティナがお茶を三人に配る。因みに月の神スライナは自分のベッドで寝ていた。
「あらあら、まだ子供じゃないですか?こんな子供でグランちゃんに勝てるのかしら?」
「最深部まで到着できるかどうか分からんな。しばらくは交代で見よう。途中で死んでしまうかもしれないが」
創造神ソルテールがそう言い席を立つ。そして、その場に海の神ライナルが残り水鏡を楽しそうに見るのだった。
それから、日にちが経ちフレイは最深部に近づいてきたときには五大神全員で見守るようになった。
「ほう、魔法も剣も使えるのは出自のせいかな。しかし、過去を見てみたがハイエルフのあの排他的な習性はどうにかならん物かな」
「もう、そこはどうしようも無いかと長命な種族って閉鎖的になるってよく聞きますしね」
「他の種族はまだ、他の種族と交流はするのにね。どうして、こうなったのか?」
「いや、フォルティナが生み出した最初の人類なんだが、そのお前が分からなかったら誰も分からんだろう」
「なら、長命っていうのが理由で間違いないのかしら?まあ、そのせいか人口がもう二百人も残ってないんですけどね。このままだと滅びちゃいそうね」
「それは、そいつらの運命だろう。仕方ない」
「お、最深部についたみたいだぞ。もしかしてグランに挑戦するのか?」
「そうみたいですね。ライナルはどちらが勝つと思いますか?」
「ん、私か。うーむ、ならこの人間にしようかな。グランも限界だろうしな。そう言うスレイルはどっちだ?」
「僕はグランが勝つと思いますけどね。流石に一人の人間に負けるわけにもいかないでしょう」
「わしは人間の方だと思うがな。そろそろグランも楽になりたいだろう。決まり事とはいえ三千年以上傷ついた状態でいるのは酷だからな。最後は手を緩めて負けそうな気がする」
「スライナはどっちが勝つと思いますか?」
「どっちでも良いけど、人間が勝ったら出番があるかも知れないんだよね?」
「そうですね。今回は男の子ですから女神である、私か貴方が加護を与えることになるわね。まあ、どっちの神具を手に取るか分からないですけどね」
「出来ればフォルティナの神具を手に取って欲しい」
「しかし、この人間は凄いな。魔法も剣もここまで使えるとはな。まあ、一人で生きていくためには必要だったのかも知れないがな」
そうして、フレイの剣が皇龍神グランバハムートの喉に突き刺さる。
「まさか、本当に倒せるとはな。面白い人間が現れたな。ふむ」
「また、何か悪巧みをしていませんか?」
「え、いや、そんなことは無いぞ。それよりも、あの人間の手に取った神具はフォルティナの神具ではないのか」
「まったく、またそうやって誤魔化すのだから、では、行ってきますね。初めて加護を与えるから緊張しますね」
そうして、転移するフォルティナを見送ったソルテールが他の四人を見て言う。
「さて、ではお前達も準備しろ。一番最初の中心のダンジョンの攻略者だからな。皆でちょっとした加護を与えようじゃないか」
「そんなこと考えていたのか。後でフォルティナに怒られるぞ。でも、良いかもしれないな。私もあの人間の行く末を見てみたいからな」
「さすがはライナルだ。賛同してくれると思っていた」
「僕も構いませんよ。あの人間がこの先どうなるのか楽しみですから。スライナも行くんだよ。せっかくだから我々五人全ての加護を与えるのも面白いかもね」
「はいはい、どうせ断っても連れて行くんでしょ。なら、最初から着いて行くわよ。流石にかっこ悪い登場はしたくないから」
「よし、では皆賛同したと言うことで良いな。では、行こうか」
そうして、四人も転移していく。