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第31話

 奴隷商の館にやって来た。僕は早速、中に入っていく。


「いらっしゃいませ。本日はどういった奴隷をご所望でしょうか?」


 奴隷商の主と思われる男性が僕に声をかけてくる。


「エルフの奴隷が欲しいんですが、生きてさえいればたとえ手足が無くても良いのですがいますか?」


 奴隷商の主が怪訝そうな顔をする。本来、そう言った奴隷は利用価値が少なくあっても魔物などに対する囮ぐらいしか無い。事実、魔物討伐の際にそういった奴隷を囮として使うことがある。しかし、今はそんな討伐依頼がされてもいないはずである。奴隷商の主が怪訝そうな顔をするのは当たり前だった。


「あいにくと、当商館ではそういったエルフの奴隷はおりませんな。最近はエルフの奴隷の入荷がありましたがご希望に添った奴隷はおりません。どうですかな、五体満足の器量よしのエルフ奴隷を買われては?」


「いや、手持ちがあまりありませんから。それに、そんなエルフ奴隷でしたら始まりの値段はいくらぐらいからしますか?」


「最低でも金貨1000枚からになりますな。エルフの奴隷は若い時が長続きするために利用価値が高いのです」


「やっぱり、それぐらいはしますよね。出来れば金貨50枚ぐらいで欲しいんですが」


 奴隷商の主が首を横に振る。


「流石に、そんな値段では売れませんよ」


「なので、手足が無くても、ただ生きているだけでも良いんですよね。そうすれば実験は出来るのですから」


 奴隷商の主が何かを察したように言う。


「確かにそういった奴隷なら金貨数枚で売りますけどね。では、隣の領地のオルベルク子爵領に行かれてはどうですかな? あそこの領主は、ちょっと過激と言われておりましてな。もしかしたら、ご希望のエルフが見つかるかも知れませんよ」


「隣の領地ですか。まあ、それならまだ、距離的に大丈夫かな。分かりました。とりあえず、行ってみたいと思います。教えて頂きありがとうございます」


 僕が頭を下げて商館を出ようとすると


「ちょっと、待ってください。そういった手足の無い奴隷を買うのはよろしいですけどその面倒はその奴隷の主人が見ないといけません。食事は最低でも朝と夜の2回、寝るところの確保、と最低限その生活をちゃんと見ないといけませんよ」


「大丈夫です。ちゃんと食事も睡眠もとってもらいますから、それでは、失礼します」


 僕は商館を出る。次の目的地をオルベルク子爵領に決めて宿に戻るのだった。


その日の夜に周辺が騒がしくなった。どうしたのかと受け付けに降りて聞いてみる。


「どうやら、領主の館で奴隷達の反乱が起きたらしい。領主の館では領主の家族や使用人達が殺されているらしい」


「領主の所には兵がいるのでは無いですか?」


「そのはずなんだが、一体何があったのやら、外には出歩かない方が良いぞ。こんな時に外を歩いていると警備隊の奴らに不審者扱いされて捕まるからな」


「分かりました。では、部屋で休んでいます。朝になれば収まっているでしょうし」


 そうして、部屋に戻りベッドに横になる。


(僕が領主を殺したから奴隷が解放されて反乱を起こしたのかな? 反乱を起こしてその後はどうするんだろう。まあ、僕には関係無いから明日にはオルベルク子爵領に向けて出発するかな)


 そうして、次の朝には驚きの話を聞くことになる。


 奴隷達の反乱は鎮圧されるどころか南にあった門を突破されて街道に逃げて行ったらしい。南側の門は封鎖されて通ることが出来なくなっているらしい。


 オルベルク子爵領へは西側の門を抜けた先にあるのでそちらの方は封鎖はされていないみたいだが、奴隷達が盗賊になっている可能性があるため注意喚起はされていた。


 僕は自分には関係無いと思い西側の門に行ったが何故か門兵に止められた。前日に何処の宿に泊まっていたか昨日はどういった行動をしていたのか何度も聞かれた。そして、何故オルベルク子爵領へ向かうのかも聞かれた。


「えっと、僕はこの実験用にエルフの生き血が欲しくて安いエルフを求めて町を歩いています。そして、ここの奴隷商にオルベルク子爵領なら手に入るかも知れないと言われて子爵領に行きたいのです」


 僕は本屋で買った錬金術大全を見せて門兵に説明する。


「ああ、その実験か有名だな。成功しないことでも有名だが今でも成功すると思って実験している研究者はいるな。確かに、オルベルク子爵領なら安く手に入る可能性はあるな」


 それでも、どうするか考えていた門兵に一人の兵士がやって来た。僕に色々聞いているときに町に入って行った兵士だ。


「ん、そうか、なら大丈夫か。君、待たせたな、門を通っても良いぞ。昨日の反乱に加担していないことが確認取れたからな」


「え、奴隷だけじゃなくて領民の中に反乱に手を貸した人がいるんですか?」


 門兵が渋い顔をして言う。


「ああ、どうやら、町の中に奴隷の仲間が潜んでいたらしくてな。どうも、奴隷にされた仲間を助けに潜んでいたらしい。そして、奴隷達が反乱を起こしたときに町中で火をおこし、警備隊を引きつけておいて一緒に南側の門を突破して逃げたらしい」


「それは、かなり綿密に計画していますね。それで、昨夜は騒がしかったわけだ」


「君がそれに加担していないことが分かったので通って良いと言うわけだ」


「なるほど、分かりました。ただ、道中は気をつけた方が良さそうですね」


「そうだな。魔物や盗賊などもいるからな。気をつけて行けよ」


「分かりました」


 そうして、僕はオルベルク子爵領向けて出発するのだった。

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