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第26話

「そんなことがあるものか。フレイが他国のスパイだなんて」


 フレイより一足早く戻って来たアンソニーさんが村長から話を聞き起こっていた。


「儂等もその話を信じているわけでは無いわ。しかし、領主様が直々に問答されると言うことはスパイとして決められるだろう。あちらは貴族だ、あちらの言ったことが正しくなる。儂等ではどうすることも出来ん。それに異を唱えれば村の者は殺されるかもしれん。もう、どうしようも無いんじゃ」


「なんてことだ。ところで、フレイになんて言うんだ」


「言えるわけが無い。それに、フレイは今度冒険者になってこの村を出て行くしの。今度の税の支払いの時に、そのまま冒険者になる予定だったみたいじゃがこうなっては領主様が何を言ってくるか」


「なら、フレイには何も言わずに税を払いに行って、領主様の問答を受けろというのか。あの子、殺されるぞ」


「だからといってあの子を連れ行かなければこの村がひどい目に遭うぞ、五年前のあの村の事を忘れたのか?」


「それも、分かっているが」


 アンソニーさんが沈痛な顔をしてうつむく。


 五年前にある村が不作で税を払えなかった村があった。それを弁明しに行ったその村の者は殺され、残っていた村人は殺されるか奴隷へとされてしまったのだ。


「あの時の村とは状況が違う。しかし、この村に使いが来たのじゃ。もし、フレイを逃がしでもしたらそれを口実にこの村を滅ぼすぐらいはするじゃろう。ここは、申し訳ないがフレイに犠牲になって貰うしかないんじゃ」


「くそっ、それしか村を守る手段は無いというのか」


 アンソニーさんが悔しそうに言う。


「フレイには言うな。申し訳ないがあの子は村の外から来たの間違いないからのう。アンソニーも悔しいだろうが飲み込んで貰えんかのう。流石に村人全員を犠牲にするわけにはいかん」


「ああ、分かったよ村長」




 僕が狩りから村に帰ってみると何か何処か余所余所しい態度で皆が接してきた。何かあったのか聞いてみても容量を得なかった。


 その夜、アンソニーさんが家を訪ねてきた。


「よお、フレイ、そういえばずっと聞いてなかったんだがお前さん、母親とかはいないのか? 父親の話は聞いたが母親の話は聞いていなかったからな」


「僕の母親ですか。いたみたいですけど僕が生まれてすぐに無くなったみたいでして、僕も覚えていないんですよね。なので、どんな人だったのかは分からないです」


(ま、ここまでが考えた両親像だけどね。何かトラブルでもあったのかな? こんな事を聞いてくるなんて)


「あ、そうだったのか。それはすまん、それは話せないよな。そうか、顔も知らなかったら話せないよな。ああ、今のは忘れてくれ、それじゃあ、明日も狩りを狩りに行かないといけないから帰るわ」


 そう言ってアンソニーさんが帰って行く。


 そうして、何事も無く時が過ぎて行く。そうして、税を払いに行く時期になった。


 僕とアンソニーさんがいつも通り準備をして持っていく。違いとしては僕が町で冒険者を登録をしてそのまま町で冒険者として生活することだろうか。なので、2年間過ごした家を掃除しているとアンソニーさんがやって来た。


「そういえば、フレイは今度冒険者になるんだったな。2年ぐらいしかいなかったのに、ずっとこの村にいたように思っていたよ」


 アンソニーさんが感慨深そうに言う。


「儂がオークに襲われて木の上に逃げた所をフレイが助けてくれたのがこの村に来るきっかけだったな」


「そうですね。アンソニーさんが村に誘ってくれたおかげで無事に過ごせました。アンソニーさんありがとうございました」


「よせよせ、こちらこそ助けて貰った上に魔法袋や狩りで助けられているんだ。こちらこそ、ありがとうな。冒険者になってもこの村はもうお前の故郷みたいなもんなんだ。いつでも、帰って来てもいいからな


 アンソニーさんが照れたように言う。


「ありがとうございます。また、よらせて貰います」


「明日、出発するから今日はゆっくり身体を休めておけよ」


 そう言って、アンソニーさんが帰って行く。


 僕は、掃除を終えてから明日に備えて眠りにつくのだった。


 そして、朝になった。

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