第19話
朝になり置いてあった桶に魔法で水を生み出してから顔を洗う。そして、朝ご飯を食べて家の前で剣の素振りをしているとアンソニーさんがやって来た。
「お、剣の素振りか?まあ、何事も毎日やっていれば上達するからな。ところで、この後、村の外にボアを狩りに行こうと思うのだが大丈夫か?」
「はい、準備は出来ていますので大丈夫です」
僕がそう返事をすると
「うむ、では今から家で準備してくるので待っていてくれ」
そう言って、アンソニーさんが家に戻っていった。
それから十分ほどしてからアンソニーさんがやってくる。
「では、行くとしようか。前回は死の森の方に向かって行ったのが不味かったと思うから村の西の方に行こうと思う」
そうして、僕とアンソニーさんが村を出て西の方に向かう。所々でゴブリン等が出てきたがそれはアンソニーさんが弓で射貫いて仕留めていた。アンソニーさんが村で一番の狩人という通りその腕は凄かった。
そうして、歩いて三〇分ほどすると小さな泉に着いた。そこには親子と思われるボアが水を飲んでいた。
「お、これは運がいいな。こんな早々に見つかるなんてな。よし、じゃあ、儂が最初にお手本を見せるから見ておけよ」
そう言うとアンソニーさんが身体を低くし茂みに身を隠しながらボアへと近付いていく。
そうして、十分な距離になったのか弓を放ち親のボアの目を射貫くと、そのままボアの首にナイフを突き刺した。そうして、大きなボアが大きな音を立てて倒れていく。小さい子供のボアは森の中へを逃げて行ったがそちらの方は気にした様子が無かった。
「よしフレイ、このボアを魔法袋にしまって置いてくれ」
アンソニーさんが僕を呼んでそう言った。
「分かりました。ところで最初から子供のボアは狙っていなかったんですか?」
僕がボアを袋にしまいながら聞く。
「ああ、流石にあの大きさじゃ小さすぎるな。あれは、もう一年ほど経ってからじゃないと狩れないな。さて、後一匹ノルマがあるからな。それは、フレイが狩ってみるか。狩りの実力もみたいしな」
そう言って、僕に弓矢を渡してきた。僕はそれを受け取って、二人でボアのいそうな場所を探して歩いて行く。
そうして、森の奥に少し歩いて行くと今度はボアが一頭だけで鼻先で土を掘り餌となる物を食べていた。
「よし、ならアレをフレイ一人で狩ってくるんだ。儂は隠れて見ているからな」
僕は頷くと身体を茂みに隠し近付いていく。そして、生まれた村で叔父に教わったやり方をやることにした。
「《風魔法エンチャントウインド》」
矢に風の魔力を付与していく。そして、矢を放つ。
矢はボアの額に当たりそのまま頭蓋骨をも貫通してその命を絶った。
「……」
「……」
アンソニーさんが呆然としてみている。僕も予想以上の威力に言葉も出ない。
僕は何とかアンソニーさんの方にゆっくりと振り返る。
「あ、何かすいません、予想以上に威力があったみたいです…」
(そういえば、ソルテール様が魔力を増えるっていってたけど、もしかしてそのせい?)
僕はふとソルテール様が与えてくれた加護を思い出していた。
「あ、まあ、いいんじゃ無いか。重要な胴体は、まあ、無事だったんだからな。」
アンソニーさんがちょっと引いたように答える。
僕はとりあえず、ボアの死体を魔法袋にしまう。
「う~む、思った以上に強いな~フレイは、これは狩りはフレイに任せた方がいいかな。儂ももう年だしなあ…」
アンソニーさんがブツブツと独り言を言う。
「あのアンソニーおじさん、とりあえず、もう少し狩りますか? 思ったより早く見つかりましたから、まだ見つかるかも」
「あ、ああ、そうだな。まだそれ程経ってないからな。なら、もう少し狩るか」
アンソニーさんがはっとしたように言う。
そうして、昼を少し回ったぐらいでさらにボアを二頭狩りその日は村に戻ることにしたのだった。