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第177話

 セルシュ公国での盗賊団討伐を終えて、僕とカルラは家へと帰ってきた。家に着くとセシリアが家の玄関の前で待っていた。そのお腹が少し大きくなっているのが分かった。


「ご主人様、お帰りなさいませ」


 セシリアが笑顔で言ってきた。


「うん、ただいま、セシリア。所で、そのお腹なんだけど、どうしたの? カルラはセシリアは余り動かせな言っていたんだけど」


「カルラさん、ご主人様にはまだ言ってないの?」


「まあ、セシリア姉が自分で言いたいと思ったからね。ご主人様と会えたけど、流石に言えないかな」


 それを聞いてセシリアは嬉しそうにしていた。


「そうですか。では、とりあえず、家の中に入りましょう。ご主人様もカルラも疲れているでしょうから」


「ところで、セシリアはどうやって僕の帰りを知ったの? いつ帰る何て手紙も出してないけど」


「それは風魔法を使いました。ご主人様が帰ってくるの方向は分かっていましたから」


 聞くと、実はカルラが帰る日にちを大まかに伝えていたらしい。その日が近づいたときにセシリアは風魔法を使って僕の姿を確認していたという事だった。


 僕達は家の中に入り、食堂へと向かった。そこでメイアに入れて貰った紅茶を飲む。聞くと、フィーナはまだ紅茶を上手くは入れられないらしい。


「それで、ご主人様もカルラがさんが受けていたセルシュ公国の盗賊団の討伐依頼を受けていたって事ですか?」


「その依頼を受ける前に停まっていた町で盗賊団の襲撃に遭ってね。その時に、当時のリーダーを倒しちゃったものだから、絶対に参加して欲しいと言われてしまったよ」


「まあ、ご主人が参加してなかったら勝てなかったんじゃないかな。相手はかなり強力な鎧を持っていたし。あたいも直接見たわけじゃないけど、全身鎧を着ているのにあたいがストレングスアップを使ったと同じぐらいの動きをしていたみたいだし」


「そんな事が可能なんですか? 全身鎧って重いですよね」


「しかも、魔鉄じゃなく、魔鋼製だったね。かなり重いんじゃないかな」


 僕の魔鋼製と言った事で、偶々休みだったニルが驚いた顔をしていた。


「全てを魔鋼で作った場合、それだけで百キロが超えると思います。そんな状態で動けるとは思えませんが、何か仕掛けがあるのでしょうか?」


「おそらくだけど、錬金術を組み込んでいるんだろうね。町にある街灯は光魔法のライトが組み込んであって、それを魔石を使って発動させている。それと、同じようにストレングスアップの魔法が組み込んであるんじゃないかな。魔法を組み込むのってかなり難しいんだけどね。魔法は魔方陣でも発動できるらしいんだけどね」


「魔方陣って何?」


「僕も村にあった文献で見たことがあるぐらいだけど、人は自分の魔力で魔法を放つんだけど、魔方陣は魔法を封じておくことが出来るんだよ。ただし、その魔方陣の紋様も適当ではダメでちゃんとその魔法の紋様じゃないとダメなんだよね」


 魔方陣は紙に書いただけでは効果は発揮せず、それを専用の道具にセットして魔石と一緒に運用しなければ効果を発揮しない。ゴーレムは土に直接魔方陣を書き込み、その中央に魔石を置けばゴーレムとして起動される。


「ご主人はその魔方陣に関しては詳しいの?」


「いや、詳しくはないね。ハイエルフの村には魔道具は一つも無かったからね。魔道具を作る人も居なかったね。本だけはあったけど、それもかなり昔の本だったね。錬金術の本には少しだけ載っているけど、そこまで多くはないよ。基本はライトの魔法だね。後は家の守り用のゴーレムとか、砦等にある魔法無効化の魔道具だったりかな。他にも色々あるみたいだけど、その中にストレングスアップの魔方陣はなかったね」


「そうなると、その盗賊団がその鎧を何処で手に入れたのか気になりますね。そんな鎧を量産されるとこのファールン王国も危ないかも知れません」


「まあ、盗賊団が何処で手に入れたのかは流石に分からないよ。バルドラント王国が秘密裏に開発していたって事が有力かな。その盗賊団は元バルドラント王国の貴族の私兵や騎士だったみたいだからね」


 僕の言葉にファルナが考え込んでいる。


「もしくは、セルシュ公国が開発していた可能性もありますね。あそこは古代文明時代の王国の末裔を謳っています。そして、魔方陣はその古代文明時代の物です。セルシュ公国が一番研究しているでしょう。なので、そういった鎧を開発していてもおかしくはないですね」


「でも、盗賊団はセルシュ公国内を荒らし回っていたよ。セルシュ公国がそんな鎧を盗賊団に渡したりするかな?」


「ですが、セルシュ公国は討伐する為の軍隊を出していなかったんですよね? 怪しくないですか?」


 ファルナの意見にも納得出来るところはあった。自分の国の国民が攻撃されているのにセルシュ公国は騎士団を派遣していない。しかも、盗賊団に襲われたのはバルドラント王国だった所がほとんどである。


「まあ、その辺の事は僕らが考えても仕方ないよね。それよりも、セシリアの事を聞きたいんだけど、そのお腹はどうしたの?」


「やっと、気にかけて貰えました。実は私、その、子供が出来たんです」


「え…………」


 僕は驚いて固まる。ゆっくりとセシリアの言った言葉を頭の中で繰り返す。


(子供が出来たって言ったよね。それって、僕の子供だよね? ええ、どうしよう、どうすればいい?)


「えっと、僕との子供だよね?」


「当たり前です。ご主人様以外とは関係を持っていませんよ」


 話を聞くと、僕が生まれ故郷に向かった後にその事が分かったらしい。分かってからはダンジョン等には行かずに家で過ごしているとの事だった。


「いつ頃生まれるのかな? 楽しみだね」


「はい、楽しみです。それで、ご主人様、お父様の事は分かったのですか?」


「う、うん、分かったよ。危うく、ハイエルフの村と戦争になるところだったけどね」


「戦争って、ご主人は歓迎されるとは思わなかったけどそこまで危なかったのかい?」


「まあ、神剣があったから一方的だったけどね。そのお陰で知りたいことは知れたよ」


 僕の言葉に女性陣が静かになった。


「僕の父親は帝国の皇帝みたいだよ。今の皇帝は数年前に変わったみたいだから前皇帝になるかな」


「帝国の皇帝ですか。それはちょっと、予想外でしたね」


「これは他の人には言えないね。少し前までその帝国と戦っていたわけだし」


「フレイ様の年齢っていくつですか?」


 ファルナが僕の年齢を聞いてきた。どうしてそんな事を聞いてくるのか分からないが僕は答える。


「十六か十七かってところじゃ無いかな?」


「そうですか」


 ファルナが神妙な顔つきで悩み始める。僕はそれが少し気になったがそれよりはセシリアの方だ。


「子供、楽しみだね」


「ご主人様、ちゃんと名前考えておいて下さいね。父親になるんですからね」


「う、うん、分かった。考えておくよ」


 その夜は、セシリアと一緒に遅くまでベッドで話したのだった。

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