第174話
ハイエルフの村からの帰り道、来た時と一緒の道を取って帰る。最初に通ったときには盗賊団との戦闘に巻き込まれたのだが今回は無かった。セルシュ公国を出るときも問題も無く出国する事が出来た。そして、ファールン王国に無事入国することが出来た。
都市セレティグトに着いたその日は宿に泊まる事にした。着いたときにはすでに夕方になっていたので野宿するのも面倒だったのでそのまま泊まる事にしたのだ。そして、宿の食堂でご飯を食べているときに出入国を担当していた兵の人が僕の所へとやって来た。
「すまない、少し聞きたいことがあるのだが」
「何でしょうか?」
その兵は何故か恐縮していた。
「セルシュ公国に少し前に行っていた冒険者のフレイさんだね」
「そうです。何かあったのでしょうか?」
「セルシュ公国の冒険者ギルドからこちらの冒険者がその盗賊団のリーダーを討ち取った事へのお礼が届いていたんだ。で、名前も届いていたのでね。君だと思ったんだ。それでね……」
セルシュ公国のある町で遭遇した盗賊団の襲撃はギルドで受けた依頼であった為にこちらの冒険者ギルドへ連絡があったらしい。その冒険者が入国したらギルドに連絡を入れて欲しいとのことだった。
兵の人には明日ギルドに伺うという事を言ぅ。
「ああ、良かった。ギルドからどうしてもこの町で捕まえて欲しいと言われていてね。まだ宿にいてくれて良かった」
他の宿に泊まっていることも考慮してか数人の警備兵が探して廻っていたとの事だった。
次の日に言われたようにギルドへと向かう。
「あ、フレイさんですね。セルシュ公国の冒険者ギルドからお礼と追加の報酬が届けられています」
そう言われ、その報酬を受け取る。受け取るが、思った以上に量が多いのが気になる。
「あのフレイさん申し訳無いんですが、一つ依頼を受けて頂けないでしょうか?」
「どういった、依頼ですか?」
「セルシュ公国の盗賊団のリーダーはフレイさんが倒されたじゃないですか」
「そうですね。その後はどうなったのかは分かりませんけどね。統率された盗賊団でしたね。リーダーが倒されると一斉に逃げ出しましたから」
盗賊団と言うよりは軍隊に近いだろう。それ程までに統率されていた。
「最近、また動きが活発になってきたみたいです。そこで、ファールン王国側の冒険者の人達にも討伐を手伝って欲しいとの連絡が来ました。その時に、リーダーを倒したフレイさんは必ず連れてきて欲しいとの指名が入りまして」
「そうなんですか?」
「セルシュ公国の冒険者ギルドからは何も言われませんでしたか?」
僕は帰り道は余り町に寄らずに野宿ばかりしていた。町に停まると面倒ごとが起きるような気がしたからだ。野宿でも月魔法の夜のとばりがあるので襲われる心配が無いので安心して休めることが出来たのだ。
「早く戻りたくて町は素通りだったんですよね。なので、ギルドには寄ってなかったんです」
「そうだったんですね。それで、どうされますか? 冒険者ギルドとしては参加して頂けると助かるのですが」
受け付けのお姉さんが申し訳なさそうに言って来た。
「こちらからは僕だけが参加ですか?」
「いえ、ゼイル侯爵領にある聖霊のダンジョンに行く冒険者の方々と、自由都市マルンの冒険者の方達にお願いしていますね。ダンジョンに行けるぐらいの冒険者で無ければ今回の依頼は厳しいと判断しましたので」
「その冒険者の人達はいつ頃こちらに来られるのですか?」
「第一陣はすでにセルシュ公国の方へと向かいましたね。第二陣が明日こちらに到着される予定ですのでフレイさんはその時に一緒にセルシュ公国へと向かって下さい」
「分かりました」
結局、その盗賊団の討伐に参加することになりまた宿に戻る。出発は明日と言うことで宿の部屋を取った後に町に出て減ってしまっていた旅の道具を買っていく。
そして、朝になりギルドへと向かう。ギルドの中はかなりの人がいた。その中に何故かカルラがいた。
「あれ、ご主人どうしてここにいるの?」
「カルラこそ、一人なの? セシリア達は来てない?」
「うん、セシリア姉はちょっと無理が出来ないからね。来られなかったんだよ。フィーナは家の守りの為にお留守番だし、メイアは流石に元とはいえファールン王国の王族だからね、流石に他国に行くのは厳しいかもって事でお留守番だね。だから、一人でも冒険者を出して欲しいとギルドから言われたから仕方なくあたいが来たんだよ」
カルラと一緒に受け付けへと向かう。
「フレイさん、来てくれて良かったです。所でそちらの女性はパーティーメンバーですか?」
「そうですね。マルンの町にいたんですけど、あちらで依頼を受けたらしいですね。なので、一緒に行動したいんですけど良いですか?」
「大丈夫ですよ。ただ、フレイさんは一番危ないところを任せられるかも知れませんけど……」
「まあ、カルラがいるので大丈夫でしょう。彼女の守りは堅いですからね」
僕に褒められてかカルラが恥ずかしそうに頬をかく。
皆が揃ったということで僕達はセルシュ公国へと向かう。冒険者のまとめ役は僕では無く他の冒険者の人にお願いした。目的地は盗賊団が根城にしているらしいという、打ち捨てられた砦らしい。
セルシュ公国に入り、案内してくれる冒険者の人達と合流した。その冒険者の人達によると盗賊団は僕が戦った時よりも増えていて五千人程の規模になっているとのことだった。一度、セルシュ公国の冒険者だけで討伐隊を送ったのだが撤退してしまったとのことだった。どうやら、打ち捨てられていた砦の城壁を修復していて、さらには魔法無効化の魔道具も新しく設置されているらしい。そのために攻城戦の用意も装備も無いために撤退したとのことだった。
セルシュ公国の騎士団を内乱で減らすのを渋ったのか。公国からの援助は貰えなかったとの事だった。公国からは冒険者に依頼を出すので討伐して欲しいとの事だった。冒険者ギルドや商人ギルドはファールン王国側にでも援軍を求めて退治してはどうかとの話があった。しかし、ファールン王国は帝国との戦いで疲弊しており、さらにはいつ来るか分からないので流石に盗賊団の討伐に協力を求める事が難しいと言われたとの事だった。
冒険者ギルドの上役はファールン王国の冒険者にも依頼して一気に片を付けようと決めたようだった。セルシュ公国の冒険者は盗賊団の動向を監視する者、各村や町を守る者と分かれているらしい。そして、ファールン王国の冒険者が来たタイミングで一気に殲滅するという作戦らしい。
僕達はいくつかの町を抜けて行く。そして、盗賊団がいるという砦へと到着する。
「ファールン王国側の冒険者の者達には最大の感謝を送らせて欲しい。現在、盗賊団は全てあの砦にいる者達だけだ。他の盗賊団メンバーはすでに我が国の冒険者によって討伐されている。砦にいるのはそれでも、四千名はいると思われる。今はセルシュ公国の冒険者と最初に来たファールン王国の冒険者で包囲している。君達は今日は休んで貰って明日、総攻撃を仕掛けようと思う。食事は用意させているので今日はゆっくり休んでくれ」
僕達は用意された広場でテントを張り、食事をして明日に備えるのだった。