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第162話

 砂浜に着くとそこには漁に出るための船が壊れていた。


「一体どうしたんですか?」


「ん、ああ、どうやら今朝方漁に出ていた船がサーペントに襲われたらしい」


「サーペントですか?」


「ああ、海の魔物でな。普段は沖の方にしか出ないから出会うことは無いんだが、今日は岸の方に近寄ってきていたらしい。気付いた船が逃げ出したが何隻かやられちまった。少し離れた所に蛇のようにうねっている影が見えるだろう。あれがサーペントだ」


 地元の人が指さした方を見るとそこには海の色とは違う黒い帯のような物が動いているのが見える。


「大きいですね。どうして岸の近くに寄ってきたんですか?」


 セシリアが聞いてみる。


「サーペントが岸近くに来るのはより強い魔物に襲われたときか、狙っていた餌が岸の方へ逃げたときだからな。聞いた話によれば今回は餌が岸の方へ寄ってきたのが原因らしい」


「それは、どうやって分かるのですか? 餌は何ですか?」


「サーペントの餌は普通に魚や魔物中でも小型の奴だな。で、最近は豊漁が続いていたらしくてな。かなりの魚が岸の方へ寄ってきていたらしい。それに合わせてその魚を餌にする、小型の魔物だな。その細長い口から水を凄い勢いで放出して魚を攻撃してその魚を食べる細口鉄砲魚や上唇が長く硬く剣のようになった剣突魚等も多くなっていたらしい。それらを追ってサーペントが来たんだろうな」


「それで、今日はお魚は捕れたの?」


 フィーナが楽しみにしていた生のお魚があるのか聞いていた。


「いや、今日はサーペントが居るっていうんで早々に切り上げていて、魚は捕れていないらしい。儂の所と契約している漁師も今日は捕れなかったと言っていた。まあ、サーペントが現れたんだから仕方が無いがな」


「冒険者が護衛にいたんだろう。その冒険者達では倒せないのかい?」


「ああ、無理無理、ここの冒険者じゃあ鉄砲魚や剣突魚、後はビックシザーロブスターなら何とか戦えるだろうけどな。サーペントほどの大物になったら無理だな。……ビックシザーロブスター食いたいなあ。旨いんだよなあれは」


「美味しいんだ。お兄ちゃん私も食べてみたい」


 おじさんがビックシザーロブスターを思い出しながら物思いにふけっているのを見てフィーナが食べたいと言ってくる。


「今、市場にあれば良いだろうけどね。期待は出来ないかな。昨日見て回ったときにロブスターって見てないでしょ」


「ご主人はロブスターが何か分かるのかい?」


「簡単に言えば大きいエビだね。本に載ってたのを見ただけで実物は見たことは無いけどね」


「ビックシザーは最近は見てないから店では売ってないだろうな」


 物思いから我に返ったおじさんが言う。


「しかし、サーペントが沖の方に行くまでは漁は出来ないだろうな」


「冒険者が倒すとかは無いんですね?」


「海の中だぞ、誰が相手を出来るんだよ。昔、討伐をしようとしたことはあるみたいだけどな。サーペントの身体は滑るらしくてな。剣が滑って傷を付けられない。槍で刺そうとしても身体が丸みを帯びているから刺さらないらしい。まあ、船の上で踏ん張りもきかないから仕方ないのかもしれないな。その時は冒険者も船を操船していた船乗りも船を壊されて海に落ちてそのまま帰って来なかったらしい。サーペントに食べられたか他の魔物に食べられたかは分からないけどな」


 どうやら、以前に倒そうとは試みたらしいが無理だったみたいである。因みに、その時に魔法使いもいたみたいだが火魔法はあまり効果は無く。地魔法は届かない。風魔法も傷つけることが出来ず、水魔法は全く効果が無かったらしい。


「サーペントはどれくらいしたら沖の方に行くんですか?」


「さあな、早くて明日、長くて一ヶ月って所だろうな。記録では三ヶ月居座ったことがあったらしいけどな。流石に今回はそこまではないだろうと思いたいな」


 僕達はおじさんにお礼を言ってその場を離れる。そして、海沿いの生の魚が食べられるというお店に行ってみるが何処も魚が仕入れなかったとのことで食べる事が出来なかった。


「さて、どうしようか。目的の生の魚はサーペントがいる間は厳しそうだね」


「岸で竿を投げている人も居ましたが、お店に卸せるほどは捕れなさそうでした」


「ここは諦めて一度帰るというのもありだと思うけどね」


「フレイ様でも流石に海の中迄は無理でしょうから。帰ってまた後日にでも来た方がいいかもしれませんね」


 セシリア達は帰った方が良いと言うがフィーナだけは不満気な顔をしていた。


「フィーナでもサーペントの相手は無理だと思うよ」


「分かってる。私、泳げるか分からないし」


「ああ、そうだよね。泳げないと落ちたときに死ぬしか無いね」


「それなら、やはり一度戻るしか……」


「まあ、僕なら倒せるだろうけどね」


 セシリアが話している所に僕は被せて言う。


「ご主人様、倒せるんですか?」


 全員が目を見開いて驚いていた。


「一応、僕は海の神ライナル様から加護を貰っているからね。その時に貰った魔法に《海魔法ブレスウォーター》っていうのがあってね。それを使えば三十分だけど水の中でも呼吸が出来るんだよ。海の中での行動は水魔法を使えば大丈夫だろうし」


「ご主人様は三十分でサーペントを倒せますか? 以前の冒険者は剣では切れ無かったみたいですけど? それよりも、どうやってサーペントのいるところまで行くのですか? 船は出して貰えないと思いますが?」


「船は無理かもね。流石に神剣なら倒せるとは思う。問題はどうやってサーペントの所まで行くかだね。水魔法のウォーターウォークは三分だけ水の上を歩けるけど、三分で届く距離にいた?」


「一回では無理ですね。せめて十分は欲しいかと、しかも、その魔法は走ったら解けましたよね?」


「まあ、そうだね、早歩きはまだ大丈夫だったと思うけどね」


 僕とセシリアが話し合いながら方法を考える。カルラ達は余り魔法に詳しくないためかそれを見ていた。


「お兄ちゃん、どうするの?」


「そうだね、ここの冒険者ギルドに依頼が来てないか見てみようか。それで、依頼が来ていたら近くまで船を出してくれるかもしれない。この街の人達もサーペントがいると困るだろうからね」


 僕達が冒険者ギルドに行くとそこには沢山の冒険者達がいた。船が出せないので護衛の仕事が無くなったので代わりの仕事が無いか来ているらしい。


 僕達が冒険者ギルドの依頼書が張ってある板を見ると、サーペント討伐の依頼が入っていた。金貨三百枚というかなりの高金額であった。僕はその依頼書を持って受け付けへと行く。周りの冒険者は依頼書を持った僕に何故か道を空けてくれた。


「兄さん、その依頼受けるつもりか? 自信はあるんだよな?」


「聞いた話によると、餌が豊富にあるみたいで出て行くのにしばらく掛りそうなんだ。倒してくれると助かるんだが」


「サーペントが早くいなくなってくれないとこっちも困るんだよ」


「皆さん、落ち着いて下さい。もう、本当に落ち着いて! それで、あのその依頼を本当に受けるつもりなんですか?」


 受け付けのお姉さんがざわついている冒険者達に注意しながら僕に聞いてくる。


「そうですね、一つ聞きたいんですけどサーペントの近くまで船って出してもらえるのでしょうか?」


「それはしてくれるみたいです。ただ、船で戦うということは出来ないかと思います。なので、水魔法が最低でも使えないと厳しいというか、無理だというか」


「大丈夫ですよ。水魔法は使えます。近くまで行って貰えるだけで助かります」


「分かりました。お金は倒せたときに支払いになりますが大丈夫ですか?」


「大丈夫です」


「では、お昼にもう一度お越し下さい。その時に船を出してくれる船頭の方を紹介します」


「分かりました」


 冒険者ギルドを後にする。


「ご主人様、本当に戦われるんですか?」


「もちろん、あ、戦うのは僕だけだからね。流石に魔法の範囲が何処までなのか調べてないからセシリア達に使えるか分からないから」


「外から援護をしようにも海の中にいては無理ですね」


「だから、セシリア達は岸で僕の戦いを見ていれば良いよ」


「……分かりました」


 セシリアの顔は納得している感じでは無かったが、それでも、了承してくれたのだった。

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