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第157話

 一九階層へと続く階段を降りていく。十九階層は草原がなく見渡す限り森のようだった。その森の中にこれまでにあったようにトロール達の道だけが出来ていた。


「さて、それじゃあ二〇階層に続く階段を探そうか」


「一六階層から一八階層は真っ直ぐ進むだけで着いて、この一九階層は本当に迷路になっていて冒険者が一人でも居なくなったらその都度階段の位置が変わるという場所でしたよね?」


「受け付けのお姉さんから聞いた話によるとそうらしいね。一九階層の地図だけその為に作られていないそうですね。ただ、出てくる魔物はトロールとサイクロプスと変わらないらしいですね。情報を買ったときには無かったボアは居るかも知れませんが」


「そうだね、ボアも一八階層だけというのはあり得ないだろうから居るだろうね。ただ、流石に戦えないね。慎重に進もうか。逃げるときの叫び声で集まって来るトロールは集まってくるだけでこっちを認識していないから隠れたら大丈夫みたいだし」


「お兄ちゃん、途中の果物は集めるの?」


「そろそろ魔法袋の容量もきつくないかな。新しい果物でもあればそれだけ集めようか」


「うん、わかった」


 そして、森の中を進んで行く。森の中ではトロールやサイクロプスはその都度倒して行く。ボアに遭遇したときは気付かれたときは逃げるに任せて、気付かれなかった時は武器を隠して進んで行った。


 一九階層では全てが森の中のためか余りトロールやサイクロプスに出会うことは無かった。途中、森が開けるとそこには大きな泉があった。それを見つけた僕達が泉に近づくとそこにはトロールやサイクロプスが沢山居た。トロールやサイクロプスはボアが集めるか僕達が空に魔法を打つかしないと集まってくることは無い。


 そんなトロールとサイクロプスがその泉には沢山集まっていたのである。トロールとサイクロプスは泉に入ったり、その側で寝ている者もいた。


 僕達はその泉には近づかずに木に隠れて様子を見る。


「流石にあれだけの数のトロール達の相手は面倒だから迂回しようか」


「そうですね、しかし、これだけのトロール達が集まっているのは泉があるからでしょうか? 今までの階層でもこれだけ集まっている所に出くわしたことはありませんけど」


「ファルナは何か聞いてる?」


 ラントの兄であるガージェス王太子からこのダンジョンの事を聞いたことがあるファルナに聞いてみる。


「そうですね、トロール達は水辺に集まって居ることが多いとの事を聞いています。ここまで広い泉があるとは聞いていませんでしたけどね」


「もしかして、階段の位置だけじゃなくて泉の位置や大きさとかも変わるのかな? もしそうなったら、この一九階層は冒険者がいないときは新しく作り替えられているっていうことになるよね? 作り直している間のトロール達は何処にいるんだろう?」


「ご主人様、その辺は聖霊様がされていると思います。気にしなくてもよいかと」


「あ、まあ、そうか。聖霊様がいるんだから何とかするよね。それじゃあ、迂回しようか」


 僕の言葉にセシリア達が頷きその泉を離れて大きく迂回して進んで行くことにする。


 大きく迂回して森の中を進んで行くがその中にも先程の泉よりも小さい泉は幾つかあった。その小さい泉では一、二体のトロールが居たのでそちらは倒して魔石を回収していく。


「この泉は入らない方がいいよね?」


「そうですね、大きい泉でトロールが入っていたのを見た限りではここでも入っているでしょう。かなり汚いかと思います」


(わたくし)も流石にこの泉で手を洗うのも遠慮します」


 セシリアもファルナも泉には触れたく無さそうで、カルラとフィーナも同じように頷いていた。


「水辺は野営するのにもいいんだけどね。さっさとこのダンジョンを攻略しようか」


 少しのトロールとサイクロプスを狩り二〇階層へと進んで行く。


 二〇階層は一六階層のような草原が広がっており森は無く、木が所々生えているぐらいであった。そして、遠くにトロールやサイクロプスの他に一廻り大きいトロールが見える。そのトロールは棍棒を手に持ち、一匹のトロールと一緒に歩いていた。


「あの一際大きいのがハイトロールかな? 見た所、引っこ抜いた木じゃなくて棍棒を持っているみたいだね」


「あれだけ大きいハイトロールの棍棒なんて誰が用意したんですかね? かなり樹齢のある木でないと無理だと思いますけど」


「その辺は考えるだけ意味ないんじゃないかな? オークジェネラル達の武器や鎧だって誰が用意したなんて気にしないでしょ。聖霊様が用意したんじゃないかな」


「問題は、そのハイトロールが他のトロールを連れてあるている事だね。見た所、一体だけみたいみたいだから大丈夫だろうけどね。でも、ご主人は戦って見たいんだよね」


「そうだね、せっかくだし戦って見たいかな。動きはトロールよりも遅いみたいだから大丈夫だろうけどね。じゃあ、あそこに見えるハイトロールを狙おうか。僕がハイトロールと一人で戦うから一緒にいるトロールはフィーナを中心に倒そう。セシリアは危なくなったら僕のフォローね」


 そして、最初に見えたハイトロールの方へ走っていく。途中で二体ほどサイクロプスと戦ったのだが、その間もハイトロールはのんびりと歩いていた。こちらの方を見ることも無かった。


 ハイトロールの前に来るとその大きさに圧倒される。ハイトロールは目の前に僕達が来てもただ見下ろすだけで襲ってくることは無かった。ただ、僕達の方を見下ろしてくるだけだった。


「相手にもされていないね。まあ、いいか」


 僕はトロールと同じように後ろに回りその大きな足のかかとを切る。フィーナ達も僕が動いた後にトロールの方へと向かって行った。


 ハイトロールが大きな音を立ててで尻餅をつく、尻餅をついたのでまだ弱点の首を剣で狙えなかったので上半身を支えていた手を切ろうとする。すると、ハイトロールはものすごい速さで持っていた棍棒を僕に向かって振り降ろしてきた。僕は咄嗟に飛んでそれを躱す。棍棒は地面を打つがその衝撃で僕の動きが止まる。ハイトロールはそんな僕に向けてもう一度棍棒を振り降ろしてきた。僕は今度は前に出て棍棒を振り降ろす前に身体を支えている手を切る。


 ハイトロールは身体を支える手を切られたことでバランスを崩し上半身も地面へと倒れる。僕は身体を起こす前にその首を切りハイトロールを倒した。


「ご主人様大丈夫ですか?」


 ハイトロールが動かなくなったのを確認してからセシリアが近寄ってきた。


「大丈夫だよ、あの棍棒の速さには驚いたけどね。流石に対処出来ない程じゃないよ。それよりも、フィーナ達の方はどう?」


「そちらは危なげなく倒していましたね。あのハイトロールの攻撃で動きが少し止まっていましたけど、トロールも一緒に動きを止めていましたから」


「あれだけの衝撃なら皆動きを止めるよね。ところで、それだけの衝撃だったけど周りからトロール達が向かって来ているというのは見えない?」


「今のところ、ありませんね。上空の翼竜もアサシンイーグルもこちらを見向きもしませんでした」


「そうかなら、魔石を取ったらさっさと離れようか」


 魔石を回収してその場を離れる。十分離れて、他のトロールやサイクロプスとも距離のある所で一息つく。ハイトロールとの戦いをフィーナ達と共有する。


「ハイトロールは足だけだと尻餅着くぐらいで上半身を手で支えて首まで届かなかったね。その後の動きが想像以上に速かった。最初の動きは遅かったからそれに惑わされると棍棒の一撃を受けて死ぬね」


「あの棍棒の一撃は凄かったね。地面が凄く揺れたよ」


「あたい達も動けなかったからね。そんな一撃を食らったらあたいでも防ぐのは厳しいかも知れないね」


「ただ倒れたトロールも動けそうに無かったのでこちらは大丈夫でしたね」


「ハイトロールは足に攻撃する者、手を攻撃する者、そして、首を攻撃する者と人数がいるかもね。確実に首を攻撃するなら二人は欲しいかも」


「そうなると、手を攻撃するのはご主人様がまだ安全かもしれませんね。あの速さでしたらフィーナさんでも厳しいかもしれません」


「ハイトロールの足はフィーナがして、僕が手を攻撃でカルラとファルナで首を攻撃するのがいいかな。ただ、一緒にいるトロールが一番厄介かな」


「それでしたら、私が弓で目を狙って牽制します。それなら、少しは動きを止められると思います」


「分かってると思うけど、エンチャントは使っちゃダメだよ。もし外れたらトロールが押し寄せると思うから」


「分かっています」


 話し合いを終えてもう一度ハイトロールに挑戦する。ハイトロールは今度はサイクロプスと一緒に歩いていた。話し合いで決めたようにフィーナが足を攻撃する。そして、尻餅をついたところで僕がその支えている手を攻撃して仰向けに倒す。そして、首の両側からカルラとファルナが剣で切った。


 サイクロプスはセシリアがその目を狙い矢を放っていた。サイクロプスはその攻撃を嫌がるがセシリアが動き回りながら矢を放つので動くことが出来なかった。


 結局ハイトロールを倒し終えてからフィーナ達がサイクロプスを仕留めた。


「四人でやったら簡単に倒せたね。問題はトロールや上空の対処だけどセシリア一人でいける?」


「大丈夫だと思います」


 セシリアが自信を持って言う。僕はそれに頷く。


 それからもハイトロール等を倒しつつ二〇階層を進んで行く。そして、聖霊がいると思われる扉の前にたどり着いた。

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