第16話
神々が去ってから少しの間呆然としていた。夢だったのか現実だったのかその区別が少しつかなかったので、しかし、僕の右手にある神具が今までのは現実だったのだと教えてくれる。
「神様方ありがとうございます」
神々が消えた方に頭を下げてドアの方に振り返るとふと思った。
「これって、地上までまた上って行かないとダメなんだよね」
でも、これは好機だとも思った。フォルティナ様が言っていたように神具の性能を確かめといた方が良いと思ったのだ。それには、少々強すぎる気はするがドラゴンたちは良い練習になるだろう。
「とりあえず、のんびり上ってみますか。魔石や食材が手に入るし」
そうして、地上に向かって歩き出した。
結果から言うとドラゴンがとても簡単に倒せるようになっていた。なんせ、今まではミスリルの剣で切っても傷つけるのやっとだったのに、神具もとい神剣フォルティナ(僕が勝手に命名しました)の身体能力強化も凄かったがその神剣の切れ味も凄かった。ドラゴンの鱗も関係なしに切れるのだ。一番苦労したのは身体強化した身体の動きに付いていく事だった。
皇龍神グランバハムートがいた部屋で練習してみたのだが、自分の身体の動きに感覚がついて行っていなかった。そこで、皇龍神グランバハムートがいた部屋で丸一日神剣の動きになれる事に費やした。
その動きになれるとダンジョンの魔物があっさり倒せるようになってしまい。地上まで苦労すること無く進めたのだった。
「さて、地上に戻ってきたわけだけど、この後はどうしようかな。流石に村の方の崖は登るのはいやだし。そういえば、本の持ち主は反対側の崖の方を降りてきていたみたいだからそっち側に登りやすい崖でもあるのかな?」
と、具体的な場所も分からないままハイエルフの村があった方とは反対の方の崖へと向かう事に決めた。
そうして、何とか登れそうな所を見つけると夜まで待って《月魔法夜のとばり》を使い崖を登っていく。この魔法はかなり便利で日が暮れている間なら魔物が近寄ってくることすら無かった。そうして、崖を登りきりどこか落ち着けるところが無いかと崖の上の森を歩き回った。
そうして、見つけた小さな泉の側で夜が明けるのを待った。
夜が明けてから森の中を彷徨っていると、棍棒を持ったオークが三匹と遭遇した。オークは何かを探しているようだったがこちらを見つけると鳴き声上げて向かってきた。
「《地魔法ピットフォール》」
二匹のオークの足元に十センチ程の穴を作り転ばせる。そうして、転んでもたついている二匹のオークを気にせずに向かって来た一匹のオークの足元をすれ違いざまにミスリルの剣で切りつけ転ばせてから頭を切り落とす。それから、もたついている二匹のオークに走って向かって行きその頭も切り落とした。
「うん、これぐらいならミスリルの剣で全然大丈夫だね。神剣を使うのが何か勿体ないし」
そうして、倒したオークの魔石をくり抜いていく。
「お前さん、そのオークを一人で倒したのかい」
三匹のオークの魔石をくり抜いている時に声をかけられた。
「いやあ、たまげたな。オークに狙われたときにもうダメかと思ったがまさかこんな少年がそのオークを倒すなんてな」
そこにはおじさんがびっくりした顔してオークとぼくを見ていた。
「まあ、これぐらいは出来ないと僕のいた森では暮らしていけませんから」
「うらやましいな。ところで、坊主はどこから来たんだ。こんな森の中で何をしていたんだい」
「ちょっと、旅をしていまして魔物に追われて森に入ってまいたのは良かったのですが迷ってしまいましてね」
「なるほどな。その年で旅をするなら何かしら事情はあるだろうしな。流石にその理由迄は聞かんが、ところでそのオークの魔石は取っていたけど、その肉は切り取らないのかい」
おじさんが物欲しそうにそう聞いてくる。
「肉は沢山ありますから、欲しければ差し上げますよ。持ち運びも大変でしょうからそれも手伝いますよ」
おじさんの顔が笑顔になる。
「本当か!それは助かる。これだけのオーク肉があれば村もかなり助かる」
そうして、僕はアンソニーと名乗るおじさんの村に行くことになった。