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第151話

 ファールン王国に元々ある聖霊のダンジョンへ向かうために王都へと向かう。ファールン王国の聖霊のダンジョンは王都の近くにあるとファルナに聞いた為である。そして、その聖霊のダンジョンはファールン王国の騎士団の訓練に使用されているという事で冒険者が入ることが出来るのか分からなかった。そのために王都にいるラントにその事を聞くために向かったのだ。


 ガルファスの反乱を鎮圧して王都に入ったときは余り活気は無かったが、今では王都に相応しいぐらいに活気に溢れていた。


 僕達は宿に部屋を取ってから冒険者ギルドに行き、ラントがいるであろう王城に会って話がしたいとの旨を先触れしてもらい、宿で待つ。


 宿に泊まったその夜に驚いたことにラントが一人で僕達の宿へと出向いてきた。


「フレイ、久しぶりだな、元気だったか? ファルナも元気そうで良かった。まあ、フレイのことだから酷い扱いはされていないだろうとは思ってはいたがな」


「はい、フレイ様には色々と教えて貰っていますし、他の皆様にも良くして貰っています」


「それは良かった。それで、フレイ今回はどういったことで訪ねてきたんだ?」


「あ、うん、それなんだけど、その前に、ラント大丈夫? この前会った時と違って凄いやつれているけど、どうしたの?」


 そう、宿に来たラントは病人のようにかなりやつれていた。


「いや、俺は今まで冒険者として戦っていれば良かったんだがな。今は、この国の摂政として王城で書類仕事やら、来客の対応などをしないといけなくなってな」


「お兄様が摂政と言うことは、王はガージェス兄様のお子様がされているんですか?」


「ああ、流石に一歳になったばかりの子供だから表には出ていないがな。今は俺が摂政として国を動かしているな。冒険者の時より心が疲れる。本当は逃げたいんだが、そうなると重臣達が何をするか分からないからな」


「権力を持ったときに人は変わるのは歴史的に見てもよくあることみたいだからね」


「そう言うことだ。それで、フレイが訪ねてきたと言うことで本来なら王城でもとは思ったけどな、俺が王城から離れたくて来てしまった。まあ、警備の兵は息抜きと思って見て見ぬ振りをしてくれている。それよりも腹が減ったんだ。下の食堂でご飯でも食べながら話さないか。夕食を食べ損ねたからな」


 ラントと一緒に宿の一階にある食堂へと向かう。


「ラントが一人で来るのはおかしいよね。護衛もしていたセイルはどうしたの?」


「帝国の動きに備えて一番帝国に近い砦に行ってもらっている。シルビア達のパーティーも一緒だな。帝国は今は動きを止めているがどうなるかは分からないからな。ガルファスの反乱で兵が減ってしまっているからな、王都や、近隣の街の冒険者にも依頼しているぐらいだ」


(わたくし)の兄が反乱などを起こしてしまい申し訳ありません」


 ファルナがラントに謝る。


「すでにその謝罪は受け取っているぞ。それに、ガルファスは俺の兄でもあるからな。それよりもフレイ達はどうして王都に来たんだ? しかも、俺に話したいことがあるなんて、何か物騒な話か?」


「物騒では無いかな。ファールン王国の聖霊のダンジョンがこの王都の近くにあるってファルナから聞いてね。そこに僕達のような冒険者が行くことが出来るのか聞きたかったんだよ」


 僕の言葉にラントは不思議そうな顔をしていた。


「そんなの勝手に行けば良いだろう? そんな事を聞くために俺の話を聞こうとしていたのか?」


「ファルナから聖霊のダンジョンは騎士団の訓練に使用していると聞いていたからね。冒険者が入って良いのか分からなかったんだよ」


「ああ、確かに騎士団の訓練にも使われているな。しかし、別に王国の騎士団だけしか入れないって事にはなっていない。普通に王都の冒険者もいっているな。俺がマルンのダンジョンに行っていたのは見聞を広めるのもあったが、それ以上にバルドラント王国に潜入している者たちの情報を纏める役目があったからな。そのおかげでフレイの情報をいち早く掴めたんだがな」


 ラントは懐かしそうに語る。冒険者をやっていた頃を懐かしんでいるようだった。


「なら、明日はその聖霊のダンジョンに行ってみようかな。その聖霊のダンジョンは階層はどれくらいあるの?」


「このファールンの聖霊のダンジョンは二十階層だな。ただ、シルビア曰くここの聖霊のダンジョンは弱いらしいぞ」


「弱い? どういうこと?」


「バルドラントの聖霊のダンジョンだと最後の十五階層にはグリフォンとかアースドラゴンとか強い魔物が出てくるんだろう?」


「そうだね、実際出て来たよ」


「このファールンの聖霊のダンジョンは最後の五階層で出てくるのはハイオーガやリザードマン等が群れで出て来て、後はトロールが出てくるな。最後の二十階層にはハイトロールが出てくる。ただ、このハイトロールは身体は普通のトロールよりは大きく力も強いんだが、動きが遅くなっていてな、逆に倒しやすくなってる。聖霊曰く、最後のご褒美らしいがな。まあ、ハイトロールの魔石はゴーレムにすると強いからな。王国では常に収集の依頼を出している」


「ああ、それだけ大きいのがゴーレムのサイズになるんだから速くなるよね。でも、それは楽しみかな。トロールとは戦ったことがあるけど、ハイトロールとは戦ったことが無いからね」


 僕が嬉しそうに言うとセシリアが苦笑いをする。


「ご主人様の悪い癖が出ていますね。戦ったことが無い魔物と戦いたがるんですから」


「ねえ、お兄ちゃん、もちろん私にも戦わせてくれるよね?」


「ああ、もう一人いたんだった」


 フィーナも魔物との戦いを楽しむようになってしまっていた。訓練の量も増やしており食事の量も増えてきていた。


「フレイもだが、フィーナちゃんも戦うのが好きなのか?」


「戦うのというより、強くなるのが好きなのかな。魔物と戦うのはお金になるし、練習になるから好きだよ」


「これも、全てご主人様が悪いんですよ」


 セシリアが僕を責めてくる。


「そうなのかな? ただ、強くなる事は生きていく上で必要な事だよ。戦闘狂にはならないでほしいけどね」


「まあ、ご主人に助けられるまでは王宮の中でずっと過ごしていて、国が落ちたときに奴隷落ちしたんだ。今まで自由だったことが無かったのがご主人のおかげで自由になり、さらにはその自由を満喫するために必要な強さを手にすることが出来た。しばらくは、このままでも良いとは思うけどね。ただ、マリアが死んでからは速く大人になろうと無理をしている。そこが、心配かな」


 カルラがフィーナの方を見てそんな事をいう。


「まあ、マリアが死んでから練習の回数も増えているね。僕としては強さだけでは無く、生活力を身につけて欲しいけどね。フィーナって料理出来る?」


「いえ、出来ないと思います。マリアさんが教えてくれていたときに少しだけしていましたが、最近はしていませんね。亡くなってからは強くなる方を優先してしまっているような気がします」


「帰ったら、フィーナにはメイアにメイドの仕事を一ヶ月付きっきりで教えてもらおうか。戦闘の訓練も無し、戦う以外の事もちゃんと学ばないとね」


「分かりました。ご主人様が一ヶ月やるように言っていた、と聞けばいやでもやるでしょう」


「お願い、さて、そろそろラントを王城に送ってくるよ。流石に王都だから大丈夫だろうけどね」


「分かりました」


 ラントを王城に送ってから一人空を見ながら王都の道を歩いて行く。セシリアとカルラの話を聞いてフィーナの成長に少し不安に思いながら宿へと向かうのだった。

 

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