第150話
ファルナを新たにメンバーに入れてマルンのダンジョンを行く。ファルナは要領も良く、頭も良いのか直ぐに皆に合わせることが出来た。そして、マルンのダンジョンを四十階層にも問題なく行けた。ダンジョンから帰って来た日にファルナに聞いてみる。
「そういえば、このファールン王国の元々ある聖霊のダンジョンは誰でも入れるのかな?」
「その辺の事は私は分かりませんね。お兄様達は一度行っただけでそれ以後は行かれていないのは知っていますが」
「ここの聖霊のダンジョンは旨味が無いのかな? バルドラント王国にあったダンジョンはこのマルンのダンジョンよりも浅く出てくる魔物も同じような物だよ。だけどラントはファールン王国の聖霊のダンジョンでは無くこのマルンのダンジョンに魔石を集めに来ていた」
「確かにそう考えると不思議ですね。同じような魔物の魔石を集めるなら聖霊のダンジョンの方が集めやすいはずなのにこの街のダンジョンに来たのには何か理由があったのでしょうか?」
カルラもセシリアの言葉に考え込む。
「お父様がラントお兄様にマルンのダンジョンで魔石を集めさせていたのかは分かりません。ただ、騎士団の人達はその聖霊のダンジョンで良く訓練をしておりました」
「ファールン王国の聖霊のダンジョンは王都の近くにあるのかな? そういえば、何処にあるのか知らないね」
「聖霊のダンジョンは王都の近くにあるとお兄様から聞きました。王都から半日も歩けばたどり着ける場所にあると聞いています。元々王都はそのダンジョンの近くにあった、古代文明時代の砦を再利用しているそうです。いくつかの国の王都はそうした古代文明時代の砦を利用していると習いました」
「ああ、だからバルドラント王国の王都にあの障壁みたいな壁があったのか。バルドラント王国の王都も古代文明時代の砦を再利用したんだろうね。流石に、王都全てを覆うような障壁を発生させる魔道具だものかなりの大きさだろうからそれを移動させるよりもその砦をそのまま再利用する方が良かったわけだ」
古代文明時代の砦の大きさに僕は驚きを隠せなかった。王城を作りさらに町並みすら作れるほどの広さが砦の中にあったのだからそれだけの規模の砦が古代文明時代は必要だったということである。
「それだけ巨大な砦が必要な何かが昔はあったというわけだ。それはいったい何だったんだろうね。グランバハムートの攻撃には耐えられなかったみたいだから三神獣では無さそうだけど、何か怖いね」
「どうされました、ご主人様。一人で呟いていましたが?」
「ああ、ごめん、思ったことを話していたみたいだ。さて、今度王都に行ってラントに聞いてみようか。出来れば、皆を聖霊のダンジョンの攻略をしておきたいかね」
「そうですね」
セシリアが同意をするがファルナは首を傾げていた。
「聖霊のダンジョンを攻略するということは今はラントお兄様が持っている聖武具が欲しいと言うことですか?」
「聖武具は欲しいけど流石に無理だろうね。精霊の加護には身体能力を少しだけだけど上昇させる効果があるんだよ。ああ、でも、ファルナを連れてバルドラント王国にあった聖霊のダンジョンももう一度行かないといけないかな?」
「あ、あの私はそこまで本格的にダンジョンに行きたいわけでは無いのですが、本当に時々行くぐらいでよろしいんですよ」
「ダンジョンに行くのは生活するためのお金を稼ぐためだからね。別に無理をして全ての聖霊のダンジョンを回る必要は無いかな。だけど、強くはならないと自分の身すら守れなくなるよ。どうしよう無い貴族っていうのは何処にでもいるからね」
「ファールン王国でも領民を家畜のように扱うような貴族はいると聞いています。ただ、辺境の貴族にそう言った者が多いとの事です。ただ、余り中央には寄りつかないらしいですけどね。社交界のシーズンでも辺境の大貴族のパーティーに参加するぐらいで王都の方へは来ないとか」
ファールン王国でもやっぱりそういう貴族はいるという事だった。そして、不穏な事もファルナは言う。
「このマルンは自由都市でありましたが、今はバルドラント王国が滅びてファールン王国の自由都市という形になりました。バルドラント王国が出てくるかも知れなかったのでウチの貴族は来ることはほとんどありませんでしたがこれからは分かりませんね」
「まあ、ファールン王国はバルドラント王国の王都を含む半分ぐらいの領土を制圧しているんだよね?」
結局どれくらいの領土を制圧したのか分からなかったので聞いてみたがセシリア達は分からなかった。ファルナもその辺りの話は聞いていないのか分からなかった。
「街の中の噂話程度の話ですが、バルドラント王国の三分の一程度の領土をファールン王国が占領しているそうです。残りの三分の二はセルシュ公国が制圧したそうです。セルシュ公国は元々治めていた貴族にそのまま領地を治めさせているそうです。そして、バルドラント王国の前王の叔父が公爵となっているそうです。それ以外の貴族達は子爵となっているとのことです」
メイアが街で聞いたと話してくれた。
「セルシュ公国はどういう形態なんだっけ?」
「セルシュ公国は中心にあるセルシュ大公領が王都と言って良いですね。そして、その大公と七つ、いえ今では八つですか。公爵家がそれぞれ領地を治めているという感じですね」
「それって王国じゃないのかな? セルシュ大公が王様で他が貴族って感じじゃ無い?」
「その辺りは私では分かりません、すいません」
メイアが謝ってくる。
「王城で習いましたよ。何でも、セルシュ大公は古代文明の時代の貴族の名門の出と言っているそうです。その古代文明時代の王を今でも敬っているので王位には就かずに大公でいるそうです」
ファルナが王城で習ったと話してくれた。
「何か、うさんくさい話だね」
「それは皆言っていることです。今ある王国のほとんどが帝国が分裂したときに出来たのがほとんどです。いえ、セルシュ公国もその時に出来たと聞いています。しかし、自分達の領土は帝国から取り返したと言っているようですけどね。昔の話なので実際どうなのかは分かりませんね。商人達は行き来していたでしょうが、国としては交流は無かったですから」
「セルシュ公国の話はいいか。そういえば、何の話をしていたんだっけ?」
「ファールン王国の聖霊のダンジョンでは無かったですか?」
「ああ、そうか、まあ行けるかは分からないけど向かってみようか。ダンジョンに行けなかったら王都見物でもして帰ろうか」
そして、次の日にファールン王国の王都へと早速向かったのだった。