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第148話

 奴隷商に一人で向かう。マルンにある奴隷商は今まではファールン王国とバルドラント王国の両方から集められていること多く。商人達もこのマルンの奴隷商で希望の奴隷を見つけることが多かった。


 ファールン王国は犯罪奴隷しか扱えないのだがどうしてもお金が必要な者たちが秘密裏に売ることがあるらしく、その奴隷はマルンに集められるのだ。ファールン王国で秘密裏に売られた者を扱うと定期的に行われる監察に寄って見つかってしまう。そこで奴隷商はここマルンの奴隷商に送るのだ。このマルンではファールン王国で行われているような監察は行われていないので都合が良かったのだ。


 バルドラント王国の方でも貴族が権力を使い不当に安く売ったり買ったりすることが多かったので奴隷商達がこのマルンに送って来ることが多かった。このマルンでは貴族の権力はそれほど意味が無いので奴隷商は利用していたのだ。


 そういった、両国の思惑があった為にこのマルンでは結構な数の奴隷がいる。しかし、その奴隷達も他の街の商人や奴隷を求めてやって来た貴族等が主な相手であった。元々、マルンは冒険者の街であり、奴隷の中で元冒険者や戦える者は買われるが戦えない奴隷などは買われる事は少ないのだ。


「さて、僕の望み通りの奴隷は居るのかな?」


 奴隷商に入り、受け付けの人に案内される。このマルンの奴隷商は他の街の物よりも規模が大きく、複数人の奴隷商人が共同で運営しているとのことだった。


 案内された部屋で待っていると一人の少し小太りの商人が入って来た。


「お待たせして申し訳ありません。当商館の商人の一人のマーチャスと申します。本日はどのような奴隷をお求めでございますかな?」


 マーチャスは丁寧に頭を下げて聞いてくる。


「ちょっとやりたい事がありましてね。こちらには女性で身体の一部が魔物や貴族に切り落とされた様な奴隷の人はいますか?」


「身体の一部を無くしたような奴隷ですか。ふむ、年齢的にはどれくらいが希望ですかな?」


「そうですね、二十代位まででいますか?」


 マーチャスは鋭い眼光で値踏みするように僕を見る。


「ふむ、そうですな、そう言った者たちはこちらへ来ることは出来ませんので特別室にいるのですが、見られますか?」


「ええ、是非見させて欲しいです」


 マーチャスと一緒に部屋を出る。そして、部屋の奥の方にある部屋に案内された。


 その部屋には五人の女性が協力して仕事をしていた。女性の中には片腕がなかったり、両足がなかったりと何処かしら身体が欠損していた。


「こちらにいる女性達は魔物との戦いにおいて腕を無くしたり、足を無くしてしまった女性達ですね。元々冒険者として頑張っていたんですが、魔物にやられて腕や足がなくなってしまったのです。そうなっては足手まといになるために自分を売ることはよくあります。もし、仲間と家に帰ることが出来ても厄介者扱いされて結局は奴隷落ちすることが多いです。今やっていることは腕や足がなくても仕事が出来るように訓練をしています。簡単な仕事ですがちゃんとお金も払っていますよ」


 このような女性達は働く意欲を無くすことも多い。そして、そのまま動かなくなり病気になり無くなるらしい。しかし、自分達でも出来る仕事があり、それでお金も稼げるのであれば生きたいと思うようになるとマーチャスは言う。


「商人の人達であれば労働者として奴隷を求める人達が多いです。そんな商人達には頑張っている彼女達は立派な労働者になと、買われる方も居るのです。ですが、最近はファールン王国でもバルドラント王国でもかなり荒れましてね。バルドラント王国はなくなるし、ファールン王国では内乱が起きたちと商人達も今は余り来ていないのです。どうですかな、彼女達はお客様のやりたいことの助力になりませんか?」


「そうだね、今の状態でそれでも生きたいという気持ちを感じるね。その気持ちがあるのなら助かるね。彼女達は全員お願いしようかな。後五人位居てくれると助かるんですけど」


「ありがとうございます。それでは、少々お待ち頂けますかな。彼女達にも準備をさせないといけませんので」


 マーチャスは彼女達の居る部屋の隣へと入って行きそこで誰かと話していた。


「お待たせしました。それでは、次の奴隷のいる部屋に案内させて頂きます」


 案内された部屋にも先程と同様に腕や足のない奴隷の者たちがいた。しかし、こちらでは前の部屋の者たちとは違い何もせずに、ただ座っているだけで何もしていなかった。


「こちらの部屋は、その、貴族から買い取った奴隷になるのですが、生きる気力まで無くしてしまったのか何もしようとはしないんですよ。働く意欲を見せれば商人が待遇良く買って貰えることを言っているのですが、それでも働きません。貴族によって精神的にも追い詰められたためか生きる気力も無くしてしまっているのです。出来ればこちらの奴隷を買っていただけるありがたいのですが……」


 その前の部屋で紹介した奴隷達とは違い、買ったとしても役に立たないと分かっているためかマーチャスは申し訳なさそうに言ってくる。


「違いを見る事も出来るから構いませんよ。それでは、先程の奴隷達とこちらの奴隷達を合わせて十人お願いします」


「本当ですか! ありがとうございます。それでは、最初の部屋で待っていていただけますかな。ああ、案内の者を直ぐに呼びますので」


 マーチャスは嬉しそうにその部屋に入る。そして、代わりに出て来た人に案内されて最初の部屋へと戻った。


 少ししてマーチャスが戻って来てから値段に関して話をしたが十人にもかかわらずその値段は普通に奴隷を買うよりも安かった。


 マーチャスとしては絶対に売れそうになかった奴隷達を買って貰ったとして他の商人達も説得してその値段を勝ち取ったとの事だった。


 僕は十人の女性達を連れて帰るとセシリア達が呆れた顔をしていた。そして、ファルナだけは引きつったような顔をしている。


「あ、あのフレイ様、メイドの人数が必要とは言いましたが、それで買って来られたのが彼女達ですか?  メイドとしては働けないと思うのですが」


「メイドとして働くために私達は買われたのですか? 旦那様は何かやりたいことがあるからと買われたと、商人よりお聞きしたのですが」


 新しく奴隷として来た女性が代表として聞いてきた。名前はアンナと言っていたのを思い出す。


「確か名前はアンナだったね。君達はこれからこちらのメイアにメイドとしての仕事と心構えを習って貰う。この屋敷はかなり広いからメイドの人数が必要だと言われてね。ダンジョンに行くメンバーとニルが仕事に出かけたら残るのがメイア一人になってしまうんだよ」


「それは、良いのですが、私達にメイドとしての仕事がちゃんとは出来るとは思えません。半数は、その言っては悪いですが、まともに働けないかと思います」


「フレイ様、流石に奴隷を買うにしても、もっとまともな状態の奴隷を買ってきて欲しかったです」


「大丈夫でしょ、だってこれからまともな状態になるんだからね」


「な、何を言っているのですか? どうやったらまともな状態になるのでしょうか?」


 アンナが怪訝そうに聞いてくる。僕の言葉にファルナも不審そうに見てくる。


「ファルナは知らないけどね、セシリアはアンナ達よりも酷い状態だったんだよ。それこそ、両足も無く片手だけがあるような状態だったんだから」


「「えっ!」」


 ファルナとアンナが驚いた声を上げる。アンナと一緒に来た女性達も驚きの表情をしている。セシリアは恥ずかしそうに苦笑いをしていた。


「そういうわけだから、玄関先が一番広いからね。ここで治しちゃおうか」


 奴隷商から連れてきた女性達に並んで貰う。


「フォルティナ様の力の一端をここに顕現すること願い奉る。この者達の身体の欠損をそのお力により癒やしたまえ、《神魔法リジェネレイト》」


 女性達を優しい光が包み込む。光が収まった頃、女性達は五体満足の状態へとなっていた。そんな自分の姿を見てアンナ達は泣き出していた。生きる気力を無くしていたと言っていた女性達も自分の身体が元に戻っているのを見て大きな声で泣き出している。


「フレイ様、これはいったい、どういうことですか? 無くした手足が戻るなんて、そんな奇跡(わたくし)は見たことがありません。フレイ様、いったい何者ですか?」


「僕は僕だよ。それ以外に何があるのさ」


「ご主人様はフォルティナ様の加護を持っておられるんですよ。持っている剣も神剣です」


 セシリアの言葉にファルナは目を見開いて驚く。


「そんな、凄い方だったのですね。フレイ様が望めばこの国の王にでも成れたでしょうに」


「僕がそんな面倒な事をやりたいと思うわけ無いでしょ。このままダンジョンに行ってお金を稼いで、セシリア達とのんびり過ごせれば良いと僕は思っているだけだよ」


 僕の言葉にセシリアとカルラは微笑む。


「そうなれば良いですね」


 そう呟くと、ファルナは不安そうな顔をしていた。

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