閑話5
フレイがラントを助ける為に向かっている頃、それを見守っている集団がいた。
「フレイは順調に成長していますね。いずれは世界を統一することになるかも知れませんね」
「そうかあ、昔、期待した奴らもいたが結局そいつらも大陸統一で満足してしまったじゃないか。他の大陸から攻めてきた奴らを追い返しただけで、結局その大陸には逆侵攻をしなかったよな」
「ライナル、それはアルス達の事ですよね?」
「ああ、そうだ、あの時が初めてじゃないか。五人も神具を持つなんてそれまでは王が独占していたからな。持っても王と王子の二つだけだったからな。アルスの時はかなり期待したんだがな」
ライナスがため息をつきながら言う。
「あの時のアルス達は逆侵攻より大陸の復興に尽力して居ましたね」
「まあ、ほとんどを南の大陸の奴らに支配されたからな。逆に南の奴らは最後まで支配できなかったのか。それが今でも不思議でならんな」
「まあ、あれは北の寒さを甘く見ていたのが原因でしたね。寒さでほとんどの者が動けなくなった。春になって暖かくなったときに侵攻しようとしたらアルス達のダンジョン攻略が間に合ってしまったのよね」
「全てを統一出来ていたら全ての種族を進化させるんだったか? かなり昔の取り決めなので忘れてしまった」
「私達の重要な仕事なんですけどね。進化はある一定以上の文明が必要ですから今の種族達では無理ですね。まずは知識だったと思いますよ。そして、星をいくつか支配してある一定水準まで達したときに進化させる事になりますね」
「そして、神の一員になるんだったな。何故そんな事をしているのか分からないが……」
「それは、原初の創造神に聞いてみないと分かりません」
「そうだな。そういえば、フレイは儂の与えた加護は使っていないよな」
「それは、使う場所が余りないからではないですか? 水の中でも呼吸が出来るのは便利ですが、湖などに入る事なんて普通はしませんよ」
ライナルが唸る。
「冒険者だろう。せっかく使える加護があるのに何故使わんのだ。いくつかの湖の底にはダンジョンを作っていただろう」
「それは、あなたが作って欲しいと言ったから作ったのです。一応、ダンジョン内は空気がありますが普通は湖の底まで行こうなんて考えませんよ。そういえば、海の中にもいくつか作っていましたね」
フォルティナが呆れたように言う。
「うむ、しかも海の底のダンジョンも聖霊のダンジョンにしたからな!」
「それはソルテールの許可は得ましたか?」
「もちろんだ。湖の中のダンジョンでは無理だが、海の中なら良いと言っていたぞ。しかも、地上のよりも強力に作ってある。ぶっちゃけるとだな、五大神の神具程ではないがそれ以外の神達の神具に匹敵する!」
フォルティナがライナルの言葉を聞き頭を抱える。聖霊のダンジョンは試練のダンジョンと違い最後の試練である魔物はいない。試練のダンジョンよりも難易度が下がっているのが聖霊のダンジョンなのだ。その聖霊のダンジョンで試練のダンジョンと同じぐらいの聖武具が手に入るのは本来はあってはならなかった。
「まあ海の底のダンジョンに来られるようになるのに何年かかるか分かりませんからね。ソルテールも許可を出したのなら私から言うことはいけませんね」
「フォルティナは真面目だな。スライナの様に寝てばかりなのもダメだが、少しは肩の力を抜いたらどうなんだ。儂など他の世界に行って釣りを楽しんでいるぞ」
「たまにソルテールと一緒にお酒を飲みに行っていますよね」
「いや、まあ、それは良いじゃないか。ところで、ソルテールの奴は何処に行ったんだ」
「さあ? 何処かに酒でも飲みに行っているんじゃ無いですか」
「声が怖いぞ。別にフォルティナも行っても良いんだぞ。別に禁止されているわけじゃないんだからな。他の神の世界を見て参考にすることだってあるわけだからな」
「それは分かっていますけどね。でも、今はフレイを見ていたいんですよね。この数ヶ月だけでも本当にいろんな事が起きていますからね。見ているだけでも楽しいのです。バルドラント王国でしたか、そこの王都での戦いは面白かったですよ。グランちゃんもとても楽しそうでしたね」
「ああ、グランバハムートの奴がかなり楽しんでいたな。空を自由に飛んだのが久しぶりだったからな、かなりはしゃいでいたな。キングの奴が海で泳ぎたいと儂に言ってきたわ」
「キングちゃんはグランちゃんの後に試練のダンジョンの番人になったのでしたね。それでも、他の世界でたまに泳いでいたでしょう。海の底だけでしたけど」
「こちらの世界で泳ぎたかったと言っていたな」
海神獣キングリヴァイアサンはライナルのお供として他の世界の海で泳いでいたことがある。王獣神アークベヒーモスもソルテールのお供をしてある世界で霧を発生させ歩き回っていることがあった。この三神獣は神に敗北した後は試練のダンジョンで最後の試練とされる役目がある。しかし、皇龍神グランバハムートが全然倒されないために他の二神獣は神界で暇をしていたのでライナルやソルテールが他の世界で散歩をさせていた。もちろん、他の世界の神に許可を取って散歩はさせている。
「グランちゃんだけは試練でダンジョンにずっといたせいで不満が爆発していましたね。戻って来てからもアークちゃんと喧嘩してましたね。それをスレイルが結界を作って見てました」
「あれはあれで、見物だったがな。最後はソルテールが止めていたがな。グランの言い分も分かるがな。今までダンジョンの奥でしかも傷ついた状態で長いこといたんだ。それが、やっと倒してくれる者が現れて戻って来たらアーク達は他の世界に行ったり、うまいものを食べたりしていたら、そりゃあ、暴れるだろう」
「ソルテールが今度何処かに連れて行くみたいですけどね」
「そういえば、帝国の占い師のところに予言を与えたのはフォルティナか? ソルテールが怒っていたぞ。本来はソルテールが予言を決めて与えることになっていたのに誰か勝手に送ったとな」
「ああ、あの予言ですか。帝国の第八王子が帝位付けば大陸は統一されるという。送ったのは私ではないですけどね」
「そうなのか、てっきりフレイの事だからフォルティナが送ったと思っていたがな」
「あれを送ったのはエルナスティですよ。あの子はアルスが作った帝国が好きですからね」
「しかし、あの予言のせいで第九王子が大変そうだがな。凡庸なのに王にされたからな。まあ、ほとんど重臣の操り人形になってしまっているみたいだが」
「もし、本当にフレイが王になったら統一出来そうなんですけどね。本人にその気は無いでしょうが……」
「これからどうなるのか。楽しみな反面、不安もあるな。しかし、フレイの周りでは色々なことが起きているな。しかも、それを解決する力もある。見ていて飽きないというフォルティナの意見も分かる」
「そうでしょう。フレイこれかも頑張って下さいね。私達は何時までも貴方を見守っていますからね」
フォルティナとライナルはフレイの頑張りを温かく見守るのだった。