第15話
「少し待て、そこのものよ」
突然男の人の声がした。
「えっ」
帰ろうと背中を向けていた僕が振り返とそこには威厳のあるお爺さんがいた。
「あら、いきなりどうしたのですか?本来この場では貴方は出てこないはずでしたのに、ソルテール」
現れたお爺さんは創造神ソルテール様らしい。僕は急いで膝をつき頭を下げる。
「よいよい、そう頭を下げなくてもよい。いきなり現れたのはわしの方じゃしな。それにわしだけではないぞ」
そう言うと、創造神ソルテール様の後ろに金髪の綺麗な男の人と、黒髪のどこか眠そうな女性、そして青い髪をした筋肉質な男性が現れたのだ。
「あらまぁ、スレイル、スライナ、ライナルまで出てくるなんて一体どうしたのですか?」
「何か、ソルテールが一番最初にこの試練を越えたからその子にちょっとした加護を授けようじゃないかって言い出してましてね。ちなみに僕はスレイルだよ」
金髪の綺麗な男の人が太陽神スレイル様らしい。
「私は眠いから遠慮したんだけど、ソルテールが長いこと試練を越えた人がいなかったからこの先また長いこと現れないだろうからって特別にって。私はスライナだよ」
黒髪の女性は月の女神スライナ様だった。
「ソルテールが加護を与えるなら私も与えようと思ってついでに来た。何か自己紹介をする流れみたいなので、私がライナルである」
青い髪をした神様が海の神ライナル様だった。
「まあ、そういうことだ。確かに最初の取り決めでは対応した神具の者のみとしていたのだが、今まで誰も無理だったからな。もしかしたら、この先一度も無いかもしれん。それも、またつまらないからな~。しかも、元々は複数人来ると思っていたのがたった一人で越えたのだ。なら、特別扱いしても良いのでは無いかと思ってな。とはいっても、流石に我々の神具は渡せないがな」
そう言って、創造神ソルテール様が笑う。
それにフォルティナ様がため息をつきながら
「まあ、貴方がそう決めたのなら、私は構いませんが一言あっても良いと思うのですけどね。また、思い付きで決めましたね」
「いや、まあ、こうしないとこの世界にこれもしないからな~」
ソルテール様が目をそらしながら言う。
「貴方はたまに私の目を盗んでこの世界の酒場とかに行っていると窺っていますけど、それと何故老人の姿で出てきているんですか?」
「誰がそんなことを言ったんだ。そんなことするわけないだろう。色々忙しいのにだから。後、老人の姿は威厳を示すためである!」
「どうかしらね?まあ、その話は帰ってから話をしましょうか」
「えっ、帰ってからこの話をするの?」
何か痴話喧嘩が始まり唖然としていると、すすっとスレイル様が近寄って来て、耳元で囁く。
「あの二人は夫婦だからね。ソルテールの姿は基本的に若い姿だよ。この世界を作った者として威厳を見せるために来るときは老人の姿でって決めているみたい」
スレイル様が温かい目で二人を見ながら解説してくれる。
「はぁ、そうなんですね」
僕はなんて答えたら良いか分からず、中途半端な返事しか返せなかった。
「そんなことより、さっさと加護を授けようでは無いか!」
話題を変えるようにソルテール様が声を大きくする。
「帰ったら覚えてなさいよ」
そんなフォルティナ様の声を聞こえていないようにソルテール様が続ける。
「さて少年、名前はフレイだったか。其方に私たちの加護を授けよう。まあ、大げさに考えなくてもよい。ちょっと生活が楽になる程度だと思ってくれたら良い。では、とりあえず私から加護を捧げよう。私の加護は少しだけ魔力が増える程度の加護ではあるが」
「本当にちょっとした加護ですね」
フォルティナ様ちくりと言う。
「うるさい。余り大きな加護を与えても持て余すと思っただけだ」
喧嘩を始めそうな二人に割って入るように僕は言う。
「いえ、フォルティナ様の剣を使う場合魔力をかなり使うみたいですのでとても助かります。ありがとうございます」
それにソルテール様が嬉しそうに頷く。
「そうであろう、そうであろう。では、加護を授けよう」
そう言うと、ソルテール様の指が僕の額に触れる。そして、その指が光り輝くと僕の額に吸い込まれていった。
「これで、わしからの加護はその身に宿った。さて、次は誰が加護を渡すかのう」
そうして、ソルテール様が他の神々に振り返ると、スレイル様が前に出る。
「では、次に私ですが渡しますかね」
そうして、スレイル様の指が同じように額に触れる。ソルテール様と同じように光り僕の額に吸い込まれていく。
「ちゃんと、宿ったね。ちなみに私の加護は少しだけど筋力強化だ。まあ、少し力が増えたかな程度でしかないが、身体能力を上げる神具との相性はいいかな」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、次は私かな。私の場合は加護というか魔法かな~。私の加護の乗った魔法だよ」
そう言って、スライナ様の指が同じように額に触れる。
「これで、良し。ちなみにこの魔法は《月魔法夜のとばり》っていうの。夜の間だけしか使えないけどその間は貴方を中心に半径百メートルは魔物、動物、果ては人まで貴方と貴方の物を認識することが出来ない。ただし、人に見られていた場合はその人には効果は効かないのと日の出を迎えたら効果が消えちゃうから、余り過信しないように」
「ちょっと、加護としては強力過ぎないか?」
スレイル様が言う。
「まあ、良いのでは無いか?夜の間しか効果無いのだから」
ソルテール様が許可を出す。
「兄さん、夜は寝る時間よ。やっぱり、安心して眠れる環境って大切だと思うの」
「いや、お前はいつも寝ていたいだけだろう」
どうやら、スレイル様とスライナ様は兄弟らしい。
「スライナ様ありがとうございます。とても助かります」
スライナ様に頭を下げる。
「さて、最後は私かな。なら、私も魔法にするかな」
そう言ってライナル様が頭に手を乗せる。あ、額って決まってる訳じゃ無いのね。僕はそう思った。そうして、ライナル様の大きな手が光り頭に光りが吸い込まれていく。
「これで良し。私の魔法は水中でも息が出来るようにする魔法《海魔法ブレスウォーター》だ。まあ、海や湖に突然落ちたときとかに役に立つであろう。ただし、効果は三〇分しか持たないがな」
と、ライナル様が豪快に笑う。
「さて、これで全員の加護が宿ったな。フレイよ、其方に何か使命だ何だの言う気は無い。ただ、自由に生きよ。ただし、加護があるからと過信することは無いようにな。流石に、加護を与えた者が早々に死んだとあってはつまら・・・悲しいからな」
(今、つまらないって言おうとしていませんでしたか?)
スレイル様が耳元で囁く。
「ちなみに加護を与えた者の行動って私達にも見えているから。だからって干渉は絶対にしないから安心していいよ」
「えっ」
僕が驚いていると
「さて、では別れの時であるな。これからの其方の人生に幸福が多く降り注ぐことを祈っておる」
ソルテール様の話が終わり神々の方々が頑張ってと一声かけて消えていく。そして、最後にフォルティナ様が
「貴方の幸せを祈っています。幸せとは自分でつかみ取る物です。貴方にはその力を私達が与えました。それではいきなさい。愛しい我が子よ」
そう言ってフォルティナ様も消えていった。僕は消えた神々に幸せになることを誓うのだった。
とりあえず、第一章終わりました。
ちなみに神々の世界に余り娯楽は無いためにこういった加護を与えた者の行動を見るのを一つの娯楽として見ています。
ソルテールはたまに捧げられるお酒の味を見に行くためと言ってこの世界のお酒を飲みに行っています。フォルティナに内緒で・・・
年末年始は仕事で忙しいため次の更新は年明けの1月7日ぐらいを考えています。