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第136話

 宿に戻りカルラ達に今日の事と明日の事を話す。


「それで、セシリアお姉さんのお兄さんは納得したの?」


 フィーナの質問にセシリアは首を横に振る。


「納得はしていないでしょうね。ただ、ご主人様が強いので、襲うのはやめたと思います。それでも、私達の言ったことで巫女であるシンシアのことが分かったので領主の館を襲撃するかも知れないけどね」


「お兄ちゃんはそのシンシアお姉ちゃんを助けるんだよね?」


「もちろんそのつもりだよ。セシリアを助けたときは、そこまでの余裕が無かったから無理だったけどね。今なら大丈夫だろうし」


「それが、明日なんだね。まあ、ご主人とフィーナが居れば警備隊ぐらいは大丈夫だろうけどね。冒険者は領主の護衛には付いていないのかい?」


 カルラが警備の中に冒険者が居ないのか聞いてくる。


「ギルドで聞いた話では領主の所では護衛の依頼は入っていないみたいだね。ただ、商人の護衛依頼がかなり入っているみたいだけどね。殆どの冒険者がそっちに駆り出されているみたいだよ。商人もファールン王国が占領している地域に行くために雇っているみたいだね」


 流石に攻めてきたファールン王国が占領した地域に行くのは怖いのだろう。


「だから、領主の所には冒険者はいないみたい。ただ、警備兵はかなり居るみたいだね。街中で兵を一人も見ていない位だし、普通は暴動が起きたら鎮圧しようとするのにね」


「ご主人、どういった手順で領主の館を襲うんだい?」


「そんなの、正面突破からだよ。警備兵は倒して行って、中にいる使用人達は襲ってこない限りは倒さないって感じかな。奴隷の人達が領主の命令で襲ってきた場合は気絶させるだけの留めておいて欲しいかな。流石に、助けに来て襲ってきたので殺しましたは後味悪い」


「ああ、分かった。領主はやっても良いんだよね?」


 カルラが確認の為に聞いてくる。


「もちろんだよ。奴隷の人達を解放してくれと言っても領主は聞かないでしょ。それなら、仕方ないよね」


「一応、他人の奴隷に手を出したら犯罪だけどね?」


「こちらからは奴隷に手を出さないよ。相手が手を出してきたから仕方なく気絶だけさせるだけだ。それなら大丈夫でしょ」


「まあ、確かにね。領主は奴隷じゃないし構わないか」


「さて、そんな感じだけど、いいかな、セシリア?」


 セシリアは頷く。


「悪いけど、従姉妹や他のエルフ達を解放してもセシリアまで解放するつもりは無いからね」


「当たり前です。私はご主人様の側にずっと居るつもりです」


「ありがとう。じゃあ、今日はもう寝ようか。明日は夜が明けて直ぐに向かうから」


 僕の言葉に皆が頷き早めに休む。


 そして、朝起きると、領主の館で煙が上がっているのが宿からも見えた。


「ご主人様、あの煙は領主の館ではないですか?」


 セシリアがその煙を見て聞いてくる。すると、扉を開けてカルラとフィーナが入ってきた。


「ご主人、領主の館が燃えているみたいだ」


「そうみたいだね。セシリアのお兄さんがやっているのかな?」


「そうかも知れませんね。私達が今日、領主の館を襲うことは言っていましたから、先に助け出そうとしたんでしょう」


「ま、とりあえず、行ってみようか。あの数の警備隊を突破できたのかも気になるからね。もしかしたら、どうしよう無くなって逃げた可能性もあるし」


 僕の言葉にセシリア達が頷く。そして、僕達は領主の館へと向かった。


 領主の館は野次馬が多く居た。流石に、領主の館で煙が出ていれば誰もが気にするだろう。最近暴動をしている住民達も見に来ていた。そして、近くに居た人にどうしてこうなったのか聞いてみた。


「何でも、マントを着けて顔を隠した男達が警備隊と衝突したらしいぜ。ただ、その男達も警備隊の数に負けて逃げたって話だ。で、逃げるときに火の魔法を使って領主の館を攻撃したらしい。それが、あの煙だな。どうも窓を突き破って内装品に火が付いたって話だぞ」


 男は親切に教えてくれた。それを聞いて僕は考える。その場を離れてセシリア達と相談をする。


「これ、領主の館に堂々と突入なんて無理じゃない? 流石に野次馬が多すぎる」


「そのセシリアのお兄さん達は逃げたみたいだから、昼頃には皆引くんじゃ無いのかな? 後、他の人の会話で領主に不満を持っている人がかなり居るみたいだね。襲撃者を応援している者もいるみたいだ」


 ここの領主は信頼されていないようだった。


「まあ、暴動が起きているの鎮めようともしないんだからね。信頼はされないだろう。ところで、セシリア」


「何ですか?」


「お兄さんって、ここの領主の趣味って知っているのかな?」


「趣味ですか?」


「忘れたの? セシリアは僕と初めて会った時どんな状態だった?」


 それを見て、セシリアは暗い顔をする。ここの領主にされたことを思い出したのだろう。


「エルフであろうと治せないけどね。まあ、いいや、僕が助ければ良いことだからね」


「ご主人様、すいません」


「ここの領主の趣味って何?」


 カルラがセシリアに聞く。


「女性の悲鳴を聞くことです。私は最後には手足を切り落とされましたし、身体を焼かれもしました」


 セシリアの言葉にカルラだけでは無くフィーナも言葉を失う。


「セシリアお姉ちゃん私より酷い状態だったの?」


「セシリアと出会ったときの姿は酷かったね。そんな領主の趣味があるから余り好かれていないんだろうね。他の街の者もここの領主の趣味は知っていたから、この領地の人も知っていただろうし」


「なるほどね。でも、貴族だから皆表立って言えないんだね。今回の暴動も領主への不満もあるんだろうね。別に領民に取ってはどちらの国に付こうが余り変わらないだろうからね。さて、急いで宿を出たから朝ご飯もまだだし、食べに行こうか。それで、人が居なくなっていたら領主の館に行こうか」


 朝食を食べてから領主の館へと向かう。領主の館ではすでに煙も出ていないので消火が終わっているらしい。そして、警備兵が今まで通り守っていた。野次馬達はすでに帰っていて襲撃など無かったかのような様子である。


「じゃあ、行こうか。僕が最初話すからね。まだ、何もしないでね」


 セシリア達に最初は何もしないように言う。そして、館を守っている警備兵に話しかける。


「すいません、何か襲撃あったと聞いたんですが」


「ああ、誰だお前は、そんな事お前には関係無いだろう?」


「いえ、昨日、僕も街を歩いていたらエルフと思われる集団に襲われましてね。残念ながら逃げられてしまいましたが、もしかしたら、襲撃者達はそいつらなのかと思いまして聞きたかったのです」


「ああ、お前達も襲われたのか。確かに、襲ってきたのはエルフだったな。だが、何とか撃退はした。捕まえようとはしたんだがな。屋敷に魔法を打たれて動揺したところを逃げられた。次は逃がしはしないがな」


 襲撃者達は思ったよりも強い警備兵達に逃げる事を選択したみたいだった。逃げる時に館に魔法を放ちそちらに注意を逸らして逃げたらしい。一度奴隷商で襲われたときにも奇襲を防ぐと直ぐに逃げたので深追いはしないようにしているらしい。


「それと、もう一つ聞きたいことがあるんですけどね。奴隷商でエルフの奴隷を買おうと思ったらここの領主に全て売ったと言われたんですけど」


「あん、ああ、亜人の奴隷か。そう言えば、今は屋敷に何人かいたな。何処で手にいれたのかと思っていたけど奴隷商が売っていたのか。奴隷商はここの領主には余り売りたがらないと思ったんだけどな。奴隷商にまた売るときにキズ物になっていることが多いからな」


「他の街で奴隷商が襲われたのを聞いて売ったみたいでしたよ」


「ああ、エルフの奴隷を持った商人が襲われたとも聞いたしな。だから、亜人の奴隷を全部売ったのか」


「それでも、冒険者の人達に護衛をお願いしてましたけどね」


「まあ、襲撃者はいるか居ないかは分からないからな。仕方ないんじゃ無いか」


 僕は最後に本命の事を聞く。


「そういえば、領主の奴隷の中に白い髪のエルフっていました?」


「ああ、領主のお気に入りだな。何でも、その白い髪のエルフは特別なんだと、もう二年ぐらい無事でいるな。ここの領主にしては珍しいよな」


「そうですか、ありがとうございます」


「おう、あまり領主の館には近づくなよ。下手に近寄ると罪を着せられてそこのエルフの奴隷を領主に取られるぞ」


 僕は笑顔でもう一度お礼を言い、その警備兵を殴って気絶させる。それを見て周りの警備兵がざわつき始める。


「さあ、行こうか。前面は僕とフィーナ、真ん中はセシリア、後ろはカルラ! 突破して従姉妹を助けようか」


 僕達は領主の館の入り口を目掛けて走り出した。

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