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第125話

 マリアの遺体をマルンにある教会で埋葬をした後にギルドへと向かう。周りの冒険者達は僕達の姿を見てざわつき始めた。そして、僕達の姿を見てセーラが悲しそうな顔をして対応してくれる。


「あ、フレイさんその今回の事は申し訳ありませんでした」


「いえ、流石に騎士団長が来るのは想定していませんでしたからね。これは僕の想定の甘さが招いた結果ですねからね。ギルドの皆さんの責任ではありませんよ」


 セーラが安心したような顔をしている。それと同じように周りの冒険者達も何処か安心したような顔をしていた。


「そう言って頂けると助かります。あと、あの貴族が言っていました。フレイさんがベルン伯爵を殺した証拠を見つけたと、今後、犯罪者を匿えばこの街がどうなるか分からない……と。しかし、安心して下さい。この街の代官も冒険者の皆さんもそれが嘘なのは分かっていますから」


「まあ、嘘でしょうね。そんな証拠なんてあるわけ無いんですから、自分たちで持って来たのかな?」


「そうでしょうね。あの公爵はそういう手段で他の貴族を貶めていると聞いていますから。あ、それで、本日はどういった要件でしょうか?」


「家が壊されてしまいまして、それを直したいんですよね。どこの工房が良いのか教えて貰おうかと思いまして聞きに来たんです」


「あ、そうでしたね。家もボロボロにされていましたね。あれは公爵の連れてきていた冒険者が腹いせで壊していたみたいです。私達は遠巻きに見ていることしか出来ませんでしたが……。マリアさんはそんな中、頑張っていました。本当に頑張っていたんです。結果はあんなことになってしまいましたが……。あ、すいません工房でしたね。大丈夫です、明日にでもこの街の建築を主にしている工房へ連絡を入れておきます。建物は建て直しで良いですか?」


「それで、お願いします。すいません、お金が厳しいかも知れないので、この魔石をオークションにお願いできますか? 確か、この街でもオークションが開かれていましたよね」


 僕は魔法袋からホワイトドラゴンの魔石を渡す。その魔石を見てセーラだけでは無く、周りの冒険者達も


「これって、何の魔物の魔石ですか? かなり強い魔物の魔石では無いですか?」


 セーラがその魔石を触れることに躊躇していた。


「それは、ホワイトドラゴンの魔石ですよ。死の森の中にあるダンジョンで出てくる魔物ですよ。まあ、倒すはかなり大変ですが」


「ホワイトドラゴンですか……、ちょっと、待っていて下さいね」


 そう言って、セーラは奥に入って行く。冒険者達はホワイトドラゴンの魔石をマジマジと見ていた。


「本物か?」


「分かるわけ無いだろう。見た事なんて無いんだから」


 冒険者達は口々に本物か? 偽物だ! と口にしていた。ラントはその輪には入ってはいなかったが目は魔石に釘付けになっていた。そして、セーラが戻ってくると魔法袋から、台座付きの重そうな道具を取りだした。


「まさか、この道具が活用されるときが来るなんて思いもしませんでした」


 その道具を机に置くと魔石をその台座の上に置く。すると、文字が浮かび上がってきた。


「これはどういった道具なんですか?」


「これは古代文明時代の魔道具です。これがあれば何の魔物の魔石なのか知ることが出来るんです。これはダンジョンのある冒険者ギルドにおいて受け継がれてきている魔道具なんですよ。まあ、文字は読めないんですけどね。あ、でも大丈夫ですよ。ちゃんと、翻訳のための本も代々受け継がれています」


 そう言って、魔法袋から本も取り出す。


「これも、代々受け継がれていて翻訳するための辞書です」


 魔道具から浮かび上がった文字を読んでいく。


「わあ、凄いですね。本物です。本物のホワイトドラゴンの魔石ですよ。これ、大金貨で一千枚はするんじゃ無いですか?」


「そんなにするもんなんですかね?」


「この魔石があればこの街の街灯であれば三百年は補給無しで照らし続けられますね。そんな事をすると街灯の魔石交換の仕事が無くなって、失業する人も出て来ちゃいますね」


 苦笑いするセーラとは違い、冒険者達は驚愕していた。ラントを見るとその目を見開かさせて驚いていた。


「それで、オークションに出店して欲しいんですけど……」


「待った!」


 僕がセーラにお願いしていると待ったをかける声が飛び出した。見ると、ラントが手を挙げて声を出していた。


「すまないが、その魔石を俺に買わせて欲しい。金なら何とか用意するから、頼む、フレイ」


 ラントは真剣な目で訴えてくる。


「ドラゴンはゴーレムには不向きだよ。ゴーレムではブレスを出せないからね。ドラゴンの強みの1つを潰すことになるけど」


「それでも、構わない」


 ラントと僕を見比べてセーラが戸惑っている。


「あ、あの、それでどうしますか? ラントさんは因みにいくらで買い取られる予定ですか? オークションに出さないのであれば大金貨一千枚で買い取りはしますけど、ただ、お支払いは分割でお願いしたいです」


「俺も同じだけの金は出す。どうだろうか、もちろんギルドに仲介の手数料はちゃんと払う」


「ギルドへの手数料は十パーセントですが、よろしいのですか?」


「ああ、構わない」


 ラントの決意は変わらないようだった。セーラは困った用に僕の方を見る。


「どうしましょう? ギルドとしてはどちらでも構わないですけど」


「僕は家を買うための資金が欲しかっただけですからね。ラントがギルドと同じだけの金額を払うのであればオークションで無くても構いませんよ」


「本当か! なら、その家の代金は俺が払おう。そして、家の代金から引いた金額をちゃんと払う。それで、いいか?」


「それで、良いよ」


 交渉が成功したとラントは喜んでいた。それを見て、セーラは苦笑しか出来なかった。他の冒険者達は恨めしそうにそれを眺める。


「工房の人は明日の昼頃にでもギルドに来て頂きますので、その時に家の打ち合わせをしましょう。そして、ラントさんこちらがその魔石になります。ちゃんと、お金は払って下さいね」


「もちろんだ。分割でも良いんだよな?」


「良いよ」


「ギルドの方でも分割でも良いですよ。ただし、期限は2年以内でお願いしますね」


「ああ、分かった、助かる。大丈夫だ、2年以内にフレイの方も払うから。ちょっと、用事があるから帰る」


 そう言って、ラントは走ってギルドを後にする。


「フレイさん良かったのですか。オークションなら3倍ぐらいにはなったかも知れませんよ」


 そんな、セーラの言葉に冒険者達が色めき立つ。


「マジかよ、そんな値段になるかよ。俺も欲しいなあ、けど、死の森の中心にあるダンジョンだっけか。いや、無理だろう」


「いや、行けた奴がいるんだから、何とかなるんじゃ無いか?」


「あの、フレイさん、死の森ではどんな魔物が出るんですか?」


 恐る恐る、僕に聞いてくる人もいた。その様子は何処か怯えている感じだった。


「死の森の中だと、グリフォンや、ベへモス、ツインヘッドビーストやアースドラゴンがいるかな。崖に近い外周だと大きいボアも出てくるね」


「いや、無理無理無理、ベへモスって固い上に魔法を使えなくする結界を使うんだろ。グリフォンだってその爪は魔鋼製だって切り裂くって言うぐらいだし」


「そんな、死の森から生還しているのか。あの、パーティーは……」


 全ての冒険者達から恐れを持って見られる。


「あ、あの、私達は死の森へは……」


 セシリアが何か言おうとしたがそれを僕は止める。そして、耳元で話しかける。


「聖霊のダンジョンの15階で出て来たのは死の森の魔物と一緒だよ。それと戦って来たんだから一緒じゃ無い?」


「私達はその聖霊のダンジョンでも殆ど戦っていませんけどね」


「生き残っただけでも十分でしょ。じゃあ、帰ろうか。明日から大変になるからね」


 冒険者達が喧噪している中、セーラに挨拶をしてギルドを出る。


「じゃあ、家の目処も出来たし、打ち合わせが終わったら王都に向けて出発だ。僕の家族に手を出したことを後悔させないとね」


 冷たい僕の声にセシリア達の身体が強ばる。それでも、覚悟を決めた顔で着いて行くのだった。

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