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第123話

 ラントのクランハウスでいざという時に匿って貰えることを確約してもらったことをマリアに言う。マリアはその事にお礼を言って来た。


「そういえば、マリアは僕達がダンジョンに行っている間にこの近くのクランハウスに挨拶回りに行ったみたいだね。ラントのクランハウスのアセルスさんが言っていたよ」


「そうですね。借家でしたら必要ないでしょうが、この家は旦那様の持ち家なので何かあった場合にと挨拶に回りました。まあ、もう1つ理由がありました」


「挨拶回りの他にも理由があったの?」


「はい、以前泥棒が入ろうとしてゴーレムが起動していた事がありましたよね?」


 マリアも入れた全員で最初の方はダンジョンに行っていた。その時に1ヶ月以上といった期間、家に帰らなかった事があった。すると、誰もいないと思ったのか空き巣が入ろうとしたらしい。その時にゴーレムが起動したらしく帰って来た時に庭が穴だらけになっていた事があった。


「あったね、それが何か関係あるの?」


「その時の泥棒なのですが、どうやらゴーレムが殴って吹き飛ばした場所に他の冒険者のクランハウスがあったらしくてですね。窓などが壊れる被害などがあったみたいです。その事に対する謝罪の意味もありました」


「ああ、ゴーレムに殴られてそこまで吹っ飛んだんだ。ありがとう、それに対して賠償か何かあった?」


「いえ、そういったことは言われませんでしたね。その盗賊達に請求したらしいです。盗賊だった人達は役人に引き渡されたみたいです」


「まあ、この街で盗賊をするようなのは元々冒険者で仲間を失って自暴自棄になってお金が無くなった人が多いらしいからね。外から人が入ってきてもすぐに分かるみたいだしね。冒険者のギルドを介してのコミュニティは凄いからね。まあ、僕はそれをカルラに任せちゃっているところがあるけどね」


「あたいは皆よりも冒険者歴が長いからね。そこは気にしてないよ。冒険者は情報が大事だからね。それを皆で共有してダンジョンを進んで行くのが大事なんだ。冒険者はさ、ギルドを家とした家族みたいな物なのさ」


 カルラは冒険者は家族のような物だと言う。ラントの気軽に振る舞ってくるのもそういう気持ちがあるからなのかとその時の僕は思うのだった。


「その挨拶回りのおかげでアセルスさんと顔を合わせていたのは良かったね。それもあって今回の提案を受けてくれたんだろうね。だから、マリアはもし貴族が来たらゴーレムに任せて家を抜け出すことを優先しよう。流石に勝手に地下通路なんかは作れないからね。作ったところで何処につなげるんだって話にもなってくるし」


「流石に、地下通路は無理ですね。この街はまだ王都にあるような下水を流すような地下水路はありませんから。旦那様、大丈夫ですよ。何かあればラント様のクランハウスにお世話になります」


 マリアがそう言うので、僕はそれを信じることにした。それから、ダンジョンに行く準備を行う。


 ダンジョンに行っている間、皆の心は何処か浮ついていた。こうしている間にも貴族の襲来があるかも知れないと不安になっていたのだ。


 2週間経ちダンジョンから戻って来た時にマリアの姿を見たときにセシリア達が安堵しているのがはっきりと分かる。


「お帰りなさいませ、旦那様。そう言えば、今回から貴族の事があるので20階層迄にするとのことでしたね」


「うん、所で、何か変わったことはあった?」


 僕が聞くとマリアは少し考え込む。


「今のところは無いですね。そう言えば、ラント様が1度来られまして、最近になってバルドラント王国で流れていた旦那様の噂が少なくなっているそうです。それまではバルドラント王国の街の人達も噂にしていたらしいのですが、今では聞くことは殆ど無くなったそうです」


「ふーん、そうなんだ。ラントってファールン王国側の冒険者なのにバルドラント王国側の情報なんてどうやって仕入れているんだろう」


「興味を持つのはそこですか? この街にはバルドラント王国側冒険者もいます。そう言った冒険者の方はダンジョンに行くだけでは無く、商人の護衛などの依頼も受けることがありますので、街を離れることもあるんですよ。そう言った冒険者の方が戻られたときに聞いているようです。そうラント様が言っておられました」


 どうやら、マリアも気になってラントに聞いたらしい。


「なるほどね、冒険者だからってダンジョンばかりは行かないか。でも、噂が少なくなった……か」


「良かったですね、ご主人様」


 セシリアが噂が少なくなって良かったと言ってきたが、僕としては逆に不安になってくる。


「これってさ、貴族側は準備できたんじゃないかな? 相手は公爵って言ったよね? カルラはバイルズ公爵が何処の領地を持っているのか知ってる?」


「バイルズ公爵は王都の近くに伯爵規模の領地を持っていたかな。ただ、公爵は寄子を持てないのが決まっているね。力を持たせないための制度らしいけどね。ただ、王都の近くだからお金はあるし、発言力も現王の弟だからあるけどね」


「お金があるから高名な冒険者も雇うことが出来るって事だね。噂を流さなくなったのは公爵の準備が出来たからと思っていいと思うんだよね」


「それはどうしてですか?」


 セシリアが代表して聞いてくる。


「今までの噂は他の貴族や、王である兄にそう言った噂があることを知らせるためだったと思う。僕達も不思議に思ったでしょ。噂が流れたのがベルン伯爵が亡くなってからかなり時間経ってからだったのかってね。公爵は最初は王に僕がベルン伯爵が殺したと言ったんじゃないかな? だけど、ベルン伯爵が死んでからかなりの時間が経っている。しかも、その時に奴隷の反乱だけじゃ無くてベルン伯爵領の街で奴隷の仲間達によると思われる騒ぎが起こっているんだ。それを王に指摘されたから作戦を変えたんじゃ無いかな?」


「それで、噂を流して国民や貴族を仲間に付けて王の許可を得たのですね。しかし、どうしてそんな回りくどいやり方を取ったのでしょう?」


「それは、僕がいるのが自由都市マルンだからだと思うよ。ここはファールン王国とバルドラント王国、両方で管理している街だからね。王の許可が無いと難しかったんじゃ無いかな」


「なるほど、それで王の許可が出たので噂を流す必要が無くなったと言うことですね。では、貴族は今こちらに向かっている頃だと言うことですか?」


「それは、まだだそうです」


 セシリアの疑問をマリアが否定する。


「ラント様曰く、公爵はまだ領地を動いていないそうです。どうやら、子飼いの冒険者が王の命令でいないらしいです」


「そうなると、まだ猶予はあるのか。王都からだとここまで普通はどれくらい掛かる?」


「そうだねえ、あたし等のように徒歩だと2週間は掛かるかな。公爵は馬車だろうけど、子飼いの冒険者は歩きだろうから2週間は見ても良いかもね」


 カルラが大まかに掛かる時間を出してくれた。


「なら、まだ時間はあるのかな? 難しいな。このまま相手が来るのを待った方が良いかな」


「まだ冒険者が戻ってきてないのでしたら2週間以上あるのでは無いでしょうか? それに、帰って来てすぐにこちらに向かって来るとは思えませんが、唯一の戦力である冒険者を使い潰すような真似はしないかと思います」


「確かにそうか。こっちも冒険者なのは分かっているだろうから準備だけはちゃんとしてくるだろうし」


「では、次のダンジョンに行ってから貴族が来るのを待つとしようか。お金だけは稼がないといけないからね」


 次の日、僕達はいつも通りダンジョンへ向かうのだった。

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