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第121話

 家に帰ってからマリアからラントが留守中に来たとの報告を受けた。その内容は僕達がギルドでラントから聞いた内容と同じで貴族が僕の家のことを調べている様で注意するようにということであった。


 帰って来た日の夕食の時にこれからの事を話し合うことにする。


「貴族がセシリアを狙っているらしい。マリアからの報告ではバイルズ公爵が狙っているという話だったね」


「はい、ラントさんがそのように言っておりました。後、バイルズ公爵には子飼いの冒険者パーティーがいるらしく、その実力はかなりの物らしいです」


「ふーん、まあ、その冒険者パーティーはどうでも良いかな。最悪僕が何とかするよ。問題は、マリアかな?」


「私ですか?」


 マリアが不思議そうに聞いてくる。


「マリア以外は皆で一緒にダンジョンに行っているから良いけど、マリアは家に残っているからね。その貴族が僕達が留守の時にどうするのかは分からないけどね」


「流石に、この街で騒ぎを起こすの事は無いと思います。自由都市という場所ですから貴族とは言え、旦那様やセシリアさんがいないのであれば手を出してこないのでは無いでしょうか?」


「それはどうだろうね?」


 カルラがマリアの言うことに口を挟んできた。


「バイルズ公爵って言うのは好色でも有名だからね。下手をすれば見せしめとしてマリアが襲われることもあるかも知れないよ。ラントが行っていたよね。ご主人には貴族殺しの疑いが懸けられているってね。最初は殺されないかも知れないけど、出てこなければ次は殺すぞって脅迫をしてくるかもね。前に聞いたことがあるけど、その公爵に逆らった貴族がいたらしいんだよね。確か男爵だったかな。公爵がその男爵の奥さんに惚れたらしくて、自分に仕えるように迫ったらしいんだけどね。それを男爵もその奥さんも断ったらしいんだよね。まあ、例え相手が公爵でもそんな事は一応、許されてはいないんだけどね」


「その公爵が無理矢理その奥さんに手を出したんですか?」


 セシリアが自分に魔の手が迫って来ている為かカルラに喰い気味に聞いている。


「いや、結局は手を出されなかったらしいよ。その男爵なんだけど、ハイメルン王国と接する場所に領地を持っていたんだ。そこに、目を付けた公爵がある噂を流した」


「その噂、聞いたことがありますね。ハイメルン王国はバルドラント王国の動向を特に気にしていたので噂が入ってきたんでしょうね。王宮ではかなり気にしていました」


「へえ、マリアは知っているんだ。それで、どんな噂だったの?」


「その男爵がハイメルン王国と通じているという噂です」


「マリアが言ったように、公爵はその男爵がハイメルン王国にバルドラント王国の情報や物を送っていて、その見返りにハイメルン王国側へと領地ごと鞍替えをする契約をしていたっていう噂だね」


 カルラが補足するように説明をする。


「男爵は釈明をするために王都に行かないといけなくなった。奥さんと一緒に王都に行ったんだけど、その留守の間に公爵が男爵の領地に視察に入ったんだよ。そこで、男爵がハイメルン王国へ通じているという証拠を捏造したんだよ。で、その捏造をした証拠を持って王都に戻っきた。しかも、視察中の公爵を殺そうとしたとか言って、その男爵の子供を殺したそうだよ。結果、男爵は処刑でその家族は奴隷落ちという決定が下されたのさ」


「それだと、その男爵の奥さんは奴隷になったんだよね? それを公爵は狙っていたんだったら、その奥さんは公爵の奴隷にされたの?」


「男爵が処刑されたのを聞いて、その男爵の奥さんは自害したらしいよ。『自分の夫は1人しかいない。その夫が死んだのなら共に死にます』って言ってね」


「そうなんですね」


 セシリアは悲しそうな返事をした。


「所で、カルラはどうしてそんな事を詳しく知っているの?」


「ああ、あたいが奴隷になる前の時にね。その男爵のところで働いていた人が偶々街に来てね。その人が食事処で酔っ払って話してたんだよ。まあ、その人も数日したらいなくなっていたけどね。皆、噂で公爵に殺されたんじゃ無いかって言っていたね。ああ、後、公爵が男爵領での視察の時に殺されそうになったからその男爵の子供を殺したって言ったけど、その子供って5歳だったんだってさ」


「その公爵はヤバそうだね。マリアを一人置いておくのも危ないかな。5歳の子供でも殺されているならマリアも殺されるだろうね」


「マリアはそれでも家に残りたいの?」


 フィーナが突然マリアに向かって聞く。


「家を守るのもメイドの仕事です。それと旦那様、その公爵がもし来たて、疑いを懸けられたとしても気にしなくても良いですよね?」


「構わない。あまりに執拗だったら攻撃もして良いよ。襲ってきたら逆に殺してもいいから」


「ご主人、そんな事したらバルドラント王国は本気になってご主人を殺しに来るよ?」


「なら、滅びるのはバルドラント王国になるよ。ちゃんと、切り札はあるけど? 問題は聖武具だけだね。まあ、騎士団が来たらそれも手にいれられるから助かるけどね」


「……」


 カルラは呆れて声が出なかった。


「そう言えば、皆さんは知らないかもしれませんね。公爵が言っているベルン伯爵を殺したのはご主人様という噂ですけど、本当はご主人様が殺したんですよね?」


「「え?」」


 カルラとマリアが驚きの声を上げる。


「そうだよ。冒険者になってすぐの頃に襲われたね。まあ、返り討ちにしたんだけどね。ああ、だけどね、奴隷達による反乱の方には関わっていないからね。あれは、奴隷になった人達の仲間が街で騒ぎを起こしてそれに乗じて起きた反乱だからね」


「お兄ちゃん、関わっていない割には詳しく知りすぎじゃ無い?」


「いや、偶々街に滞在中にその奴隷達による反乱が起こったからね。だから、知っているだけだよ」


 フィーナは何故か疑いの目を向けてくるが何も言わなかった。


「それは良いとして、ベルン伯爵を殺したのは僕だけど、それは秘密にしてほしい。下手に喋ると君達にも危害が加わりそうだからね」


「「「分かりました」」」


 フィーナ以外の3人が頷く。


「フィーナも大丈夫だよね? 誰にも言わないでよ」


「うん、誰にも言わないよ。お兄ちゃんは良いことをしてるからね。私もバルドラント王国の貴族は嫌いだから」


「さて、話を戻すとマリアは家に残るで良いの?」


「はい」


「まあ、家は誰かが管理しないとすぐにボロボロになるからね。ここのダンジョンは只でさえ深いから、往復するだけでもかなり時間が掛かるからね。マリアが残ってくれるのはありがたいよ。だからマリア、もしその公爵が来たら逃げる事、もし囲まれて逃げられないと判断したら強行突破して何とか逃げて欲しい。ゴーレムは10体いるけど、その公爵の子飼いの冒険者パーティーがいるならどうなるか分からないからね」


「話は聞かなくて良いですか?」


「僕がいるときなら僕が聞くけど、マリアしかいないときは話なんて聞かなくて良いからね。大事なのは家よりマリアだから」


「ありがとうございます。旦那様に助けて頂いた命です。粗末にしません」


 マリアは一緒にダンジョンに行かずに家に残ることに決めた。マリアの瞳に少し陰があったような気がしたが、僕はそれを気にしないようにして眠るのだった。 

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